D-shot contest 入賞作品
- 清水 篤 様 -




第6回 優秀賞  あつダム宣言! 「壁」 (静岡県・佐久間ダム)

[選評] 大きくプリントしたら素晴らしいでしょうね。まるでモノクロの柴田敏雄氏の世界のようにも見えます。よく下まで降りましたね。位置取り、アングルも切り取り方も絶妙です。




第7回 優秀賞  あつだむ宣言! 「交差点」 (富山県・刀利ダム)

[選評]   三種類の異なった質感のコンクリートの中に構成されたキャットウォークや階段の色と線とが印象的。もう少しアングルを右に振るか、右上だけをトリミングすれば完璧。




第7回 入選  あつだむ宣言! 「ここまでおいで」 (石川県・辰巳ダム)

[選評]   コンクリート打設前の貴重な瞬間を撮っています。画面の上のプラントも入れるか、逆に画面の周辺をトリミングするか、ちょっと中途半端な切り取り方でしたね。




第7回 入選  あつだむ宣言! 「オーロラ」 (山梨県・柿元ダム)

[選評]   堤体を面白く切り取ったものが目立ちましたが、その中では目を引いた作品です。表題は形からでしょうか?かなり迷われたようですが、もう少し考えたほうが良かったかも。




第8回 優秀賞  あつだむ宣言! 「ロールシャッハ」 (広島県・二級ダム)

[選評]   私のような歳のプロ受けする作品かもしれません。モノクロだからというだけでなく、師と拝むアンセル・アダムスの写真の一部分を切り取ったかの様な印象を与えたからです。デジタルモノクロならではでしょうが、白から黒への諧調、コンクリートの素材感が素晴らしい。アダムス師には到底及んではいませんが、今後、参考にしてみてください。




第8回 入選  あつだむ宣言! 「生きる」 (岐阜県・高根第一ダム)

[選評]  無数の切り株を擁する丘。対岸の半分凍った水面に映る枯れた草木。静寂の死の世界のように見えますが、軽く覆われた雪の間に必死に地に食らいつこうとする根が見えます。おそらくそれを「生きる」と見たのでしょう。何気ない風景の中に「生」を見出す作者の眼は素晴らしい。色調も計算でしょうか、そして屏風絵にも見紛うような作品です。 




第8回 入選  あつだむ宣言! 「影」 (宮崎県・一ツ瀬ダム)

[選評]   アーチダムの両岸は堅固な岩でなければならず、改良を加えていることが多い。特に初期のものは岩の表面にコンクリートを盛ったり、執拗にアンカーを打ったり、自然景観はズタズタといえます。でも、それが造形美を生み出すこともあります。このダムは柴田敏雄氏も狙った場所ですが、他のアーチダムの下流部にも面白いところがいっぱいありますよ。




第8回 入選  あつだむ宣言! 「空中散歩」 (奈良県・池原ダム)

[選評]  「こんなに危ない作品はボツですね。」「いやいや良く見ましょうよ。」「あっ素晴らしい!」こんな会話が出て、選者の何人かがだまされてしまった作品です。その悔し紛れの入選ではありませんよ。画面の切り取り方が秀逸なのでだまされた訳であって、「お見事!」としか言いようがありません。楽しい作品です。これからももっともっとだましてください。




第9回 入選  あつだむ宣言! 「厳冬の街」 (長野県・奈川渡ダム)

[選評]  比較的初期に造られた巨大アーチダムの右岸下流の山留め部を積雪時に撮影した作品です。雪のない時期にはコンクリートとロックボルトによって強引に山を留めた姿が自然を虐めているようで哀れにも見えますが、その構造物をかつては華やいだ時代もあったろう山奥にふと現れる鉱山住宅群のような、山に張り付く「街」に見立てたところが素晴らしい発想だとおもいます。




第10回 優秀賞  あつだむ宣言! 「レッドハンマー」 (山形県・白川ダム)

