《このごろ》
新豊根ダム一般公開

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 今年の森湖期間に新豊根ダムが一般公開されることになりましたので、集合場所の新豊根ダム操作室前に向かうことにしました。
 新豊根ダムを一度でも訪れたことのある方は、「とにかく遠い」というイメージを持っていることでしょう。現在でも道路事情はあまり好転していませんが、三遠南信自動車道(無料供用)が部分開通し、鳳来峡ICを降りるとすぐに宇連ダム・大島ダムに到着できるようになりました。ここから少し頑張れば愛知県豊根村です。新豊根ダムまでのアクセスルートも、「少し遠い」レベルにまで改善されつつあります。
 集落を通り過ぎると、やがて谷間にダムの下流面が見えてくる。これが、一般的なダムへのアクセス方法です。新豊根ダムの場合、人家が見当たらなくなってしばらく進むと、ダム湖側から上流面に到着するという通常とは逆のパターンになります。
 国土交通省の職員さんに駐車場に誘導され、受付でパンフレットとダムカードを頂きます。


1.堤体巡視体験

 最初に、操作室3階に案内されました。所長から新豊根ダムの役割、建設の経緯、ダム放流時の操作手順などが詳しく説明されました。新豊根ダムは、クレストゲートからの放流が多いダムであるということです。コンジットゲートは1つしかありませんので、必然的にクレストゲートを利用することになるようです。もっとも、竣工以来一度もゲートを開けたことがない他の多くのダムと比べて、ゲート放流を経験しているということです。新豊根ダムでは、流入300m3/sから洪水調節開始、流入1800m3/sで放流、700m3/sの定率定量方式でクレストゲートからの放流も行わないと480m3/s以上の放流はできないということです。次に、クレストゲート巻き上げ室を見学します。新豊根ダムは元々発電専用のダムとして計画され、その後昭和43年の洪水被害を受け洪水調節機能を持つダムとして設計が変更されたそうです。


管理用エレベーター

 続いて、左岸のエレベーターでコンジットゲートを見学に行きます。左岸に設置されていた緑色の構造物の内部は階段であると思っていましたが、これは堤体管理用のエレベーターでした。直角三角形の斜辺に相当する部分を上下するエレベーターということになります。実際に乗ってみると、傾斜して移動している感覚はありませんでした。ところが、同乗した小学生は、
 ●パパ…、何か変…、このエレベーター斜めに動いている…。
と言っていました。やはり、子供の感性には鋭いものがあるようです。


新豊根ダム

 今日の巡視体験では、エレベーターを利用してB2まで降ります。ここから、キャットウォークを歩きコンジットゲートに向かいます。昼過ぎに、このゲートからの放流が予定されています。


2.湖面巡視体験

 予約した時間に艇庫前に集合します。救命胴衣を着けて順番を待ちます。
 巡視艇レイクみどりに搭乗し、湖面巡視に向かいます。


みどり湖、艇庫前付近

 クレストゲート付近異常認めず。


クレストゲート付近

 湖面異常なし。一般釣人のボートを確認したため、減速。


新豊根大橋付近

 新豊根大橋付近、異常なし。
 本来の巡視業務はさらに上流まで行くことになっているそうです。今日は、次の湖面巡視体験希望者が待っているためこの地点で折り返しとなりました。


3.見学者のみなさん

 巡視艇を降りると、じわっとした暑さが戻ってきました。救命胴衣を外しましたので本当は少し涼しくなってもよいはずなのですが、湖面と陸上では温度差があるようです。夏場は良いとしても、冬季は寒い湖上を巡視される職員さんに頭が下がる思いがしました。
 堤頂では、コンジットゲートからの放流を待つ見学者が増えてきました。放流注意Tシャツや、先日の相模湖ダムマニア展で限定販売されていたダムTシャツを着た方、トートバッグ(FNAWAP)をお持ちの方などが目立ちました。面識のない方でしたので、こちらからは、お声を掛けませんでしたが、何となくダム愛好家の裾野が広がっているように思えました。


新豊根ダム堤頂部


4.抜水放流

 今日の放流は、ダム湖の水を1滴も使わない方法で行われました。放流する水は、堤体内(コンジットゲートと予備ゲートとの間)に残されていたわずかな量です。職員さんの話では「放流は、あっという間に終わってしまうでしょう。」ということでした。


抜水放流

 新豊根ダムでは、河川維持放流を行っていません。通常、佐久間ダムとの揚水発電によって放流しているということです。今回は、ゲートの点検のための水抜きをこのイベントに合わせて行うことにしたということです。


放流終了

 放流は、本当に「あっ」という暇もなく終了しました。しかし、高圧ローラーゲートらしい力強い放流を見ることができました。このように放流開始から終了までの一部始終を見学することができる企画は珍しいものではないでしょうか。来年も、是非このイベントに合わせて抜水放流を行っていただきたいと思いました。

[関連ダム] 新豊根ダム
(2013.8.7、安部塁)
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