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ダム番号:403
 
白石山ダム [山形県](しらいしやま)


11/09
ダム写真
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テーマページ 位置未確認ダムを探して…山形県に残されていた2基
左岸所在 山形県村山市大字湯の沢  [Yahoo地図] [DamMaps] [お好みダムサーチ]
位置
北緯38度29分15秒,東経140度17分34秒   (→位置データの変遷
[近くのダム]  塔の沢(2km)  引竜第二(3km)  平田溜池(4km)  洗馬丁溜池(4km)  小山ヶ沢溜池(10km)

河川 最上川水系千座川
目的/型式 A/アース
堤高/堤頂長/堤体積 15.9m/88m/43千m3
流域面積/湛水面積 km2 /1ha
総貯水容量/有効貯水容量 46千m3/46千m3
ダム事業者 山形県
着手/竣工 /1991
諸元等データの変遷 【06最終→07当初】河川名[千座川→山田川]
【07当初→07最終】河川名[山田川→千座川]
【08最終→09当初】堤高[15.9→16]
【09当初→09最終】堤高[16→15.9]

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位置未確認ダムを探して…山形県に残されていた2基

ダムマイスター 01-024 安部塁
1.はじめに

 山形県には、2つの位置未確認ダム(既設)が残されていました。その一つが村山市の「白石山ダム」で、もう一つが西村山郡朝日町の「長谷地第2ダム」です。
 ダム便覧2015ではそれぞれ、

ダ ム 名 白石山ダム
左岸所在地 山形県村山市大字湯の沢
位   置 北緯38度28分46秒,東経140度24分37秒【位置未確認】
目的/型式 A/アース

ダ ム 名 長谷地第2ダム
左岸所在地 山形県西村山郡朝日町
目的/型式 A/アース

と記載されていました。白石山ダムは、推定の位置情報があるものの、長谷地第2ダムに関しては全くの位置未確認扱いでした。

2.白石山ダム? 幕井貯水池

 上記の位置情報を手掛かりに白石山ダム推定位置の近くの交差点まで着きました。そこには「幕井貯水池」という名称が記された案内地図が設置されていました。堤体名が「白石山ダム」でダム湖名が「幕井貯水池」ということでしょうか。この幕井貯水池は登山コースの出発点として登山家の間では有名なようです。


甑岳登山道案内コース(村山市観光物産協会設置)より
 白石山ダムは、堤高15.9m、堤頂長88mのアースダムとされています。幕井貯水池に到着してみると、実際の堤体は、相応の高さを感じることができました。また、歩測でもダム便覧記載の堤頂長があることが確認できます。


幕井貯水池上流面
 ひとつだけ気になるのは、「村山市水道課」の標識が堤体に設置されていたことです。白石山ダムは、農業用のアースダムのはずですから、目的が異なることになります。また、ダム便覧によれば、白石山ダムの竣工年は1991年となっています。一般にアースダムの場合、記載されている竣工年は老朽溜池の大規模修繕工事完了年である場合もあります。ところが、この堰堤付近にある浄水場施設(楯岡浄水場)等を見る限り、かなり年代の隔たりを感じざるをえませんでした。


村山市水道課設置の標識
 近くで食用菊を栽培されていた方に尋ねてみると「幕井貯水池」は、かつては村山市の水道水源であったということでした。その言い回しは、明らかに過去形でした。


楯岡浄水場
 今日では、村山地方(山形市ほか11市町)は、山形県による村山広域水道用水供給事業(寒河江ダムを水源とする)から供給を受けるようになりました。村山市もそのひとつに含まれています。幕井貯水池を水源とする楯岡浄水場は、すでに20年来使用を休止しているということでした。


山形県企業局村山広域水道西川浄水場
 寒河江ダムが完成してから、この貯水池の水は上水道用として使用されなくなり農業用に転用されたのでしょうか。少なくとも、上水道用のダムとしては稼働してはいない現況です。それにしても違和感が残り続けます。

