この8月に発生した台風8号と9号は、「観測史上最大の雨量」という記録を、台湾と日本各地で残しながら立ち去っていった。
台湾では、7日から8日にかけて台風8号(モーラコット)が通過、「50年ぶり」と言われる大きな被害をもたらした。観測史上最大の雨量は、すさまじい値に昇っている。6日0時から9日19時までの4日間で、嘉義縣2726mm、屏東縣2551mmと、台湾の年間降水量(2510mm)を上回ってしまった。日本のアメダスで観測した大雨では、3日で1300mm程度がこれまでの最大記録のようだが、4日間でその2倍の雨が降ったことになる。テレビ放映された、6階建てのホテルが濁流に向かって倒壊する衝撃的な映像は、その猛威を物語っていた。8月16日には米台断交以来30年ぶりに、支援物資を積んだ米軍輸送機が台湾に到着している。
日本では、9日から13日にかけて台風9号が猛威を奮った。日本の南海上にあった熱帯低気圧が9日夜、台風9号に発達して西日本に接近、四国から関東甲信、さらには東北まで影響は広範囲にわたった。10日の1時間雨量を見ると、徳島県木頭100mm、高知県船戸95mm、栃木県日光市、今市市共に76mm、千葉県佐倉市65mm、市原市64.5mm等と各地で観測史上最大を記録した。 8月15日現在、兵庫、岡山、徳島で亡くなった人22名、不明3名となっており特に雨量が多かった兵庫県佐用町ではこのうち18人が犠牲となった。当初の報道では佐用川本川で流されたと思っていたが、実際には多くの人々が増水した小さな用水路から流されたことが分かった。
アメダス佐用の観測データによると、9日20時から21時の降水量は82mmに達しており、この地では前例のない記録的豪雨に見舞われている。このため佐用川の水位は「はん濫危険水位」の3.8mを越え、22時頃には水位5.01mを記録した。佐用町本郷地区では20時頃から自治会役員らが注意を呼びかけ、一部の人々が小学校に自主避難するために移動を始めたが、その途中の公民館前で、用水路から溢れ出た濁流に呑み込まれてしまった。ふだんなら、一跨ぎできる程の用水路だったが、記録的な豪雨が痛ましい結果を招いてしまった。身近な土木技術者のKさんの話によると、道路が冠水した時にはマンホールが危ない。水圧等でマンホールの蓋が外れることがあり、ポッカリと穴が開く。水勢が弱まり逆流しているところを、うっかりその側を通ると吸い込まれる恐れがあるという、ゾッとする話である。余談だが、長い棒で進路を探りながら歩けば、危険は回避できるそうだ。
記録的な雨量をもたらした台風9号は、一方で、四国の渇水を解消した。四国地方整備局や四国4県でつくる吉野川水系水利用連絡協議会は、10日、早明浦ダムの貯水率が100%まで回復したことで、6月3日に始まった香川用水、徳島用水の取水制限を全面解除した。 地球温暖化で、記録破りの異常気象は、確実に進行している。
10日現在、貯水率が100%に回復した早明浦ダム (水資源機構吉野川局提供)
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(2009.9.3、H2O)
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