[選評] <選評・窪田 陽一>
今回の応募作品の中でも異彩を放ったと言える作品の一つでしょう。左右相称という端正な幾何学の作法に基づいて切り取られた、ダムの一隅が呈する力強い律義さ。漫然と眺めていては見過ごしかねない、ダムのディテールに眼差しを向けた秀作です。黒い汚れも赤い造作の引き立て役になり、深みと高さを感じさせています。渋い一品と言えるでしょう。




第11回 優秀賞  清水篤 「激流の造形」 (岐阜県・大井ダム)

[選評] <選評・窪田 陽一>
  「その他」部門で受賞した作品二点は、今回の最優秀賞、そして「ダムに親しむ」部門の優秀賞と入選も獲得された、 いずれも同じ撮影者による作品となりました。合計で5点もの力作を生み出した熱意と技量の高さは、抜きん出たものを感じます。 どの作品もモノクローム調のトーンをしっかりと見据えた、光への冷静な眼差しで、撮影対象に引き込まれずに、むしろ突き放したかのような、 ある意味では禁欲的な枠組みを自らの作品に求めようとしているかのようにも見えます。 ダムの下流の水面に視線を向けているという点は両作品に共通していますが、映像にとらえられたそれぞれの水の様相は極めて対照的です。 意識的に組写真として撮影されたかどうかは分かりませんが、「動」と「静」という、わかりやすくはあるものの、 思い描いた通りの映像を実際に撮影できるとは限らない難題に挑んだ眼差しを、高く評価したいと思います。 乱流が渦巻く轟音が聞こえてきそうな長時間露光も、下手をすれば綿菓子のように水が写ってしまうかもしれません。 そうならずに踏みとどまることができた思い切りの良さが、この作品から伝わってくるように感じます。




第11回 優秀賞  清水篤 「白昼夢」 (長野県・泰阜ダム)

[選評] <選評・窪田 陽一>
  一方、この作品では、さざ波一つ立っていない、鏡のように平滑な水面に出会い、その中に舟のように浮かんで見えるコンクリートの塊が、 「これは何だろう?」と思わせる形で現れ、抗し難く視線を引き寄せ、その背景に倒立して水面に映るダムの堤体の姿へと眼差しを誘う、 という構図の中に生起する風景をとらえることに見事に成功しています。 「これは何だろう?」と怪訝な眼差しを向ける状況を、古代の哲人はタウマゼインと呼びました。 持ち前の知識では解読不能な、それでいて無視することができずにあれこれ思索を巡らせるように導かれてしまい、 これまで出逢ったことがない眼前の眺めに心を奪われる、ということです。自然生態系の危機を描いた作家として著名なレイチェル・カーソンは、 甥と一緒に過ごした日々の中で「センス・オブ・ワンダー」つまり「素直に驚くという感覚」こそ人間の成長に不可欠なのだ、と気づきました。 沈黙するダムの一隅に潜んでいた眺めに宿る能弁な風景の技巧を見出した撮影者の確かな眼力を讃えたいと思います。




第11回 優秀賞  清水篤 「夏のダム見学」 (長野県・小渋ダム)

[選評] <選評・中川 ちひろ>
  美しい構図ですね。コンクリートの塊が写真の多くを占めるのに、なぜか重い印象を受けないのは、全体が曲線で構成されているからだと思います。曲線の中にも、階段の直線がまるでスパイスのように効いていて、ほど良く全体を締めています。「ダムに親しむ」というテーマからはそれますが、思い切ってモノクロにしたら、形がより強調された写真になり、迫力ある一枚になると思います。




第11回 入選  清水篤 「聖地巡礼」 (富山県・黒部ダム)

[選評] <選評・中川 ちひろ>
 切り取り方がとてもユニークです。人物が主題になっているのもよく伝わり、部門のテーマにも合っていますね。写真のポイントのひとつとして、「影」の存在があると思いますが、 この場合は、階段の下に影がないとより平面的で不思議な写真になったような気がします。次回は、太陽が真上にある時間帯で、ぜひ撮ってみてください。きっと、より主題が明確な写真になると思います。




