天理ダムは奈良県北東部、大和川水系布留川上流に位置し、洪水調節、河川維持用水の補給、上水道用水のために1979年に完成した奈良県の管理ダムです。 地元民である私にとって最も見ることが多いダムなのですが、2012年秋頃から急に水位を下げはじめ、工事が始まるとともに、ダム湖には水が全く無い状態になりました。
2012年8月(満水位)
| 2012年11月
| 2013年1月
| 2013年2月
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2013年4月 天理ダムは総貯水容量2500千m3、有効貯水容量2250千m3で、堆砂容量は250千m3。 下記のグラフは天理ダム完成当時から平成21年度末までの累積堆砂量です。平成21年度末には堆砂量は258千m3となり、堆砂容量を超えてしまっています。
一般に、ダムには100年間に貯まると想定される土砂の量を堆砂容量として、治水・利水容量とは別に確保(国土交通省HPより)するとしています。天理ダムは完成してから約30年で堆砂容量が満杯になってしまったことになります。天理ダムは流域面積も10.7km2とかなり狭く、ダムには3本の布留川支流が流れ込んでいますが、どれも谷川で水量はかなり少ない状態です。ではなぜ土砂が貯まってしまったのでしょうか。
天理ダムは天端を国道25号線(旧道)が通っています。現在は片側1車線ですが天理ダムが出来るまでは幅3m程度の今とは比べ物にならないほどの酷道でした。天理ダム周辺はダム完成と同時に片側1車線となりましたが上流部分は道路の工事が昭和60年頃まで続きました。新しい道路が完成すると上流域に産廃業者が処分場をつくるようになります。さらには農地改良に伴う長期間の工事、ダム湖畔の土砂崩れもあり、それらが堆砂の原因になったと考えます。
予想よりはるかに早いとはいえ、貯まってしまったものは取り除かないといけません。天理ダムは初瀬ダム・白川ダム・岩井川ダム・大門ダムと共に大和川の治水の一端を担っています。堆砂によって有効貯水量を減らす事は、洪水に対しての備えを減らしている事と同じことです。天理ダムでは今回の堆砂除去工事に先立ってダム上流に砂防堰堤も設置しています。
【工事の様子】
工事前の調査?
| クレストからの排水パイプ設置
| 湖底の掘削
| 排水パイプ周辺の土砂除去
| 死水域への土砂移動
| ダム湖上流の砂防堰堤
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梅雨に入り洪水期を迎えました。そのあとには台風シーズンがやってきます。2011年、今までにない豪雨を奈良県は経験しました。大和川流域でも同じことが起こらないとは限りません。天理市の水がめとして、また奈良県の防災の砦として、機能を十分に果たせるように、これからも頑張って欲しいと思います。
参考文献:第7回大和川流域委員会河川管理者資料 全国のダム堆砂状況について(平成21年度 国土交通省)
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