《このごろ》
葛野川ダム下流面へのルート

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 ダム便覧のフォトアーカイブスには、葛野川ダム(山梨県)の写真が多数掲載されているものの、堤体下流部から見上げたアングルの画像は1つもありませんでした。


1.東京電力葛野川ダム

 葛野川ダムは東京電力が揚水発電の下池として建設したものです。このダムは、一民間企業の所有物ですから、当然には自由に見学できるものではありません。
実際、ダムサイトは事故防止・テロ対策などの理由から全面立入禁止とされても不思議ではない場所にあります。しかし、東京電力では、堤頂部一帯を日中(9:00〜17:00)自由に見学できるように開放しています(冬季を除く)。


葛野川ダム

 下流部は立入禁止なのでしょうか。東京電力に確認すると、やはり堤体直下は関係者以外立入禁止となっているということです。しかし、林道は、東京電力と関係のないものであり、詳細は林道管理者に問い合わせてほしいということでした。堤体の下を通る林道は、「(山梨)県営林道葛野川線」と名付けられていました。


県営林道葛野川線

 もう少しで下流面を見上げることができるのに少し手前で封鎖されている例は、今市ダム(栃木県)、滝畑ダム(大阪府)、和田川ダム(富山県)など枚挙に暇がありません。このような場所は、本当にストレスを感じてしまいます。
 葛野川ダムを下流から見上げた写真がフォトアーカイブスに掲載されていないということは、やはり下流面が見える直前で足止めとなっている可能性が高いと考えました。


2.県営林道葛野川線

 国道との分岐点「拓道橋」に設置された林道のゲートは、常時閉鎖されています。カギの貸与を受けない以上、自動車で林道に進入することはできません。林道管理者(山梨県)に確認してみると、林道葛野川線は林業作業の専用道であり一般車両の乗り入れは許可していないということでした。一方で、徒歩で立ち入ることについては特に制限していないが、あくまでも自己責任で通行してほしいということです。
 自己責任とは、万一がけ崩れが発生してヘリコプターの出動を要請した場合、数百万円に及ぶその救助費用は全額個人負担になるということです。

 地形図で確認すると林道の起点から、ダムまでは2km弱です。等高線から判断して勾配は、ほとんどないはずです。徒歩で慎重に進んでも、往復で1時間もかかりません。下流面に会える可能性は五分五分として、一応“挑戦”してみる価値はありそうです。

 林道の起点「拓道橋」付近には『拓道の碑』という記念碑がありました。道路開拓にまい進する山梨県民の情熱が伝わります。


『拓道の碑』

   拓道の碑
   先人の拓道の念 ここに見る
   山谷険しく 道つづらなり
   新道を築くは 未来への扉なり
   山深き地に 天を望みぬ

 拓道橋のゲート脇から林道葛野川線を徒歩で進みます。すぐに葛野川ダム放流警報の看板が目に入りました。表記によれば、ダムまでは1.5kmです。この距離は、ダムサイトまでのものを示しています。1.5kmも歩かなくても、1km前後で結論が出るはずです。


葛野川ダム放流警報看板

 短い距離とはいえ、自己責任が問われていますので、安全のため熊よけの鈴を準備します。また、スズメバチの襲撃がないとも限りませんので、明る目の服を着用します。以前、スズメバチに襲撃された方の話を伺ったことがあります。その方は、すんでのところで車に避難し、あやうく難を逃れたそうです。しかし、スズメバチの大群は車の窓ガラスに何度も体当たりを繰り返したそうです。本当に怖い話です。


県営林道葛野川線

 林道はアスファルトで舗装され、歩きやすい路面でした。ほとんど勾配もありません。途中、地形図には描かれていないロックシェッド(洞門)がありました。かなり高規格な林道です。


ロックシェッド内部

 この道路は、かつては一般道であったものの、葛野川ダムの完成で一部区間が水没したため、残された部分を林道として利用しているものと推測しました。ところが、県の方の話によれば、この道路は当初から林道として開通したもので、葛野川ダムの本体工事が始まった頃、工事車両が通行できるように改良が加えられたということです。このロックシェッドは、工事用道路に転用されていた時代の名残かもしれません。


土砂崩れのような場所

 土砂崩れの形跡がありました。最近のものではなく、かなり以前から放置されているようです。この写真で確認すると、法面の擁壁がV字型にカットされています。土砂崩れではなく、渓流の洗い越しかもしれません。いずれにしても車1台分通行できるよう砂礫が撤去されています。時々、林業関係者の車両が通行しているようです。
 そしてようやく、葛野川ダムの姿が見えてきました。懸念していたスズメバチの偵察部隊にも、この日は遭遇しませんでした。


葛野川ダムのクレストゲート

 堤体直下。ここから先は係員以外立入禁止です。


葛野川ダム堤体直下

 堤体直下は立入禁止でしたが、無事に下流面を見上げることができる場所に辿り着くことができました。平地よりも一足早い秋が始まっているようです。


葛野川ダム下流面

 なお、後日このレポートをまとめるにあたりダム便覧を確認してみると、便覧からリンクされている萃香さんのブログを発見しました。このブログには、ダムマイスターNo.1の萃香さんが2009年5月にこのルートで葛野川ダムに徒歩で到達したことが記載されていました。こちらもあわせてご参照ください。


葛野川ダムの下流面に行かれる方に

*林道は林業関係の予算で整備されているもので、一般人に対して積極的に開放しているものではありません。県営林道葛野川線を歩く場合には自己責任でご通行ください。

*拓道橋のゲートは、林業関係者の車両が通行します。ゲート開閉に支障がありますので、付近には絶対に駐車しないでください。

*ダム右岸付近では、植林作業が行われていました。林道は、林業作業者に優先通行権があります。

[関連ダム] 葛野川ダム
(2013.9.27、安部塁)
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 (安部 塁)
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