D-shot contest 入賞作品
- kazu_ma 様 -




第11回 入選  kazu_ma 「冬の大三角形」 (山形県・長井ダム)

[選評] <選評・萩原 雅紀>
  あまり天気が良くないのに空気はきりっと澄んでいて、いかにも氷点下な感じ。 見ただけで真冬の東北の厳しさを感じられる作品です。 今回は、このようにダム堤体の全景を下流側の正面から撮った、という作品がほとんどありませんでした。 そんな中で、雪深い季節にダムが見えるこの場所まで出かけ、手がかじかみながら三脚を立てて、構図を決め、水平を調節し、絞りや露出を考えながらシャッターを押す、それだけでもう十分にリスペクトです。 そのうえ放流もしているし、遠くの山や鉄塔までクリアに見える。 ひょっとしたら視界が晴れるまでいくらか待ったりしたのかも知れない、そう思うと寒さで背中がゾクゾクしてきます。 堤体の雪化粧もちょうど良くて、とても素敵な写真だと思います。




第12回 優秀賞  kazu_ma 「White Octopus」 (宮城県・七ヶ宿ダム)

[選評] <選評・宮島 咲>
  色の無い世界。ロックフィルダムの導流部という何気ない写真ですが、雪により色彩が奪われると、こうもシステマティックに見えてしまうものなのだと感動しました。色がある世界では目立つことのない、手前に写るコンクリートの凹凸や、左岸のり面の凹凸、そして、導流壁の複雑な形状。その逆に、右上に写る、普段は多種多様な色で構成されるはずの公園が色を奪われた光景。これらが総合的に作用し、巨大なオクトパス(タコ)がここに現れたのだと思います。
  この作品を見て最初に感じたイメージは「カッコいい」でした。しかし、作品のタイトルを見てそのイメージが一新されました。この様な景色にもかかわらず、オクトパスを想像できる作者の感性には脱帽です。




第12回 優秀賞  kazu_ma 「釣り日和」 (山形県・前川ダム)

[選評] <選評・中川 ちひろ>
  日本絵画のような美しさですね。人物の点と陸地の曲線、そして光が当たった広い湖の余白。どこか懐かしさを感じます。
  まさに「ダムに親しむ」のテーマにふさわしく、釣りをする様子がのどかで、とても気持ちが良いです。
  こういう、素直な気持ちで撮った写真は、すっと人の心に響きます。




第12回 入選  kazu_ma 「混一」 (宮城県・七ヶ宿ダム)

[選評] <選評・窪田 陽一>
  水の量感が、流れの緩急とともに、ひしひしと伝わってくる作品です。ダムの放流口に、暗緑色の斑模様を背に負った未知の巨獣が顔を突っ込んで伏しているかのようにも見えます。丸みを帯び傾斜して流れる水面に現れたさざ波は、ぬめるような艶めかしい肌合いを持つ襞にも見え、絞り込まれた水が泡立っている個所とは対照的な質感を覚えさせてくれます。表題の「混一」は、近頃の巷では流行らなくなった麻雀の役のことではなく、統合あるいは結束を意味する言葉のようです。水位が下がるまでの間、流水はここで束ねられ、宙を舞う飛沫を放散しつつ下流に落下し去っていく、その一切を一コマの静止画に凝集させた慧眼が見事です。




第13回 優秀賞  kazu_ma 「ぬめる迷宮」 (秋田県・松倉ダム)

[選評] <選評・西山芳一>
  まず美味しそう!まるで有名なパティシエの作ったカットケーキを並べて撮影したように見えますね。でも、実際の香りというか匂いや苔のぬめりを想像すると吐き気をもようしてくるのは私だけでしょうか? 確かな技術で汚いものを美しく撮りすぎてしまったそのギャップがこの作品の素晴らしさかもしれません。醜を美にしてしまう罪深い写真ですが、写真コンテストですから許されますね。




