第3回 (財)日本ダム協会ホームページ 写真コンテスト

選 評


第3回財団法人日本ダム協会ホームページ写真コンテストは、昨年11月1日より募集を開始し、3月31日の締め切りまでに総数199点(応募者数46名)の応募があった。
これら全作品を対象として、4月17日に一次選考を行い、通過作品を対象に4月21日に二次選考を行った。
今回は、5つの部門で募集を行い、基本的には、応募作品すべてから最優秀賞を1点、各ジャンル毎に、優秀賞1点、入選作数点を選ぶこととしていた。
結果は別途掲載の通りであるが、部門により、応募作品数に大きな開きがあった。選考においては一定の水準を要求するので、「ダムに親しむ」部門、「工事中のダム」部門、「その他」では、優秀賞該当作品無しという結果に終わった。
その代わりと言っては何だが、「ダム本体」部門及び「ダム湖」部門では優秀賞を2点ずつ選んだ。
全般的に、応募作品のレベルが昨年より向上していると感じられた。選考もかなり紛糾するのではないかと思われた。
しかし、何度も繰り返し作品を見ているうちに、自ずと選考委員の意見は一致してきた。部門によっては「優秀賞無し」「優秀賞複数選出」などと当初の予定と若干違ってきたが、これも選考委員全員がすんなりと合意した結果である。

前回にも増して応募数は増えたが、同じダムを同じようなアングルから撮った写真を複数枚応募している応募者もいた。結果から言うと、同じような写真を多く出せば出すほど、いわば同士討ちとなり自滅した感があった。どのような作品を応募するか、応募者の選定眼も問われる。ちなみに、入賞者のうち5名は、1点のみの応募であった。もちろん、手を変え品を変え多くの枚数を応募することは良いことであるので、今後は、是非ともその方針に則って、バラエティに富んだ応募を行っていただきたい。



◆最優秀賞 「冬の大井ダム」(岐阜県・大井ダム)
  黒々としたダムの重々しさと、遙か彼方の白い雪山とのコントラストがすばらしい。構図的にも安定している。天端の直線と越流部の曲線、手摺りなどの細部構造と本体の巨大構造など、いくつかの相対する関係がシンプルな中に複雑な味わいを醸し出している。
  見る人にグッと迫ってくる作品である。


◆「ダム本体」部門
 優秀賞 「ナイアガラ」(新潟県・黒又ダム)
  流れ落ちる水の流れが美しい。惜しむらくは、ファイルサイズは大きいが、ドット数が小さく、粒子の荒れた絵となっている。色も、もう少し出るはずなのだが。

 優秀賞 「色の祭り」(広島県・土師ダム)
  目を洗われるような美しい写真。空の水色、堤体上部の白、木々の緑、ゲートの朱色、ポンプ室屋根の青、そしてなんと言ってもゲート室の鮮やかな黄色。まさにタイトル通り「色の祭り」である。美しさと安定感を兼ね備えた作品。

 入選  「ハウエルバンガーバルブの放流美」(富山県・刀利ダム)
  まさに「ど迫力」の一言に尽きる野心作!轟音が聞こえてきそうである。

 入選  「ダムスタジオ」(長野県・稲核ダム)
  幻想的な感じさえする夜景だ。減勢池付近を漂う水煙も一役買っている。この応募者の夜景を撮った作品は複数あり、それらは甲乙付けがたく、選考委員もうなっていた。

 入選  「湖面の船明」(静岡県・船明ダム)
  澄み切った空とゲートを映した静かな湖面。すがすがしさを感じさせるが、その中にゲートの朱色がきりりと全体を引き締めている。湖面に映った景色というのは定番ではあるが、見ていて気持ちの良い作品に仕上がっている。

 入選  「湖面に映える冠雪のダム」(茨城県・小山ダム)
  思わず襟を掻き合わせたくなるような冬のダム湖の一シーン。冬の寒さにも負けず、ダムは水を貯めている。そんなダムを点検に行くダム現場の方々に脱帽。

 入選  「古城」(山口県・大谷ダム)
  古いダムには石積みのものがいくつかある。このダムも、まさに「古城」と呼ぶにふさわしい風格を備えている。遊離石灰が古武士の古傷、それとも戦士の勲章のように見える。落ち着いた中にも内に秘めたる力強さを感じさせる作品。