第11回 最優秀賞  清水篤 「Space fantasy」 (長野県・小渋ダム)

[選評] <選評・西山 芳一>
  前回のコンテストまでに優秀賞を4度、入選を6度も受けられ、なんと第6回から連続入賞の氏が遂に最優秀賞の栄光を獲得されました。 今回は5点もの作品が受賞されていますね、おめでとうございます。選者一致、文句なしの最優秀賞でした。 今までの私の選評を少しでも参考にしていただけたのでしょうか? 毎回いろいろなことを言わせていただきましたが、今回ばかりはケチのつけようがございません。 脱帽です。次回からは別の作風にも挑戦してみてください。期待しております。




第12回 優秀賞  清水篤 「野獣潜む」 (富山県・祖山ダム)

[選評] <選評・宮島 咲>
  この作品を見たとき、「絶妙」「ギリギリ」という言葉が頭に浮かびました。印刷された写真と、パソコンモニターで見る写真。同じ写真でも、媒体の差で見え方が大きく異なってし まいます。この作品は、そんな媒体の差にチャレンジするものだと感じました。多分、パソコンのモニターを通じて見るこの作品は、どことなくモワーっとした印象を受けてしまうことでしょう。しかし、しっかりとプリントされたこの作品を見ると、灰色の絶妙なコントラストで木々の枝を詳細に表現しています。
  また、作品タイトルの「野獣潜む」は、見る人により様々な解釈ができると思いました。「寒そうな森の奥に野獣が潜んでいるのかな?」とか、「中央の岬が野獣の顔に見える」とか。ぜひ作者にその真相をお伺いしてみたいものです。




第12回 最優秀賞  清水篤 「凍みゆるむ」 (岐阜県・丹生川ダム)

[選評] <選評・西山 芳一>
  ダムと水との関連を静かに、また穏やかに表現した秀作です。融けゆく氷とオレンヂ色に染まった水の流れが本来は無機的であるコンクリートに包容力や優しさを感じさせてくれます。意図的にだったら失礼!ただひとつ難を言えばレンズの特性である糸巻き状が出てしまい、右のコンクリートの垂線が若干曲線になってしまったことくらいかしら。パソコンのソフトで直線に修正すれば緊張感も出て画面がもっと締まりますよ。




第15回 入選  清水篤 「陽を浴びて」 (高知県・早明浦ダム)

[選評] <選評・窪田 陽一>
夜も明けやらぬ山中の一隅に、磐戸を開いたかのような光明が差し込んだ瞬間を見逃さなかった撮影者の眼差しがとらえた、一期一会の光景です。 もう少し周囲を切り詰めて、湖面に映る倒立景を引き寄せた構図にしたほうが見応えがあるでしょう。




第17回 入選  清水篤 「結界」 (東京都・小河内ダム)

[選評] <選評・西山 芳一>
近年、激甚災害を引き起こすような台風や豪雨が多発し、今回の作品の中にも泥水や流木が多く見受けられました。自然災害の「結界」としてのダム堤体の役割もありますが、ダム湖の中にも濁りを分ける「結界」があったのですね。大人しいけれど大胆な構図をとったことにより嵐の後の静寂感がうまく醸し出されています。




第17回 入選  清水篤 「あさいゆめ」 (福井県・真名川ダム)

[選評] <選評・西山 芳一>
見える現実は1本の橋脚だけで、あとは虚(うつ)ろ。その橋脚も過去のもの。そんな時の流れの儚(はかな)さや寂寥感をダム湖の中にうまく捉えた作品です。過去の映画の1シーンだったか子供の頃の夢の中で見たのか、そんなデジャヴ感がたまらなく好きです。クールなジャズのCDジャケット写真に使えそうですね。