1.事業の概要
 本工事は、埼玉・長野・山梨県境の甲武信岳に源流を持つ荒川水系支川中津川に埼玉県秩父郡大滝村において多目的ダムを建設するものである。
 目的については以下に挙げるとおりである。
@ 洪水調節
   ・ダム地点の計画高水流量毎秒1,850m3のうち1,550m3の洪水調整を行う。
A既得取水の安定化・河川環境の保全
   ・荒川沿岸の既得用水の安定化及び河川環境の保全等のための流量を確保する。
B水道用水(新規利水)
   ・埼玉県の水道用水として最大毎秒3.68m3、皆野長瀞水道企業団の水道用水として最大毎秒0.06m3、東京都の水道用水として最大毎秒0.86m3を取水可能にする。 また、ダムからの放流水を利用して埼玉県が最大出力3,400kwの発電を行う。
 
2.工事概要
 工事名称   滝沢ダム本体建設一期工事
 発 注 者   水資源開発公団
 施 工 者   鹿島・熊谷・錢高特定建設共同企業体
 工   期   自 平成11年 3月 2日
   至 平成15年 1月19日(46.7ヶ月)
 場   所   埼玉県秩父郡大滝村大字大滝地内
表.1 工事諸元(1)







流域面積108.6km2
湛水面積1.45km2
総貯水量63,000,000m3
有効貯水量58,000,000m3
堆砂量5,000,000m3
サーチャージ水位EL565.0m
常時満水位EL565.0m
洪水期制限水位EL537.0m
最低水位EL495.0m





常用洪水吐 
  洪水調節方式一定率一定量方式
  計画高水流量1,850m3/s
  計画最大放流量300m3/s
  放流管方式部分管路式
  ゲート高圧ラジアルゲート、B3.6m×H3.6m×2門
非常用洪水吐 
  形式ゲート付引上式
  ゲートラジアルゲート、B10.0m×H11.5m×3門
  ダム設計洪水流量2,400m3/s
  導流部直線導流壁


表.2 工事諸元(2)
 減勢工跳水式減勢工(副ダム水平水叩き)




型式堤外仮排水路トンネル方式
設計流量115m3/s (1回/年)
延長左岸側 610.787m(トンネル工:598.037m)
内径2r=4.8m




型式選択取水方式(直線多段式)
最大取水量19m3/s(選択取水時最大)、40m3/s
取水範囲EL495.0(最低水位)〜EL565.0m(常時満水位)




型式直線重力式コンクリートダム
堤高140.0m
堤頂長424.0m
堤頂幅7.0m
天端標高EL568.0m
堤体積堤体積:約1,600,000m3
 
 
図−1 堤体平面図
 
 
図−2 堤体下流面図
 
 
 
写真−1完成予想図
 
3.工事の特徴
 滝沢ダムは、堤体積約1,600,000m3、堤高140mというわが国最大級規模の重力式コンクリートダムで、打設工法としてはRCD工法とELCMが採用されており、近年進められてきたダムの合理化施工法の集大成としての位置付けができる。
 滝沢ダムにおいては、現在本体掘削(約160万m3)を完了し、2001年10月の本体コンクリート打設に向けて仮設備の設置工事が最盛期を迎えている。
 滝沢ダムのコンクリート運搬設備はループ状に設置された1本のレール上を走行する5台のモノレール式循環バケット(4.5 m3)と、3基の固定式ケーブルクレーン(13.5t)から構成されている。そのため、各システムを結びつけ、トータルとして最適化を図ることにより、効率の向上が要求される。
 そこで、今回は当現場で採用する出荷制御システムについて紹介します。

(目的) モノレール式循環バケットとケーブルクレーンは4.5m3単位で運搬するのに対して、堤体での運搬は9m3単位である。(図−1、写真−2参照)

