《このごろ》
新豊根ダムのクレストゲート放流

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 平成28年2月20日〜26日の間、新豊根ダムにおいてクレストゲートからの放流が行われました。この放流の理由が発電所停止による代替放流であることは明白です。それにしても、なぜクレストゲートから放流しなければならなかったのでしょうか。クレストゲートは非常用の洪水吐です。非常用洪水吐は、常用洪水吐(コンジットゲート)を全開しても処理しきれないような異常な場合に使用する放流設備です。


新豊根ダム

 新豊根ダムは、もともと電源開発株式会社の発電専用ダムとして計画されました。その後、建設省(当時)側から洪水調節用のダムとして参加の申し入れがあり、治水機能を持つ多目的ダムへと変更されました。こうして国土交通省と電力会社の共同管理となった新豊根ダムは、通常、全流入量を新豊根発電所経由で佐久間湖(佐久間ダム)に落として(放流)います。


新豊根発電所取水口

 今般、佐久間発電所が点検に入ったため発電放流が停止されて佐久間湖の水位が高い状態になりました。その影響で、新豊根発電所を経由しての放流が出来なくなったということです。このような場合でも新豊根ダムにおいては、予備放流水位(非洪水期:EL=470.0m)までは、流入量をそのまま貯留しているそうです。発電用水は、電力会社にとっては現金と同じですから、簡単に手放すことはできません。


新豊根ダム案内図より


豊根大橋付近の水位の状況


越流部が完全に水没している貯砂ダム

 こうしいる間に、みどり湖(新豊根ダム)の水位も上昇して洪水貯留容量(非洪水期:6,100,000m3)の確保が、さすがに厳しくなりました。このため新豊根ダム本体からゲート放流を開始せざるをえない事情に至ったそうです。


新豊根ダム上流面付近の水位

 ところが、コンジットゲートは改修工事中(塗装工事)で使用することができません。おまけに、2門あるクレストゲートうち片方(右岸側)も同じく塗装工事中のため使用することができない状況でした。残された出口は一ヶ所しかありません。


新豊根ダムをキレイにしています!(改修工事説明板)


塗装工事中のクレストゲートと放流中のクレストゲート

 放流設備の点検や改修工事は、非洪水期に行われることが一般ですから、誰にも非はありません。このように、今回の放流はいくつかの偶然が重なって行われた産物のようです。放流中は、陽光が射すと虹が現れました。この虹は、午前中と午後で、弧の向きが変わるということでした。この角度の変化は、太陽の動きによる演出です。


午前中の新豊根ダム


午後の新豊根ダム

 午後1時30分となりました。何か電気系統のトラブルが起きてこのまま放流が続いてくれれば…、一瞬、不謹慎な思いが脳裏をよぎりました。


放流を停止する新豊根ダム

 定刻通り放流は終了しました。そして、改修工事中のコンジットゲートが姿を見せました。


工事中のコンジットゲート(常用洪水吐)

 今回の放流は、コンジットゲートが工事中で使用できないという非常事態に対応したものです。つまり、クレストゲートとして本来の「非常用洪水吐」という役割を立派に果たしたものでした。放流は終ってしまいましたが、春に向けて沢山の桜の樹々がつぼみを膨らませていました。ぜひ多くの方々に新豊根ダムに足を運んでもらいたいと思いました。

[関連ダム] 新豊根ダム
(2016.2.29、ダムマイスター 01-024 安部塁)
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 (安部 塁)
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