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【全体評】

西山芳一 (土木写真家)

“万遍なく”という作為は一切なしに選考しているうちに受賞作品が地域的、時間的に偏ってしまった感がある。高度成長期に竣工した本州のダムが多いようだ。北海道や九州の物件、戦前竣工の土木遺産や竣工直後の新しいダムなどの魅力的ダムは魅力的写真作品とならずに次々と落選していった。その中には私が個人的な思い入れをしたダムの写真も数多く、そのような作品をふるい落とすには心を鬼にせねばならなかった。ただ、一度でも目を向け、カメラを向けていただいた応募者諸氏にはダムに代わって多大なる感謝をしたい。これに懲りずに再チャレンジも是非ともお願いしたい。来年は工事中も含め、“万遍ない”すばらしいダムとそのすばらしい作品にもっともっと多く出会えることを期待して止まない。

佐々木 葉 (早稲田大学理工学部社会環境工学科教授)

写真というものは、現物を直接見るよりも、そのものの特質や本質をよく伝えることがあります。逆にいえばそのような写真を撮ることこそ、写真家の目的なのかもしれません。
さて今回初めて写真コンテストの審査をさせていただきました。しかも対象はダムです。仕事柄一般の方々よりはダムを訪れる機会も多いとは思っていましたが、ここに応募された方々のダムに対する愛情は並々ならぬもので、そのエネルギーには脱帽しました。それは多くの写真が、ダムとはなにかというよりも、ダムにこだわる撮影者の存在ということを、より強く伝えているように思えたからです。ダムの写真をとることはとても楽しいんだよ、というメッセージ でもあります。
そうしたメッセージからより多くの人々にダムへの興味や関心が広がり、さらにダムの多面的な存在を世に広く伝えることになれば、ダム文化とでも言うべきものが生まれるのではないかという期待を持ちました。

安河内 孝 (清水建設鞄y木技術本部ダム技術部担当部長)

審査では当然のことながら応募作全作品、すなわち262作品に目を通すことになるわけであるが、一度にこれほど多くの他人が撮ったダムの写真を見たのは初めての経験であった。人間と同じようにダムにも個性があり、小さくてひっそりとしたダム、ゴツゴツしたダム、覆いかぶさってくるダム、大地を踏ん張っているダムと様々なダムを見て、久々に面白いなと思った。また、われわれ土木屋の大先輩が造られたダム、それから近年造られたダムを並べて見ると、ダムにもその時代時代の反映が見られ、それぞれに個性的で感激した。ダムには、簡単に撮影することができるものもあれば、撮影に非常に困難を要するものもある。何度も何度も通って撮影したのではと思われる作品や、眺望のきく場所を求め大変高い場所に苦労して登り撮影したのだろうと思われる作品も見られた。また、2度と同じ作品の撮影は不可能だと思われる作品もあった。
他のジャンルに比べ、施工中の写真が少なかったのがいささか残念である。次回は是非、直接ダム建設に携わっている若い方々にも投稿していただきたい。

宮島 咲 (インターネットサイト「ダムマニア」運営者)

ダムの撮影は、地形の制約上、撮影ポイントが限られてしまう傾向がある。誰が撮影しても、同じ構図になりやすい。しかし、撮影の季節や時間、構図のとりかたなどの工夫で、同じポジションからの撮影でも、全く異なった表情になる。また、川を遡上したり、道無き道を進み、密かな撮影ポイントを見つける事も大切だろう。今回の作品は、この様な撮影者の努力を感じ取る事ができるものが多かった。私も個人的にダムを撮り歩いているが、各作品の、思いもつかないような大胆な構図に驚かされ、とても参考になった。

森 日出夫 (飛島建設鞄y木本部ダムグループ 課長)

ここ数年、当写真コンテストの選考に携わっているが、年々応募件数が増え、かつ撮影技術のレベルアップも感じられ、うれしい限りである。また、それにもまして変わってきているなと思われるのが、ダムに対する愛着がにじみ出ている作品が多くなってきているということだ。良い撮影とは、ただ偶然に頼るのではなく、撮影対象を選び、その対象が魅力的に見える「時」と「場所」を選定し、ダムの個性をいかに意図して切取るかという計算のもとになされるものであるが、ダム技術者である自分は、さらに、そこに作品に対する思い入れが見えるものに感動させられ、今回票を投じた。
次回もこのような作品に数多く出会えると思うと非常に楽しみである。


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