いよいよ「ダムの科学」が刊行されました。企画から2年越しのプロジェクトで、メンバーはダム工学会企画運営委員会活性化小委員会の近畿・中部地区ワーキンググループ(WG)です。
本書誕生のきっかけは、WGメンバーの京都大学岸田潔准教授が「みんなが知りたい地下の秘密」を、本書と同じソフトバンク・クリエイティブ社から出版した実績があったことで、スムーズに話をつないでくれました。内容のたたき台は、WGで現地見学(関西電力活ョダム排砂バイパス)に出向いたあとの反省会の席上で詰めました。執筆陣は、近畿・中部のWGメンバーを中心に、テーマに応じて個別に参加いただいています。できるだけわかりやすく、図面を利用してビジュアルに、とのコンセプトで臨みましたが、皆さん、伝えたい内容が盛りだくさんで、やはり文章が大幅に超過してしまった項目もあります。
一般社団法人ダム工学会 近畿・中部WG 「ダムの科学」 ダムの歴史(とりわけダム技術の発展に貢献した人の足跡)のおもしろさ、ダムを長く使っていくためには何が必要か(ダムコンクリートの寿命や堆砂対策など)、水力エネルギーとしての価値を正しく評価して欲しい、などは、グループ代表として是非伝えたいと考えたポイントです。特に、水力発電の部分、とりわけ、揚水発電のしくみは大きくページを割きました。東日本大震災の後に、中部電力浜岡原子力発電所の停止が当時の菅総理から発表された際に、不足する電気は揚水発電が補うと発言されたことに大いに違和感を覚えました。揚水式発電ダムと原子力・火力発電所がどのようにつながっているか、本書が正しい理解の促進に一役を買ってくれればこの上ありません。その他にも、ダムに対する世の中の誤解があまりにも多く残念に持っています。本書では、これら多くの誤解を解き、皆さんの疑問に答えてくれるものと思います。
さらには、本書ではダムマニア3名の方々にもご登場いただきました。原稿には入りませんでしたが、ダムマニアの世界は奥が深く、上級編(ダム巡礼)、中級編(ダム学習)、初級編(ダム出会い)まで、ピラミッド型のひとつの社会を形作っているとのご紹介もあり、WGメンバーも新しい発見をさせていただきました。また、今年は東日本大震災からの復興を祈念して「黒部の太陽」の映写会が全国で開催されています。本書は、これからの次代を担う中学生・高校生の若い世代の皆さんに、ダムの世界の奥深さ、ダムの魅力を伝えたいと考えて執筆しています。
本書をまずご家族、ご友人、その他の多くの方にご紹介いただき、一つでも二つでもダムの話題で盛り上がっていただければ望外の喜びです。
新書判、224頁、定価1,000円(税込)、ソフトバンク・クリエイティブ刊 ISBN978-4-7973-6201-5、平成24年11月発行
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(2012.11.20、一般社団法人ダム工学会 近畿・中部WGリーダー 角哲也)
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