 入選  「夜警堤体」(三重県・長良川河口堰)
  連なるゲート操作室は宇宙船の格納庫、川面はメタリックシルバーに輝き、夜の長良川河口堰はあたかも宇宙基地だ。オレンジ色のナトリウム灯が目を引いて今にも警報が響き渡りそうな感じさえ受ける。


◆「ダム湖」部門
 優秀賞 「減水湖面からの岩瀬橋」(岐阜県・御母衣ダム)
  いかにも「ダム湖」といった作品。トラス橋、空、山、水面がうまく収まり、枯れ木がワンポイントとなっている。あと数歩、枯れ木に近づけば、もっとよかった……かも。

 優秀賞 「カエルの目から見たダム」(愛知県・木瀬ダム)
  「ダム湖」を意識した野心作。水面ぎりぎりのアングルで堤体を狙ったその目的は十分果たされたようだ。ただ惜しむらくは水面とダムとの境界線がほぼ画面中央に来てしまって上下を二つに分断してしまった。水面から上を1/3程度にすると、さらに迫力が出たのではないだろうか。

 入選  「静寂の水を湛えて」(埼玉県・浦山ダム)
  あまり天気が良くなかったようだが、それが逆にうまく生かされ、水墨画のような落ち着きを持った作品に仕上がっている。横構図と縦構図(本作品)の2作品の応募があったが、圧倒的にこちらの方が人気があった。

入選  「一瞬の輝き」(富山県・境川ダム)
  ダム湖に差し込んだ陽光が水面に細かな幾何学模様を映し出した、その瞬間を捉えた作品。橋のカーブと水紋のカーブが直角の関係を描き、不思議な安定感を作っている。

 入選  「満濃池」(香川県・満濃池ダム)
  歴史の古い溜池だけあって、日本画のようなたたずまいである。漱石ならばマドンナを小島に配することだろう。静けさとのどけさを感じさせる作品である。


 ◆「工事中のダム」部門
  工事中のダムは、なかなか一般人が写真に撮れる機会がない。そのせいだろう、応募作品も18点と少なかった。また、一般人を対象とした見学会でダムマニアの皆さんが同時に撮るので同じダムの写真の応募が増えるのも致し方ない。事務局としても極力「施工中の現場が見学できる」ダムをご紹介していきたいと考えるので、機会があれば是非傑作を撮影してきて欲しい。

 入選  「現場に向かう男たち」(山形県・長井ダム)
  工事中のダムの迫力ある写真。導流壁の配置(構図)も決まっている。現場に向かう人たちの雰囲気は出てると思うが、ダム全体を入れることを意識したのか、人物が小さすぎたようだ。タイトルからすると、この3人が主役と思われるので、もっと人物中心でも良かったのではないだろうか。


 ◆「ダムに親しむ」部門
  「ダムに親しむ」部門では「森と湖に親しむ旬間」でのイベントなどを撮った作品が応募されてくるのではないかと期待していたが、そのような作品はなかった。「森と湖に親しむ旬間」の行事は全国各地の「ダム湖」を中心に開催されるので、来年は是非とも「森と湖に親しむ旬間」の写真を応募して欲しい。

 入選  「将来のダム好きさん発見!!」(新潟県・鹿瀬ダム)
  シンメトリーを狙っているが、ゲートの放流は非対称という微妙な構図。しかしそれをものともせずにドン!とダム好き予備軍がダムを見つめる。彼の脳裏に去来するものはいったい何なのだろう。この子の将来性とかわいさがポイントを稼いだ。


 ◆その他
  その他という部門で、どのような作品が応募されるか、とても楽しみだった。結果は5点の応募があった。そのうちの2点が入賞となった。

 入選  「岩盤」(長野県・奈川渡ダム)
  まるで要塞である。ここではダム堤体はすっかり脇役にまわっている。「岩盤」というタイトルも直球勝負で好感が持てる。やや露出オーバーの感じがするが、その欠点を補うだけの迫力のある作品だ。

 入選  「織田裕二… は居ません」(群馬県・奈良俣ダム)
  一見、なんてことはないトンネルの写真に見える……が、実は奥深い。
  フラッシュ無しで薄暗いトンネルの質感を出すのは手練れの技。ど真ん中にトンネルの出口を配した大胆な構図。蛍光灯に写し出された壁には、鍾乳石のごとく遊離石灰がへばりつく。
  この作品には不思議な魅力がある。



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