第13回 優秀賞  kazu_ma 「青と緑の揺らぎ」 (秋田県・八塩ダム)

[選評] <選評・宮島 咲>
  ダム湖の入り江で良く見かける風景ですが、樹木の葉の揺れ具合と、湖面のさざ波から「風」を感じる作品です。撮影日は春でしょうか。東北のダムですから5〜6月頃でしょうか。心地よい風が吹き、快適な様子が写真から伝わってくる作品でした。もし、この作品をダム湖部門として応募したら、これといって目を引かない作品になっていたかもしれませんが、テーマを持って拝見すると、風という目に見えないものを十分に感じることができるものだと感じました。




第13回 入選  kazu_ma 「地吹雪の向こう側」 (宮城県・川原子ダム)

[選評] <選評・宮島 咲>
  優秀賞の「青と緑の揺らぎ」と同様に、アースダムを写した作品です。宮城県にあるダムで、この写真が冬の東北地方の厳しさを物語ってくれています。手前に見える橋は導流部にかかる橋で、その奥に堤体が見えます。ものすごい地吹雪の中になぜか現れた虹が、とても幻想的な雰囲気を醸し出しています。この作品で感じた風は、肌を凍てつかせる寒冷地の強風です。この作品は「青と緑の揺らぎ」と同一の作者ですが、こんなに表情の違った風を見せてくれるのだと感心しました。




第14回 入選  kazu_ma 「天端に映る空」 (福島県・堀川ダム)

[選評] <選評・宮島 咲>
  雨というテーマとしては、もしかしたら怪しい作品なのかもしれません。しかし、雨が作り上げたと思われる水たまりが、この地に雨が降ったことを実感させるものとなっています。この作品で何より素晴らしいのが、水たまりの中の世界です。私は水たまりの中に小さな宇宙を見ることができました。輝く銀河系の太陽、アスファルトの乱反射は宇宙の星々、映った雲はいくつもの星雲。皆さんはどう見えますか?




第14回 入選  kazu_ma 「夕景シルエット」 (宮城県・長沼ダム)

[選評] <選評・萩原 雅紀>
  こういう写真、撮りたいんですよね。空の青も綺麗だし、太陽のまわりのグラデーションも美しく、適度に散らばった雲もいいアクセント。仲良く並ぶゲートピアは、ゲートが上がったり降りたりしていて、まるで学校帰りに肩を組んで歩く男の子たち、というようなイメージが浮かびました。ダム本体部門の中では僕がいちばん気に入った、素敵な写真だと思います。




第15回 優秀賞  kazu_ma 「天に向かって」 (秋田県・森吉山ダム)

[選評] <選評・中川 ちひろ>
青空に向かって皆が一所懸命登る姿をカメラに収めたいと思ったのでしょう。足をいっぱいに広げて登る右端の子どもたちが微笑ましいです。良い写真ですが、もう少し下からあおって岩に近づいて撮ると、岩のゴツゴツが強調され、ダイナミックな写真になるかも知れません。でもあまり撮り手の意図が出すぎるとつまらない写真になる危険性もあるので、バランスが難しいですよね。いろいろ試してみると、楽しいですよ。




第16回 入選  kazu_ma 「雲集霧散」 (山形県・月山ダム)

[選評] <選評・宮島 咲>
この作品はどういう意図で「力」を表現しているのか悩みました。作者のコメントを拝見してみますと、放流水のぶつかり合う力と、ぶつかり合って散ってゆくさまを表現しているとのことでした。力という表現は、どちらかというと強さを表わしがちですが、この作品は、強さと弱さの両方を見事に表現しています。少量ではほとんど力を持たない水分子が無数に集まり、大量の水となって大きな力を生み出す。ミクロからマクロへの世界観を表現している作品だと感じました。




第16回 入選  kazu_ma 「雪のキャンバス」 (山形県・月山ダム)

