《このごろ》
新刊紹介〜日本の謎は「地形」で解ける

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 公益財団法人リバーフロント研究所代表理事の竹村公太郎氏の新刊が出た。
 前著『土地の文明』『幸運な文明』を改題して再編集したPHP文庫『日本史の謎は「地形」で解ける』である。帯をみると養老猛氏、推薦!荒俣宏氏、絶賛!というキャッチコピーが大きく並べられている。

 源頼朝がなぜ狭く小さな鎌倉に幕府を開いたか?や、徳川家康が関が原の戦いを勝利した後、すぐに江戸に戻ったのはなぜか?という歴史家の常識の盲点をつくような疑問を、周辺の地形情報からスラスラと読み解いているところが痛快である。建設省に勤務して長良川河口堰の建設に携わった際、市民団体からは自然破壊の根源のように目の敵にされた経験を持つ、竹村氏ならではの視点が光っている。

 道路や水道といったインフラを社会の下部構造としてとらえるところから、日本という国の成り立ちを解き明かしていき、これまで動かなかった歴史に対する固定観念が見事にひっくり返されることは間違いない。

 中央に山脈が走り、無数の急峻な川がある南北3000qの日本列島の地形と気象は多様性である。人々はどのように住むために知恵を出したか、視点を変えて地形をみると日本の歴史の謎が解けてくる。

  竹村公太郎著 『日本史の謎は「地形」で解ける』
  文庫判、379頁、定価743円(税別)、PHP文庫刊
  ISBN978-4-569-76084-1、2013年10月21日発行

(2013.11.11、中野朱美)
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