 村山市内には、いくつもの溜池が現存しています。市を貫くように最上川の雄大な流れがありますが、その河岸段丘に形成された田畑に水を汲み上げることは、往時の技術では困難でした。


安土桃山時代以前に築造された湯沢溜池
 村山東根土地改良区のホームページによれば、この湯沢溜池の初代築造は安土桃山時代以前に遡るそうです。その後、改修を重ね大切な農業水源として代々利用され今日に至りました。江戸がヨシの繁る利根川河口の寒村であった頃、村山ではすでに大々的に稲作が行われていたのです。


東沢溜池(下流面)
 明治時代に築造された東沢溜池左岸に設置されている記念碑には、当地は、「水利に乏しかった」ため、多数の溜池が築造されたという記述がありました。

3.塔の沢ダムと白石山ダム

 ダム便覧では、白石山ダムの所在地が「山形県村山市大字湯の沢」と記載されていました。山形県は日本海沿岸部の庄内地方で若干の市町村合併がありましたが、内陸の最上・村山・置賜地方では、市町村間で合併のための協議が進まなかったためか「平成の大合併」は行われませんでした。このため、地名を探すのはそれほど難航な作業ではありません。
 調べた結果、村山市には「湯の沢」という地名は見当たりませんでしたが、「湯沢」「楯岡湯沢」「湯野沢」とい地名があることがわかりました。また、白石山ダムは最上川水系千座川に設置されたアースダムであるということから、「千座川」という川を探してみると最上川の左支流に千座川が実在していることもわかりました。その千座川の中流域には「湯野沢」という地名も確認できました。

 さらに、ダム便覧で調べてみると、白石山ダムと属性が類似するアースダムがあることが判明しました。そのダムは「塔の沢ダム」でした。

ダ ム 名 塔の沢ダム
左岸所在地 山形県村山市大字湯の沢
位   置 北緯38度28分24秒,東経140度17分31秒
河   川 最上川水系千座川
目的/型式 A/アース
ダム事業者 山形県
着手/竣工 /1988


塔の沢ダム(撮影:だい)
 所在地・河川名・ダム事業者が共通しており、竣工年が近似しています。おそらくは、山形県によって整備事業が行われたかつての老朽溜池であったことが推測されました。また、塔の沢ダム付近には大小様々な貯水池が地図で確認できました。地形図や航空写真で候補を絞ります。こうして、塔の沢ダム所在地区を訪れてみると、最初に「冨本地域案内(防災)マップ」という大きな案内板が目にとまりました。


防災マップ、冨本(ふもと)地域街づくり協議会設置
 車を停めて、その案内地図を確認します。その地図では、私が白石山ダムの最有力候補と考えていた場所に「院内溜池」という想定外の文字が書かれていました。しかし、予備として考えていた第2の候補地には「白石山溜池」という文字を確認することができます。この案内地図では白石山溜池へのアクセス道路が簡略されていますが、そのルートは、あらかじめ地図で調査済です。位置については、もう何も慌てる必要はありません。残すは、その白石山溜池が、ダム便覧記載の白石山ダムの諸元を満たしているかという問題だけとなりました。


溜池群の位置関係
 事前に調べておいた地図では自動車でも行けるはずでしたが、雪があったため安全な場所に駐車して徒歩で進むことにしました。すでに目前には、雪化粧したアースダム堤体が見えています。


白石山溜池堤体下流面

白石山溜池堤体上流面
 堤体左岸部には、竣工記念碑が設置されていました。

竣工記念碑
 碑文には、明治末期に白石山溜池が築造され、昭和9年に嵩上げが行われてこの地域の美田を潤してきたことが記されています。その後、老朽化のため昭和58年に改修工事が始まり、平成3年に竣工したという内容が刻まれています。


竣工記念碑の裏面
 記念碑裏面には、このダムの諸元が刻まれていました。その内容はダム便覧・ダム年鑑の記載と克明に一致していました。
 白石山ダムの諸元が少し中途半端な数値となっているのは、戦前に使用されていた尺貫法で設計されたためであると思われます。

