《このごろ》
「お好みダムサーチ」公開しました

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ダム便覧の全項目表の「左岸所在」の欄に、「お好みダムサーチ」というリンクが追加されたのにお気づきでしょうか。この「お好みダムサーチ」は、ダム訪問計画時に、ついでに見られる近場のダムを探したいという、ライトなダム好きのための地図サイトとして開発しました。

このたび、「お好みダムサーチ」の完成を記念して、黒部ダムの観光放水初日を訪問してきました。写真のように見事な放水を堪能したのですが、訪問計画時に早速「お好みダムサーチ」を活用して、七倉ダムと大町ダムも見てきたので、使用例としてご紹介します。


黒部ダム観光放水

* 黒部ダム訪問計画における使用例

まず、黒部ダムの公式サイトで確認したところ、今年の観光放水は、6月26日の日曜日からでした。東京近郊に住む筆者と友人たちが無理のないスケジュールで行くには、前日の土曜日から現地入りすることになります。せっかくなので、その土曜日に他のダムも見に行こうと考えました。

まず、ダム便覧で黒部ダムを検索し、「お好みダムサーチ」のリンクをクリックすると、黒部ダムを中心とした地図が表示されます。すると、めったに見かけないバットレスダムのアイコンが近くに2つもあります。「これは!?」と思って、それぞれのアイコンをクリックしてみると、「真立ダム」「真川調整池」ということですが、ダム便覧の情報によると、いずれも生半可な覚悟では到達できない模様。軟弱な都会人の自分たちには到底無理と思い、この2つは早々にあきらめます。

筆者はダム訪問については初心者なので、「とにかく迫力あるダム」が基準です。そこで、「お好みダムサーチ」の地図の上にある「堤高」と書かれたフィルタを「130m以上」と設定してみます(画像の(1)の部分)。すると、黒部ダムのすぐ近くに「高瀬ダム」があります(画像の(2)の部分)。画面右のダム名をクリックしてみると、ロックフィルダムにもかかわらず176mという巨大なもの。これは行ってみたいと思い、ダム便覧を見ると見学ツアーがある模様。「これは行けそうだ」と思い、さらに調べてみると、見学ツアーをやっている高瀬川テプコ館が震災の影響で閉館しているとのことで、泣く泣く訪問を断念しました。


フィルタをかけた状態

次に近いのは、「有峰ダム」です。ダム便覧で見ると、巨大で、しかもカーブしているダムということで、これも行ってみたいダムです。しかし、いくつかのサイトで行き方を調べてみると、富山または岐阜方面からのアプローチとのことで、長野側で1泊のみの我々にはちょっときついので断念します。

もうあまり近くにダムが見当たらないので、少々妥協して、堤高フィルタを「80m以上」に変更してみると、さきほどの「高瀬ダム」の近くに、「七倉ダム」「大町ダム」というのがあります。ダム便覧で見てみると、「高瀬ダム」を含むこれら3つのダムは、高瀬渓谷に順に並んでいるようです。また、「高瀬ダム」ほどではないものの「七倉ダム」もロックフィルでありながら堤高125mと、なかなか大型で迫力があります。

さらに隣の「大町ダム」を見てみると、こちらは大型のコンクリートダム。両方ともに訪問しやすいようなので、今回の立ち寄り先は、この2ヶ所で決定しました。

実際に訪問したところ、七倉ダムはその大きさもさることながら、ロックフィルの斜面を階段で昇るという面白い経験ができました。大町ダムは、さすがの迫力で、しかも堤体の上下両方から見られるという、お得なダムでした。


七倉ダムの堤体の階段


大町ダム堤体上から


大町ダム堤体下から

今回の使用例では「大きなダムを見たい」という基準で堤高フィルタをかけていますが、「ちょっと古ぼけていて、なだらかな土手みたいなダムに行って、ぼんやりとたたずむのがいい」という要望にも応えられるよう、堤高フィルタの上限設定や、竣工年フィルタもありますのでご利用ください。

なお、実際の訪問に際しては、「お好みダムサーチ」などのWEB上の地図だけでなく、より信頼性が高く詳細な地図を併用するようお願いします。自分たちは、ツーリング用の地図を持参し、各ダムの場所とアプローチ方法を確認しました。

* 居酒屋での雑談から始まった開発

さて、この「お好みダムサーチ」の開発ですが、地図好き開発者(筆者)と、ライトなダム好きの友人A氏が、居酒屋で雑談しているところから始まりました。

筆者は、約2年間アメリカに住んだときに毎日の行動をすべてGPSで記録していたような地図好きです(もちろんダムも好きですよ!)。いろいろ思うところがあって昨年末に独立起業し、この春ぐらいからは「地図上でフィルタをかけられるサービス」を中心に、企業向けの開発・提案活動をしていました。

そんなある日、ゴールデンウィーク直前だったのですが、A氏と居酒屋で飲んでいるときに、ノートパソコンを使って地図サービスのプロトタイプを見せてみました。すると、「フィルタをかけて嬉しいのは、やっぱりダムでしょ! 大きなアーチダム、とか探したいから」と熱く語るので、「アイコンを作ってくれたら考えるよ」と冗談半分で言ったところ、平日にもかかわらず当日の夜中に、早速、ダムの形をしたアイコンが送られてきました(彼には本業が別にあるはずなのですが…)。

プログラムの方は、300個ぐらいまでのマーカーなら、すぐに地図上に表示できるようになっていたので、アイコンさえあれば、あとはダムのデータを集めるだけです。早速翌日データを集める作業を終わらせ、ゴールデンウィークに予定されていたA氏のダム巡りの旅に向けて、プロトタイプとしてダムの地図を提供しました。

* 全国のダムを対象にするべく追加開発

この時点では、富山・新潟・長野・岐阜の4県のダムのみを表示していたのですが、全国約2,500のダムに範囲を広げた上に、正式に一般向けに公開するとなると、処理速度向上や、アクセス増対策などに本気で取り組む必要があります。そこまでやるか、少々悩んだのですが、プロトタイプがA氏に好評だったことから、約2,500個のマーカーを快適に表示する技術を開発するいい機会ととらえ、開発を続けることにしました。

ここまで決めたら、あとはひたすら作るだけです。まずは(財)日本ダム協会にメールを書いて、データの利用許諾をいただきます。それから、全ダムのデータを地図上に表示する形式に変換し、複数のPCを使った実行時間測定およびプログラムのチューニング、広域表示方式の新規開発などを行った上で、さらに快適な表示を追求するべく、サーバの設定の調整などを行いました。

これらの作業に加えて、仕様やアイコンの変更が何度かあったこともあり、最初のプロトタイプ完成から1ヶ月以上かかりましたが、正式に公開することができました。

* 今後の方向性

まだ公開して2週間ほどですが、アクセスログを見ていると早速使っていただいているようで嬉しい限りです。今後も、ダムデータの更新を続けながら、「ダム訪問計画に使える手軽なサービス」として改善をしていきたいと思っています。

* 謝辞

「お好みダムサーチ」開発にあたって、アイコンを提供してくれた上に、デザインを何度も改善してくれた(多いときは3日に1度)「とにかく迫力あるダムが好き」なA氏と、いろいろ助言をしてくれた「ちょっと古い、なだらかな土手みたいなダムに行って、ぼんやりとたたずむのが好き」なH氏に感謝します。

(2011.7.7、柳田岳洋)
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