ダム便覧が年度更新され、2014になりました。この更新で2013年度に掲載されていたダムのうち、13基のダムが消えることになりました。 過去にダム便覧から削除された理由を上げると、
・堤高が15m未満であることが判明し、ダムに該当しなくなったもの(大関堰ほか)。 ・役割を終えてダム便覧から削除されたたもの(菅野ダム、荒瀬ダムなど)。 ・計画が中止されたため、ダム便覧に掲載されなくなったもの(槙尾川ダム、北川第一ダムほか)。
等に大別されます。
1.浅川ダムの経緯
浅川ダム(長野県)も、建設が一時中止されたためダム便覧から消えるところでした。簡潔に経緯を示すと次のようになります。
・田中知事(当時)の「脱ダム宣言」により、本体工事契約解除(平成14年9月) ・ダムによらない治水対策の検討(平成13年6月〜平成15年12月) ・河道内遊水地による検討(平成15年12月〜平成16年9月) ・将来計画を先送りした当面20年間の計画案検討(平成16年9月〜平成18年8月) ・ダムを含めた治水計画の再検討(平成18年10月〜平成19年8月) ・最終的に治水専用ダムと河川改修の組み合わせによる治水計画を採用(平成19年8月) ・浅川ダム本体工事着工(平成22年5月) ・浅川ダム本体コンクリート打設開始(平成23年9月)
付替え県道(戸隠高原浅川線)は、すでに平成8年に開通しました。この県道には、シンボル的な大きなループ橋(真光寺3号橋)があることから浅川ループラインの愛称が付けられています。
浅川ループライン(真光寺3号橋) 浅川ループラインは、長野オリンピックの会場の一つであった飯綱高原スキー場へのアクセス道路として大活躍したそうです。
ループ橋と浅川ダム
2.工事の進捗状況
こうして数奇な運命をたどった浅川ダムも、今月(平成26年6月)末までに本体打設が完了する見込みということになりましたので、先日、見学させていただきました。ダムサイトは驚くほど市街地に近い場所にあります。
建設中の浅川ダム下流面 写真からは分かり難いのですが、堤体は直線ではなく左岸寄りで「く」の字型に曲げられています。
建設中の浅川ダム上流面 コンクリートの打設は、最終段階に入りました。バッチャープラントで製造されたコンクリートは、トランスファーカによってバケットに運ばれます。
バッチャープラント
バケットにコンクリートを流しているトランスファーカ コンクリートを満載したバケットは、直ちにタワークレーンで堤体に運ばれ打設されて行きます。
タワークレーンで運ばれるバケット 冬季五輪が開催された都市ですから、冬期は養生のためにコンクリート打設は行われなかったそうです。また、民間気象会社と契約し、ダムサイトに4o以上の降雨が予想されるときにはコンクリートの品質を確保するために打設を行わないそうです。このように、決して条件には恵まれた場所ではありませんが困難を克服してほぼダムの姿になりつつあります。
コンクリートを放出するバケット 天端橋梁は、プレストレスト・コンクリートを使用した橋桁(PC橋)が架けられることになっています。また、中央の突起部分はエレベータ塔になります。
非常用洪水吐 湛水域に地滑りの可能性が高い部分があるそうです。このため、右岸側は山の上部を切り崩し、山の重さを軽減する工事が行われています。また左岸側はパイルを打ち込み地滑り対策を講じるそうです。さらに、河床部には、押えの盛土を行って安全度を高めるそうです。
地滑り防止工事 本体の打設工事が完了することで一つの節目を迎えますが、平成29年3月末の完成を目指して今後も工事は続きます。最後まで安全第一で工程が進み、無事竣工することを期待します。
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