 堤 高 15.9m≒5.25尺×3.03m
 堤頂長 88m≒29尺×3.03m

この結果、ダム便覧で「白石山ダム」とされている堤体は、
北緯38度29分15秒,東経140度17分35秒
付近に位置する「白石山溜池」ということになります。


余水吐越流
 余水吐越流部の量水標は通常のものとは違い、なぜか逆向きになっています。積雪が関係しているのかもしれません。


院内溜池
 一方「院内溜池」は、現地の記念碑に、堤高14.0mと記載されていました。堤高が1m足りないため河川法上はアースダムには該当しませんが、これまで農業用水を確保するために活躍してきました。これからも、地域の農業の発展のために頑張って欲しいと思います。

4.長谷地第2ダム

 西村山郡朝日町にある長谷地第2ダムは、上述の通りダム便覧では推定の位置情報も掲載されていない位置未確認ダムでした。山形県は全国的にサクランボやラフランスの産地として知られていますが、リンゴの生産量においても全国第3位を誇っています。この朝日町は県内ではリンゴの産地として有名です。


リンゴ
 ダム便覧の記載内容では、このダムは最上川水系送橋川に設置されていることになっています。山形県内では、第1ダム、第2ダム…と名前を付ける場合、同一河川で上流・下流の位置関係にあるようです。ヒントは2つの貯水池がある地形であり、第1ダムの方が便覧に掲載されていないのは、堤高が低いためであると考えました。


最上川水系送橋川
 調べてみると、朝日町と山辺町の境界付近を流れている最上川の支流に「送橋川」が存在していました。その上流をたどってみると水本という地名付近に2つの溜池が存在していました。地形図からおそらく、上流のものが第2で、下流のものが第1であると考えました。


国土地理院電子国土より当該部分引用
 現地の方に話を聞くと、この山の上に2つの溜池があって「長谷地溜池」という名前で呼ばれているということでした。しかし、地元民の間では特に第1・第2の区別はしていないようでした。この日は、このために四輪駆動の軽自動車(スタッドレスタイヤ装着)のレンタカーを準備していました。現地の方の話では、「この車であれば溜池のある場所まで行けるでしょう」と言うことでしたが、私の運転技術では自信がありません。轍の部分を走行すれば何とか進めそうですが、前方から対向車が来た場合のことを考えると、この日は無理をせず撤退を決めたほうが良さそうです。


道路の状況
 長谷地第2ダムには、ダム愛好家のだいさんほか先人が、フォトアーカイブスに写真を提供されていました。後日、だいさんに確認したところ、私が目的としていた場所で撮影したものであるという回答をいただきました。


長谷地第2ダム上流面(撮影:だい)

長谷地第2ダム堤体付近(撮影:だい)
 朝日町農林振興課に確認すると、やはり下流の堤体が第1で上流の堤体が第2であるということです。この結果、長谷地第2ダムの位置情報は、
北緯38度15分33秒,東経140度8分27秒
付近の堤体ということになります。ところが、堤高については、両堤体とも7.0mであるということでした。この数値に誤りがなければ、長谷地第2ダムはダム便覧から退場することになります。長谷地溜池の堤体は老朽化が激しいため、今後、第1ダムを廃止し第2ダムを嵩上げする方向で改修工事が進められるそうです。

5.おわりに

 山形県では、県内にある2つの空港に「おいしい山形空港」、「おいしい庄内空港」の愛称を付けるなど全県をあげて農産物をPRしています。歴代受け継がれた溜池がおいしい水を提供してくれるおかげで、おいしい農産物が生まれます。


JR山形駅構内
 おいしい水から生産される付加価値の高い農産物で日本の農業を牽引してほしいと思います。

山形空港
 現在のところ、長谷地第2ダムは、河川法上のアースダムに該当しない可能性が濃厚ですが雪解けの季節を待ってもう一度挑戦したいと思っています。

(2015年12月作成)


→ ダム便覧の説明
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