第9回 優秀賞 3A 「Non Straight World」 (奈良県・坂本ダム)
[選評] この静けさは何なのだろう。現地では落水の轟音が大地を揺るがすほどであったろうに、この作品には静謐が宿っていると表現したくなる面持ちがある。緩やかに曲面を描く現代建築の壁面の最上階の一列に並ぶ窓から上質のシルクの布を中庭に向かっていっせいに投じたような、柔らかなそして温かみのある手触りさえ伝わってくる質感を覚える。上部全幅を占める漆黒の闇が無音の虚空となり、昼間であれば視野に入るであろう背景の雑音が見事に消去されている。現代作曲家武満徹の随筆『音、沈黙とはかりあえるほどに』を思い起こさせる。光は闇があることによりその存在と形が際立つことを示した、端正な品格が漂う作品である。
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第11回 優秀賞 声姫 「Silk Curtain」 (奈良県・坂本ダム)
[選評] <選評・萩原 雅紀> 「ダム本体」部門はこのコンテストでもっとも応募数が多かったのですが、会議室の机の上に一斉に広げた作品をざっと見渡した中で、最初に目に留まり、視線を捉えて離さなかったのがこの作品でした。 決め手は何と言っても越流の水量だと思います。 ひとつひとつ太さも軌跡も異なる幾筋もの水流が美しく、タイトルにもある柔らかいカーテンのような表情は、水量がこれ以上でもこれ以下でも現れなかったのではないでしょうか。 また、水流の隙間からアーチしているキャットウォークが見えるのは写真に立体感を出すポイントになっていると思います。 あと個人的に嬉しかったのは、堤体下部にじっと佇む放流バルブが水流の間から見えていること。 さまざまな条件が奇跡的に合わさった瞬間を見事に捉えていて、同じダム好きとして羨ましいと思いました。
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