[選評] <選評・萩原 雅紀>
情けない話ですが雪道の運転が不安なので、雪に埋もれたダムの写真を撮っている時点でリスペクトしてしまうのです(過去を見返しても僕は雪ダム写真に甘い)が、雪深い山形の、しかも夜間なんて考えただけで僕には無理、な作品です。そして、月山ダムと言えば堤体の美しい紋様が特徴ですが、それが綺麗に雪化粧している…のではなく、むしろ積もった雪が崩れたり張りついたりして隠されている。でもそれが気候の厳しさを物語っていて、一周回って美しさを醸し出しているのでは、と思いました。個人的には、思い切って雪の模様にもっと寄るか、もう少し左に振った方がバランス的に好みです。




第16回 入選  kazu_ma 「初秋の秋扇湖」 (秋田県・鎧畑ダム)

[選評] <選評・西山 芳一>
最近はやりの堤体穴あけダム整備の元祖。その工事の写真作品で私も受賞したことが懐かしく思い出されます。それはさておき、上下の空と土、そして挟まれたダム湖との画面構成比率(2:1:2)が抜群です。空の白い雲が全体の色比率をまろやかにしてくれました。




第17回 入選  kazu_ma 「花より噴水」 (熊本県・市房ダム)

[選評] <選評・中川 ちひろ>
美しいなあ。桜、山、湖、空。カンペキ! 桜の幹が見えないのがまた絶妙です。幹を入れなかったことで色の構成がシンプルになり、主役も明確になります。噴水が手前ではなく、やや奥の方にあることで、見る人の目線を動かし、平面的になりがちな画面に奥行きを感じさせます。花より噴水より、、、写真? これをきっと、クスッと笑いながら撮影しているkazu-maさんもまた、ここに写っている気がします。




第18回 入選  kazu_ma 「湖と海の水光」 (長崎県・桜川ダム)

[選評] <選評・宮島 咲>
ダムとダム湖と東シナ海です。ダムフォトコンテストのメインであるはずのダムは、黒いシルエットのみなので、ちょっと驚く作品に感じました。輝く海と、輝くダム湖。その間を仕切る真っ黒な堤体。ぱっと見、海とダム湖が、まるでインフィニティープールの様に繋がり、光の反射具合も相まって、ダム湖と海が同じ高さにあると勘違いしそうです。




第18回 入選  kazu_ma 「渓谷に潜むもの」 (宮崎県・山須原ダム)

[選評] <選評・森 日出夫>
「山深い渓谷に忽然と現れた巨大な人工物」的なSF映画のワンシーンを思わせる作品です。発電用ダムの改築工事のようですが、山奥での工事であることから施工スペースが限られ、支材の出し入れにも苦労しているのが見て取れます。遠景の深い緑の中で、大型クレーンのアームが天を指し、ダム本体がくっきり浮かび上がる様は、見るものに大きなインパクトを与えます。




第18回 入選  kazu_ma 「整と乱」 (佐賀県・厳木川調整池)

[選評] <選評・萩原 雅紀>
どっしりと微動だにしないコンクリートの堤体と、激しく流れる越流した水の対比を狙ったものでしょうか。大雨のあとなのか、太陽の光も出ている中での迫力のある越流の姿や濁った水の激しさに圧倒されます。正面からの姿で個人的にはいちばん好きな構図ですが、定番といえば定番でバランスが取れすぎていて逆にインパクトが弱まっている気もするので、構図や切り取り方や光の加減にもっと切り込んだものを応募しても良いのでは、と思いました。




第18回 入選  kazu_ma 「朝光 洪水吐を照らす」 (鹿児島県・鷹巣ダム)

[選評] <選評・宮島 咲>
まるで絵画の様な作品ですね。導流部と海。この写真の右側に草ボウボウのアースダムの堤体があるのですが、それを感じさせない綺麗なアングルだと思います。登ってくる太陽を待っての撮影は大変だったでしょう。この作品は、ただ撮っているだけではなく、色々考え、一番良いタイミングを狙って撮ったという努力がヒシヒシと伝わってきます。