1.事業の概要
  深城ダムは山梨県東部の大月市に位置し、相模川水系葛野(かずの)川に建設される多目的ダムで、洪水調節、水道用水及び河川流量の確保を目的としています。 葛野川は河道が狭く急流なため、地域住民はたびたび洪水の被害を受けており、古くから治水事業が行われてきました。 しかし、沿川の市街化に伴い洪水被害は増加の傾向にあり、抜本的な治水計画としてダムによる洪水調節を行うことになりました。葛野川周辺の大月市と上野原町は、東京への通勤圏として近年市街地への人口集中が急速に進み、また郊外においても住宅地の開発が進められています。 現在の水源は、相模川支川の表流水と地下水に依存しているため、取水可能量は限度に達しており、新たな水源の確保が強く望まれています。このため、大月市と上野原町は東部地域広域水道企業団を創設し、水道水の供給を行うことにしています。 また、葛野川は、沿川の耕地等に対する水源として広く利用されており、下流部は山梨県東部地方の穀倉地帯となっています。夏期においてしばしば深刻な水不足に見舞われているため、水の不特定補給を行い、流水の正常な機能の維持を図る必要があります。 このように治水はもとより利水においても早急な対策が望まれており、深城ダム建設は地域住民から大きな期待が寄せられています。
 
2.工事概要
 工事名称   葛野川総合開発事業 深城ダム建設工事
 工事場所   山梨県大月市七保町大字瀬戸深城地内
 発 注 者   山梨県
 工   期   自 平成 8年 3月13日〜至 平成17年 3月15日
 施 工 者   西松建設・鹿島建設・早野組 深城ダム建設工事共同企業体
表−1 ダム計画諸元




位  置右岸:山梨県大月市七保町大字瀬戸深城地内
左岸:山梨県大月市七保町大字瀬戸深城地内
基礎地盤古第三紀三倉層群の粘板岩と砂岩レンズ含有粘板岩の互層
型  式重力式コンクリートダム
堤  高87.0m
堤 頂 長164.0m
堤 体 積210,000m3
非越流部標高EL635.0m










集水面積41.2km2
湛水面積0.32km2
総貯水容量6,440,000m3
有効貯水容量5,140,000m3
常時満水位EL625.5m
サーチャージ水位EL629.5m
設計洪水位EL632.5m




常用洪水吐洪水期常用洪水吐き
オリフィスによる自然調節
高3.10m×幅5.50m×1門
非洪水期常用洪水吐き
自由越流堤
幅5.50m×1門
非常用洪水吐きクレスト自由越流高3.00m×幅13.00m×5門
高3.00m×幅 8.00m×1門
計画高水流量400m3/s
ダム計画洪水流量1,060m3/s
放流設備ジェットフローゲートφ700mm×1門
φ250mm×1門
 
 
写真−1 深城ダム完成予想図
 
 
図−1 ダム下流面図
 
 
図−2 ダム標準断面図
 
 
3.工事等の特徴
 深城ダムは、堤高 87.0m,堤頂長 164.0m,堤体積 210,000m3の重力式コンクリートダムです。
 ダムサイトの地形は、急峻なV字形地形をしており、河床幅も10mと狭くなっています。
 そのため、柱状ブロック工法を採用し、パイプクーリングとジョイントグラウチングを行っています。 コンクリートの運搬設備は主クレーンとして13.5t×75mタワークレーン1基をダム上流に設置しています。 主クレーンのカバー範囲外は右岸天端に180tクローラクレーンを配置しています。 また、下流進入路が取り付けられないため、減勢工に6.5t×75mタワークレーンを設置しています。
 コンクリート打設フローは以下の通りです。
図−3 コンクリート打設フロー
 
表−2 主要仮設備一覧
名  称仕様・規格台 数
タワークレーン13.5t×75m1基
タワークレーン6.5t×75m1基
クローラクレーン180t吊1台
トランスファーカダンプ式 4.5m31台
バッチャプラント重力式 2.25m3×2台型1基
セメントサイロ600t1基
骨材調整ビンコルゲート骨材ビン6基
骨材製造設備製造能力 140t/h一 式
濁水処理設備(ダムサイト)機械処理脱水方式 160m3/h1基
濁水処理設備(骨材プラント)機械処理脱水方式 400m3/h1基
図−4 ダムサイト仮設備配置図
 コンクリート用の骨材は、ダム上流5.0kmに位置する原石山から採取し、ダム上流1.5kmの骨材プラントで製造しています。 原石の岩質は輝緑凝灰岩(γ=3.0 t/m3)で、非常に硬くまた、比重も大きいため、コンクリートの単位重量は2.6t/m3以上あります。
 
4.工事進捗状況
 平成8年12月から仮排水トンネルに着手し、平成10年4月に転流を行いました。
 その後、基礎掘削を開始し,平成12年2月に481,900m3の掘削を完了させ、平成12年4月より堤体コンクリート打設を開始し、同年9月に定礎式を行い、平成14年12月に打設完了しました。 現在は、平成15年11月の試験灌水開始にむけて鋭意施工中です。
写真−2 ダムサイト現況(平成15年7月末)
5.ダム周辺の見所
・岩殿山
JR大月駅の北東にそびえたつ大月市のシンボルともいえる山です。 十六世紀土地の豪族小山田氏がこの要害の地に築いた岩殿城は、駿河の久能,上野(こうづけ)の吾妻とともに、関東三名城と呼ばれていました。 山頂からの眺めは雄大で素晴らしく、中腹には丸山公園があり、市民の憩いの場となっています。 また、春にはさくら祭りが、夏には大月市最大のイベントであるかがり火祭りが行われています。
写真−3 岩殿山
・猿橋
 桂川の深い峡谷にかかる猿橋は、古くから「岩国の錦帯橋」、「木曽の桟(かけはし)」と並び「甲斐の猿橋」として日本三大奇矯として広く知られています。 橋のたもとには宝暦五年の「猿橋記碑」があり、昔から名所であることが分かります。 特に広重の「甲陽猿橋之図」は有名です。猿橋の構造は、橋脚をを使わずに両岸から張り出した四層のはね木によって支えられています。 猿橋架橋の動機は、推古天皇の時代に百済の造園博士が猿の群れが梢を渡る様子を見て架橋したと伝えられています。
 
写真−4 猿橋
 
・秀麗富嶽十二景
平成4年に大月市から公布された秀麗富嶽十二景は、大月市域の十二の山頂から望む美しい富士山を市のシンボルとし、併せてふるさとの自然をそのまま後世に伝えようと意図したものです。一番山頂として五百円札で有名な雁ガ腹摺山があります。
写真−5 雁ガ腹摺山からの富士山


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