D-shot contest 入賞作品
- 朝鍋ダム -




第12回 入選  IronJohnny 「越流」 (鳥取県・朝鍋ダム)

[選評] <選評・窪田 陽一>
  一つのゲートが開いて放流された水が堤体の表面を這うように流下する動態を真正面から捉えた、音無しの滝を思わせる静謐感に満ちた佳作だと思います。ここまで黒々と堤体の色調を抑え込むことはデジタル画像ならではでしょうが、流水の形だけで鑑賞者の目を奪うことは、そう容易いことではありません。光の世界は闇があってこそ見え、影があってこそ際立つのだと思います。世界的な現代作曲家の武満徹が著した『音、沈黙と測りあえるほどに』と題する書物をこの作品は思い出させてくれます。堤体を「地」として、落水が水模様の「図」となり、昇龍の如き脈動が聞こえそうで、掛け軸に相応しい水墨画の境地を想起させてくれる作品です。