先頃の「ダムナイト7」でゴルフ練習場となっている溜池が紹介され、来場の皆さんから、驚きの声が上がりました。この様子をネット中継で見ていた西日本在住の方の中には、何故そんなことで歓声を上げるのか不思議に思った人もいたかもしれません。事実、西日本では、打ちっ放しのゴルフ練習場となっている溜池はそれほど珍しいものではありません。これらの中でダム便覧にも掲載される堤高を持つ溜池を思いつくまま上げると、長谷大池(兵庫県)、服部大池(広島県)、松永溜池(広島県)、鈴池(広島県)、城ノ谷池(愛媛県)、関地池(愛媛県)…。やはり西日本に偏っているようです。(ただし、現在もゴルフ練習場として営業中か否かは不明です。)これは、溜池の多い西日本の一部の地方で独自に発展した文化の一つかもしれません。
関地池の案内板 ところで、ゴルフ未経験者の方も「池ポチャ」という言葉を聞いたことがあるかと思います。ゴルフ場のコースにはウォーターハザードとして池が設置されることが通例で、ゴルファーの行く手を阻みます。打ちあげたボールが不幸にも池の水面上に落ちた場合、ボールは確実に水の底に沈んでしまいます。それでは、これら溜池系のゴルフ練習場は、どのようにしてボールを回収しているのでしょうか?
関地池のゴルフ練習場 ダムカードに「公式」と「非公式」があるように、ゴルフボールにも「公式」と「非公式」が存在します。非公式とは、ルールで決められた基準に該当しないもので、その中には異常に飛距離が伸びるボールもあります。もちろん、これら基準外のボールは、正式なラウンドでは使用できません。(ルール違反) 溜池系のゴルフ練習場では、特殊なボールが使用されています。公認球は水に沈むものですが、溜池で使用されるボールは水に浮く構造になっています。通常のボールが「重力式」であるとすれば、この溜池のボールは「中空重力式」ということです。こうして水上に放たれたゴルフボールは、沈むことなく回収船または貯水池内に人為的に造られた流れによって回収されます。
公認ボール(下)と溜池で使用される水に浮くボール(上)の比較
ゴルフボール回収船 「お客さんパターが2本入ってますよ。」キャディーさんに、このように指摘されることが時々あります。私は、意図的にパターを2本入れています。もちろんルールには抵触しません。コースに出る場合は、ルール上、最大14本までのクラブを持ち込むことができます。多くのプレーヤーは多種のクラブを使用したいために、パターは通常1本です。私は、パター2本の他に、ウッド(1番〜3番)・アイアン(4番〜)等から12本選択して、プレーに臨むことにしています。私が持ちこむ2本のパターのうち、1本が常用で「V」というシールが貼ってあります。これは「バルブ」という意味です。もう1本には、「クレストゲート」の「C」というシールを貼っています。Cの方は、購入時の試打以来一度も実戦では使用していません。このパターの価格は少し高いデジタルカメラが買えるくらいの値段でした。Cの方は、私がホールインワンを達成した次のホールで使用することに決めていますので、今まで一度も使用していないということになります。また、今後もおそらくは使用する機会はないと思われます。
関地池貯水池 このように溜池系のゴルフ練習場で、非公式仕様のボールで練習することは上達の妨げとなると言う人もいますが、真偽の程はわかりません。市街地にある狭いゴルフ練習場で、ネットに貼られたマークにあたったら「200ヤード」という所より、むしろ、大空に向ってスウィングできる溜池系の練習場の方が気持ち良くストレス解消にもなると思います。
溜池をゴルフ練習場として使用するためには水利権者等との利害の調整や安全対策が必要なことは当然ですが、条件が整えば溜池の有効な活用方法の一つだと思います。関東では全く見かけない溜池系のゴルフ練習場ですが、さしあたり千葉県のどこかのアースダムで営業を始めてもらえないかと願っています。
関地池堤体下流面
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