図−1 コンクリート運搬設備

写真−2 仮設備
このため、各循環バケットがどのケーブルクレーンにコンクリートを供給するかを的確に指示できなければ作業効率の低下につながり、また、堤体ホッパの積載内容を把握できなければ堤体ホッパに異なった種類のコンクリートを混載する恐れがある。 そこで、バッチャプラントからサービスホッパまでの運搬を効率的に制御するためのシステムである「コンクリート出荷制御システム」を構築する。

(問題点)
コンクリートの配合種類は9種類ある。途中で配合を変更することが頻繁にあるため、効率の良い出荷・運搬の制御が必要となる。
循環バケットの行先選択が的確でないと、各所で手待ちが生じてコンクリートの供給が滞り、サイクルタイムに大きな影響を与える。

(コンクリート出荷制御システム概要)
空いているサービスホッパで、最も早くコンクリートバケットへ投入できる行き先を指定し、さらに堤体ホッパの積載状態まで考慮し、1バッチずつ最適な行き先を指定する。

(基本動作)
 @1バッチずつ最適な行き先を指定する。
 A循環装置への放荷先指定は、1バッチ毎に求めたサービスホッパの優先順位に従う。
 B優先順位が同じ場合は、サイクルタイムを加味して行き先を指定する。
 Cモルタルや調整コンクリートを1バッチでダンプトラックへ積み込むための制御信号を加味して行き先を指定する。
 Dモルタルや調整コンクリートを1バッチでダンプトラックへ積み込むための制御信号を出荷状況表示装置に出す。

(特徴)
 @ケーブルクレーンに加え、堤体ホッパの状態まで考慮するため最も運搬効率を向上させることができる。
 A堤体ホッパでの混載防止が可能。
 B制御に無線装置を持ちいるため、無線全体の管理が必要である。

4.工事進捗状況
 工事は平成13年4月に本体掘削を完了し、第一回目の基礎地盤検査を受検しました。コンクリート打設は減勢工部の整正コンを5月に打設し、堤体打設は平成13年10月より開始すべく仮設備工事を施工中で、まさに打設へ向けてカウントダウンを行っている状況です。
 一期工事は平成15年1月までにEL470m盤までの打設を完了させます。
平成13年4月末で時間経過率56.7%、出来高率54.5%の進捗です。

5.ダム周辺の見所
5.1 ダム見学施設
 国道140号線ダムサイト付近に滝沢ダムインフォメーションセンター(開館時間9:00〜17:00、月曜休館)があり、施工中のダムサイトが一望できます。
 また、滝沢ダムの概要から荒川流域の様子まで知ることができます。

5.2 ダム周辺の観光情報
 滝沢ダムがつくられる大滝村は、荒川の最上流、2,000m級の高山12峰に囲まれた山懐にあります。新緑と紅葉が美しく、秩父多摩国立公園に指定された地域で豊かな自然が残されています。
 また、最近はダム工事に伴い、道路事情も改善されアクセスも容易になりました。
 以下に大滝村のみどころを紹介します。

@三峰神社
 標高1100mに位置する、日本武尊が創建されたといわれる神社で、秩父地方の山岳信仰の聖地です。春日大社作りの建物は格調が高く、荘厳な雰囲気です。また、神社内には温泉施設が併設されています。

A中津川渓谷
 滝沢ダムの建設される中津川の上流に位置する、関東有数の紅葉の名所です。
新緑の季節も見事です。
 かつての鉱山作業場跡地に県営「彩の国ふれあいの森」という施設ができ、奥秩父の自然を学ぶことができます。

B大滝温泉
 大滝村役場近くに大滝村物産品販売センターを併設した温泉です。「遊湯館」と名づけられた村営の温泉施設で、歴史資料館もあります。

C浦山ダム・二瀬ダム
 大滝村には滝沢ダム以外に、荒川上流に二瀬ダム(アーチ式)また、となりの荒川村には浦山ダム(重力式、滝沢ダムと同規模)のダムがあります。
 両ダムとも竣工済みですが特に浦山ダムには「うららピア」という立派な資料館があり、楽しめます。


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