1.事業の概要
 大志田ダムが建設される地域周辺は、岩手県北部を貫流する馬淵川の沿岸に位置し、二戸市及び一戸町にまたがる2,810haの畑やりんご園などの広大な畑作地帯です。 しかし、この地域はかんがい施設が未整備で、しかも作物の生育期間における降水量が少ないことから、しばしば干害による被害が生じており、農業生産の阻害要因となっています。
 このため、この事業では新規水源の確保として馬淵川沿岸支流の平糠川に大志田ダムを築造して用水の安定供給を行い、併せて関連事業とし区画整理等の畑地帯総合整備を行うことにより、農業経営の近代化と合理化を図るものです。
 
2.工事概要
 工事名称   馬淵川沿岸(一期)農業水利事業 大志田ダム第一期建設工事
 場  所   岩手県二戸郡一戸町宇別字道白地内
 発 注 者   東北農政局馬淵川沿岸農業水利事業所
 工  期   自 平成 9年12月18日
   至 平成14年 3月25日
 施 工 者   ハザマ・飛島・大日本土木特定建設工事共同企業体
表.1 工事諸元(1)
 一


 般
 位 置岩手県二戸郡一戸町宇別字道白11番地先
岩手県二戸郡一戸町宇別名越山国有林
 基 礎古生代二畳紀〜中生代3畳紀
北部北上型中古生層
チャート・粘板岩互層







流域面積75.7km2
満水面積0.909km2
総貯水量11,300,000m3
有効貯水量8,6000,000m3
堆砂量2,700,000m3
常時満水位EL388.10m
計画堆砂位EL369.90m
余裕高SWLに対し2.00m
使用水深18.20m





型式自由越流型堤趾導流タイプ
設計洪水流量A=1,170m3/s
設計洪水位EL391.10m
サーチャージEL391.70m
越流水頭3.00m
越流堰長121.10m
減勢工副ダム型式


表.2 工事諸元(2)




型式堤外仮排水路トンネル方式
設計流量103m3/s (1回/年)
延長右岸側 378m(トンネル工:354m)
内径2r=3.6m




型式堤体懸垂型取水塔(多孔式ゲート)
最大取水量2.859m3/s
取水深EL383.90〜EL367.90m
河川放流工ジェットフローゲート D600,D400 各1基




型式直線重力式コンクリートダム
堤高63.7m
堤頂長165.0m
堤頂幅5.5m
天端標高EL392.70m
堤体積堤体積:147,000m3
(減勢工:24,000m3、合計:171,000m3
 
 
図1. 大志田ダム構造図
 
 
 
写真1.大志田ダム完成予想図
 
3.工事の特徴
 大志田ダムは、堤体積141,000m3、静水池24,000m3の重力式コンクリートダムで、本体は15.5t軌索式ケーブルクレーンによる直打設の拡張レヤ工法(リフト厚1.5m)で施工しています。
大志田ダムにおいては、年間打設可能月数7ヶ月という厳しい打設工程のなか、現場施工管理、安全管理の合理化を図る様々な新技術を取り入れダム完成に向けて鋭意作業を進めています。
 そこで今回は、省力化、安全性の向上が図られたコンピュータネットワークによる現場管理システムや、コンクリート運搬設備等について紹介いたします。

1)C2M(Cyber Construction Management)
 現場施工管理システムC2Mとは安全・正確・迅速な施工を実現するために施工管理の支援をねらった総合コンピュータシステムです。 大志田ダムでは毎日行われる工事打ち合わせに現場の状況を効率よく提供するとともに協力会社との情報の共有化を図るため「工事打合わせシステム」「安全日誌システム」を導入しています。 たとえば、「安全日誌システム」では、従来打合わせ前に黒板やコピー式ボード等へ作業予定を記入していたため、よけいな時間が必要でしたが、このシステムを導入することでネットワークを使い協力会社の事務所から会議室のパソコンに直接必要項目が記入できるようになり、即座に打合わせができるようになっています。 また、入力されたデータより、KY日誌、安全月報等が自動的に作成でき煩雑な書類作成を行う必要がなく、より的確な安全指示が行えるようになっています。

2)コンクリート運搬設備
 従来、静水池コンクリート(Gmax=80mm)などの運搬にはハイダンプ使用して行う場合が多いが、大志田ダムでは、運搬路が急峻な地形で重心の高いハイダンプでは運搬時に横転等の危険性があることや、バケットへの荷卸時に架台を設置しなければならない等の理由から、安全で積載量が多く、かつ簡単な設備で施工が可能な運搬方法はないか検討し、ホッパーとベルトコンベヤを搭載したダンプトラック(通称"らくだ")を考案し打設を行いました。 "らくだ"はハイダンプと同等以上の3m3の積載を確保し、排出口を高い位置とすることでダンプアップを行わず、重心も低いことから安全性も向上した物となっています。(現在 特許出願中)
写真.2 ベルコン搭載ダンプトラック「らくだ」
4.工事進捗状況
 工事は平成10年3月に転流式を終え、本格的に基礎掘削工事、仮設備工事の施工を行い、コンクリート打設は静水池を平成11年7月から、堤体を平成11年10月より開始しました。 また、平成12年6月20日には無事定礎式を迎え平成12年度末で130,000m3と全体の約75%の打設が終了しています。 この地域は寒冷地で最低気温も-20℃以下になるため打設は現在休止中で養生マットにつつまれ冬眠中です。 再開は平成13年4月からで、3月より堤体を冬眠から目覚めさせる準備を開始する予定です。
写真3. 冬眠中の大志田ダム

5.ダム周辺の見所
5.1 ダム見学施設
 ダム見学資料館はありませんが、展望台を設置し随時一般見学にも対応していますので連絡していただければ対応致します。(月〜土 9:00〜17:00)
  連絡先:0195-34-5830(大志田ダム出張所)

5.2 ダム周辺の観光情報
 ダム周辺の奥中山地域は盛岡市から国道4号線を車で1時間ほど北上した、標高327〜793mに広がるなだらかな丘陵地帯となっており、ダムサイトは急峻な地形のわりに、上流へ行くほど広々とした開けた形状となっています。
 この開けた丘陵地にある奥中山高原は標高1,018mの西岳を中心に奥中山高原スキー場、自然休養村、温泉、観光天文台などがあり、一年を通して楽しめます。

@奥中山高原スキー場
 標高1,018m 最下部650m 標高差368m 最長滑走距離2,000mと中規模ながら上級者から初級者までだれでも楽しめるスキー場です。また、リフト料金も1日券3,000円、半日券が各1,500円(午前・午後)と大変リーズナブルとなっています。(H13シーズン)

A自然休養村
 西岳の東麓に位置し、迷路やジャングルジム等11種類の遊具や釣り堀など、家族で自然を満喫出来る施設です。
B高森高原
 500haにもおよぶ広大な芝が広がる高原で、ヨーロッパののどかな牧場を思わせる風景が広がっています。

C一戸観光展望台 銀河牧場
 東北一を誇る500m天望郷が、ファンタジックな星空へ案内してくれます。コンピュータが見たい星を探し出してくれる、プラネタリウムもあります。

Dコスモスパーク
 東北随一の面積のコスモス畑で、一面に広がるピンク色のお花畑でまるで別世界にいるようなロマンチックな風景を楽しむことが出来ます。


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