各委員の全体評 |
第20回D-shotコンテストは、266点の作品応募がありました。これらの作品を対象に最優秀賞、優秀賞、入選作品の選考を、令和5年3月7日に日本ダム協会にて行いました。 その結果、今回は下記の作品が選ばれました。 |
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優秀賞 |
「天の川と共に」 山形県・月山ダム |
撮影者:HAMTIY |
<選評・西山芳一>
ブルーにライトアップされたダム、天空を跨ぐアーチ橋、天の川、そのすべての位置やタイミングが周到に計算され尽くした作品です。何度も現地の下見をされ、星景写真もかなり撮られている方だと思われます。一期一会で出会った写真も良いのですが、このような写真も充分に見応えがありますね。次回作も期待しております。 |
審査委員プロフィール |
西山 芳一 (土木写真家)
例年のコロナ禍中にもかかわらず、遠くまで撮影行をされ、素晴らしい写真を多数応募していただいたことに心から感謝いたします。作品も年を重ねるたびに見ごたえのあるものが増えてくるのは審査冥利に尽きるというものです。しかし、応募者名を明かさずに審査を終えると、結果的にはお一人で幾つものダムを巡り、多数の受賞をされた方が何人か見受けられました。まめにダムに行く写真の上手な方が決まってきてしまっていると言ってしまえばそれまでなのですが、ここ数年で徐々に減ってしまった応募数が今後増えてくれば受賞者が分散し、もっと多くの素晴らしい作品に出会えるはずです。 コロナ禍もようやく収束の兆しが見えてきました。見学会やダムツアーも徐々に増えてくると思います。感染を嫌って団体での撮影に参加されなかった方や、あえて単独でのダム行をされていた方々もこれからはお仲間やお友達、ご家族をお誘い合わせの上、ぜひとも多くのダムの撮影、並びに多数の作品をご応募いただくよう、よろしくお願い致します。 |
八馬 智 (都市鑑賞者/景観デザイン研究者)
審査会に参加して例年感じていることですが、全体的にレベルがとても高く、こちらとしてもたいへん勉強になります。優れた技術を注ぎ込み、考え抜かれた隙の無いクオリティの作品は、総合的に高い評価を得ていました。時間をかけて渾身の一枚を構築している作品には感服します。 その一方で、ダムの魅力をピンポイントで無邪気に表現している作品にも、とても心が揺さぶられました。審査会のワクワク感をつくってくれるのは、どちらかと言えばそんな作品かもしれないです。審査員の評価は分かれる傾向がありましたが。そんな作品でも、遠慮することなく、より多数応募してくださることを願います。 いずれにせよ、作品制作のモチベーションは、被写体であるダムへの並々ならぬ愛情なのだろうと思います。審査会ではそのエネルギーに圧倒されっぱなしでした。ダムという被写体が持つ魅力は底知れないなあとあらためて感じました。 |
大西 成明 (写真家)
今回から審査会のメンバーに加えていただきましたが、各部門ごとに机に並べられたプリント作品を見て、大変驚きました。応募写真の中に、一枚として駄作がないからです。己の「ダム愛」の強さにおいて、誰にも引けを取らないという一途さが、写真の強さとしてクリスタルゼーション(結晶化)を起こしています。だから、こんなピュアな写真を審査できるということが、「目の喜び」でないはずがありません。 写真は、英語ではphotographと言います。photoは「光」、graphは「描く」という意味で、それを日本語で「写真=真実を写す」と訳したものですから、写真発祥のヨーロッパでは「光を描く」というそもそもの意味が変質したと言えます。 でも、このコンテストの応募作を見ていますと、そのオリジンに立ち返って、白いキャンバスに好きな絵の具で「光の絵」を描くつもりで写真を撮る、そんな自由な精神の持ち主がたくさんいらっしゃることを実感できました。 写真の「意味」は、光のドラマの只中に忽然と立ち上がってくるものです。「ダム愛」があれば、「この光でダムを見てみたい」「この光が来なきゃ、撮る意味がない」とまで思いつめた写真が当然生まれてくるはずです。これは愛が強ければ、キリがありません。光の魔術師の、さらなる仰天するようなマジックに、また出会いたいものです。 |
中川 ちひろ (編集者)
毎年多くのダム写真を拝見していると、ついつい、新鮮な写真を求めてしまいます。そういった意味でも、毎年もうける「テーマ」に応募される作品はとても楽しみなのですが、今回は「いろ」ということで、わかりやすい写真が集まりました。今までに見たことのないような、極彩色の近未来型ダムが多く、ダムの新たな姿を見せてもらいました。 でもよく考えてみると、ダムそのものの姿は経年によってさほど変わりませんから、ダムの写真は、人が見て感じて、ちょっと考えて撮るという一連の流れが、むしろよく写り込むものだと思います。撮影者の個性や感性が、浮き彫りになるということですね。ですからこうして撮った写真を見せていただくと、撮影者の高揚する気分や驚きの気持ちと対面しているようです。感じ方は千差万別なので、自分の気持ちに素直にシャッターを切ると、自然と個性豊かな写真になるのでしょうね。 写真を人に見せるのは、自分をさらけ出すこと! こうして応募してくださっている皆さん、素敵です! |
森 日出夫 (WEB広報委員会委員長)
今回は、いつもに増して審査に時間を要しました。年度毎に作風に傾向がありまして、ダムの形そのもののダイナミックさ、機能美みたいなものが中心となる年、一方、一目でダムだとはわからない、どちらかというと芸術性に富んだものが主流になる年という感じです。 ところが今回は、それらが適度にミックスされ、さらに撮影技術もレベルが高い作品が多く出品されました。ですからプロの写真家の審査員も選考には苦労されていました。ブームは応募される方々が作っているという事が実感され、審査の苦労と共に心が躍る審査会になりました。次回も楽しみです。 |