《このごろ》
三名川ダムのネットワーク

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 鶴が翼を広げたような群馬県の輪郭に河川名。このタイプの標識は、群馬県内でときどき見かけるものです。お役所仕事らしからぬ遊び心があって、親近感が湧いてきます。


一級河川三名川


1. 名前が3つ?

 利根川水系の三名川には「三名川ダム」(群馬県藤岡市)というアースダムがあります。フォトアーカイブスに登録されている「三名川貯水池(三名湖)案内」の写真を見ると、何かシールのようなものが貼られているようです。それぞれ「大谷池」「小宮池」「高木池」という文字が読み取れます。名前が3つあるので「三名川ダム」なのでしょうか?
 現地で改めて案内板を確認すると、三名川ダム本体の「大谷池」のほかに、「小宮池」、「高木池」と称される部分にも小さなアース堤体があるようです。


三名川貯水池案内板

 「三名川」という地名・河川名は、貯水池が成立する以前からすでに存在していたようです。したがって、大谷池・小宮池・高木池の総称が「三名川貯水池(三名湖)」であると考えるべきです。

 案内板の下の方に、この3つの堰堤の諸元が記載されていました。大谷池以外は堤高が低いため、河川法上のアースダムには該当しません。しかし、この地域の農業のために立派に活躍しています。折角の機会ですから、この場でご紹介したいと思います。


2. 高木池・小宮池


鮎川・三名川からの取水

 高木池最上流部には、三名川と鮎川からの取水口があります。鮎川から取水した農業用水は、隣接する牛秣ダムを経由して高木池に流入しています。牛秣ダムの完成によって、ようやく安定した農業用水が確保できるようになったということです。


高木池堤体(堤高=5.4m)

 高木池の堤体です。高木池には余水吐は設置されておりません。流入量はすべて左岸に接続している小宮池に流れて行きます。高木池自体には、取水塔のようなものは確認できませんでした。かたくなに、大谷池への送水作業に徹しているようです。


高木池

 高木池の対岸はゴルフ場として利用されています。このゴルフ場を隔てた反対側に牛秣ダム(鮎川湖)があります。ゴルフ場一帯は丘陵になっており、この地形を利用してアースダム群が築造されました。丘陵の西部を流れる鮎川と南部を流れる三名川から少しずつ取水することで、水を効率的に利用しています。


牛秣ダム(鮎川湖)内の導水路

 牛秣ダムは、鮎川から導水して農業用水を貯水しています。また、鮎川湖左岸には導水路の分水工があって、三名川ダムへ農業用水を配分しています。


鮎川からの導水路の分水工(鮎川湖左岸)

 分水工から道路(ガードレール)に沿って流れて行く水が三名川ダム、左に流れ落ちる水が牛秣ダムに貯水されます。


導水路

 分水工を経た農業用水は、水利権の関係のためか牛秣ダムの貯水池(鮎川湖)とは明確に分離された導水路を通って高木池方面に向います。この水は高木池を経由して小宮池に流入することになります。

 小宮池もまた、余水吐はありません。貯水池は高木池と大谷池との中継ポイントとなっています。いわば“ハブ溜池”ということになります。規模としては小さなものですが、役割は重要です。


小宮池堤体(堤高=4.8m)

 小宮池には、高木池では見当たらなかった取水設備がありました。


スピンドル(小宮池堤頂部)


3. 大谷池(三名川ダム)


小宮池からの流入部

 高木池・小宮池という2つの小堰堤が連携して導水した農業用水は最終的に大谷池を形成します。流入部からは前方に、三名川ダムの上流面を遠望できます。三名湖と鮎川湖はともに管理釣場としても利用されており、休日には大勢の釣客が訪れます。


三名川ダム上流面

 三名川ダムの上流面は、白亜のコンクリートブロックで護岸されていました。かつては一般的なアースダムのような構造であったと思います。ブロックの白さから改修時期は、きわめて最近のようです。

 売店の方に事情を聞いてみると、三名川ダムは東日本大震災で堤体の上流側の護岸が大きく崩落したということです。幸い決壊には至りませんでしたが、その災害復旧として護岸工事が行われたということです。


改修工事前の三名川ダム上流面(撮影:だい)

 なお、群馬県では東日本大震災により鳴沢ダム(高崎市)も同じような被災を受けていました。こちらのダムも、すでに復旧工事は完了しています。

 先人は、自然の地形を巧みに利用し水路トンネルを穿って農業用水のネットワークを構築しました。こうして、稔り豊かな水田が開拓されました。知恵と汗が生んだ努力の痕跡です。後世、大切に利用して欲しいものです。

[関連ダム] 三名川ダム  牛秣ダム
(2013.9.18、安部塁)
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 (安部 塁)
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