《このごろ》
「ダムサイト」の萩原雅紀さんはこんな人だった

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ダム好きナンバーワン?

 萩原雅紀さんは、ダムの個人サイトの草分け的存在、「ダムサイト」の管理人だ。さらに、ダムツアーを主催し、DVDを出し、写真集を出版し、トークショーに出演しと、趣味ではあるものの、ダムに関連して幅広く活動を展開し、今最も輝いている「ダム好き」の一人と言っていいのではないだろうか。とりわけ、その知名度と人気は、多くのダム好きの中でもナンバーワンの感がある。
 現在では、ダムの個人サイト花盛りで、内容豊富な個性的なサイトがいくつもるが、ダム便覧を始めた頃、6年ほど前のことだが、ネット上でダムの個人サイトを探して参考にした時には、ダムのサイトは数えるほどしかなかった。そのうちの一つが萩原さんの「ダムサイト」で、説明の正確さ、写真の的確さ、個性的なデザインなど、当時ある種の感銘を受けたことを覚えている。

 昨年の12月、その萩原さんにインタビューをする機会があった。インタビュー内容は、ダム便覧の「テーマページ」にいずれ掲載する予定なので、そちらを見ていただくとして、そのときの印象から、萩原さんはどんな人なのかを探ってみた。

とにかく忙しい

 萩原さんとはこれまでメールで何度もやりとりをしてきた。その中でもわかったことだが、きわめて多忙のようだ。仕事と、そして趣味のダムとで。
 今回インタビューの時に、ダム協会でやったのだが、定刻を10分過ぎても、20分過ぎても現れない。どうしたんだろうと言うことになって、念のためメールを見てみると、昨夜遅くまで原稿書きで1時間ほど遅れるとのメールが入っていた。
 そういえば、4年ほど前に、第1回のダムツアーがあった時も、集合場所の新宿に一番後に主催者の萩原さんが現れたという。忙しくて、ダムツアー参加者に配る資料を作る時間がとれず、前の晩徹夜になってしまったらしい。忙しいから、手抜きで適当な資料を作るというのが普通のようにも思えるが、そうはせず、忙しくても妥協せず、きちっとした資料を作るという性格なのかもしれない。だから、「ダムサイト」の説明も必然的に正確になるのだろう。

ダムが本当に好き

 理屈も何もなく、ダムが好きで好きでたまらない、そんな風に見える。宮ヶ瀬ダムが眼前にドーンと現れたときのインパクト、その非日常的光景、文句なしにかっこいい、他の人はなぜそれに気づかないのだろう、そんな類のことを次々とまさに熱く語る。
 言われてみればその通りで、現地に行ってダムを見れば、それだけである種感動を覚えるような、ダムはもともとそんな存在だろう。それを、目的とか、いくらかかるとか、環境とか、あれこれ考えて、直観的な、素直な感覚を失いかけているのが現代のダムを巡る状況なのではないか。萩原さんの話を聞いて、ダムの人工構造物としてのすばらしさを、再認識させられた。

活動の展開は成り行き任せ?

 まずサイトを立ち上げて、ダムツアーをやり、DVDを出し、そして写真集を出し、トークショーをやるという一連の活動の展開を見ると、あらかじめ周到に計画されたもののように思われるかもしれない。ところが、どうもそうではないらしい。鍵は「人とのつながり」だという。
 ダムの写真が載っているサイトがないから自分で立ち上げた、こんなかっこいいダムを見て欲しいからダムツアーをやった、そうしたら参加者の一人がniftyに紹介文を書いてくれた、それを見た人がDVDを作りましょうと言ってきた、その人がトークショーをやっている人を紹介してくれた、トークショーを見ていた人が写真集を作りましょうと言って来た、多少不正確かもしれないが、ざっとこんな具合。
 次々に人との出会いがあって、その波に乗っかったと、そんな話を聞いていると表面上成り行き任せだったように見える。しかし、その間の方向性は一貫しているし、単純な成り行き任せではないだろう。今後どうなるか、何を始めるか、そんなことが気になる。

ダム関係者は自信を持っていいと

 今、ダム関係者は萎縮している、こんないいものを造っているのだからもっと胸を張って、自信を持っていい。環境問題も、よく考えてみれば、現在では都会に自然はないし、利根川だって人工的に付け替えられたものだ。田舎に行けば田圃が広がるが、田圃も人工的なものだ。ダムは目的もあるし、役に立っている。人工と自然と、その辺のバランスだ。ダムだけに目くじらたてるのはおかしい。そんな趣旨のことを言っていた。
 ダム関係者は、ともすれば萎縮し、逆にある場合は一方的に推進論に偏ってしまったりする。その点一般の人の方が、平衡感覚を失わず、意外に客観的に、冷静にものを見ているのかもしれないとも思う。

 ということで、こちらもインタビューは初めての経験だったので、やや心配もあったが無事終わり、これで一安心。萩原さんの写真集第2弾も最近出版されたようだ。それにしても、やはり萩原さんはすごい人でした。

(2008.1.24、Jny)
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