《このごろ》
門別ダム見学記

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2023年(令和5年)10月19日から一週間かけて北海道のダム巡りをしてきました。

ダム見学を目的に北海道を訪問するのはこれで4度目、今回はダム密度の低い道東やオホーツク地方が中心となるため計画通りに回っても30基見学できれば良しとする予定でした。ところが旅程前半で雨に祟られ、さらに緯度が高いせいで想定よりも早い日没もあり結果的には19基のダムを見学するにとどまりました。しかし、3基の国交省直轄ダムで管理支所長さま直々のガイドによる見学が叶ったほか、2基の立ち入り禁止ダムで立ち入り許可が得られるなど内容的には充実したダム旅となりました。

今回見学した19基のダムのうち特徴的、印象的だったダムについて逐次報告したいと思います。最初に紹介するのは門別ダム(ダム番号0085)です。北海道沙流郡日高町にある灌漑目的のアースフィルダムで、ダム便覧には1971年に北海道の事業で竣工と記されています。


国土地理院地形図より

現地では所在地から庫富(くらとみ)ダムとも呼ばれ、ダムサイトの記念碑や国土地理院地形図にも庫富ダムと記載されています。


ダム入口に『関係者以外立ち入り禁止』という警告とともに門扉が設置されているのは承知していたため、事前に管理者である日高門別土地改良区様に連絡を取り、立ち入り許可を得るとともにダム建設の経緯やダムの運用について詳しくご教授いただきました。

日高町のある北海道日高地方と聞けばたいていの人は『競走馬の生産地』を想起すると思いますが、事実競走馬の80%が日高地方で産出されています。そんな中、門別ダムの受益地となる旧門別町は当初は稲作中心の農業が展開されましたが水源となる日高門別川は渇水が多く安定した農業用水源が求められていました。そこで道営事業により1970年(昭和45年)に建設されたのが門別ダムで、完成後は『補水ダム』として運用が開始されました。補水ダムは初めて聞く言葉だったのですが、土地改良区によれば特定の受益農地への灌漑を目的とするのではなく、既存の水源である日高門別川で水不足が発生した際に用水補給を行うダムとのこと。しかし皮肉なことにダムが完成した昭和40年代以降の競馬人気、特にハイセイコーの登場を契機に旧門別町でも競走馬育成機運が高まります。加えて、政府の減反政策もあり水田から競走馬育成や牧草地への転換が相次ぎこれに比して門別ダムの放流頻度は減少の一途をたどります。土地改良区のお話では現在の日高町の水田転作率は80%に達し、直近4年間は門別ダムからの用水補給は一度も実施されていないとのこと。



日高町に隣接する新冠町の道の駅新冠にあるハイセイコーの銅像

さて実際にダムを見学します。ゲートから100メートルほど歩くと右手に堤体が現れます。ダムと言っても実情は溜池に近いのですが、北海道のため池データベースには記載がないので農業用ダムという扱いなんでしょう。



ここ数年は用水補給がないとのことですが、定期的に草が刈られきちんと管理されていることがわかります。


右岸の横越流式余水吐


余水吐斜水路に沿ってダム下に下ります。写真は減勢工で北海道の溜池でよく見られるコンクリートの梁が渡されています。この先を進むと底樋管まで行けそうでしたが、土地改良区の方にダム下はクマが出るので注意と諭されていたのでこれ以上進むのは自重。天端に戻ります。



ダムサイトの水神
裏にはダム建設の経緯が簡潔に記されていました。



総貯水容量25万6000立米の貯水池。



左岸の斜樋

豪雨が予想される際の事前放流でバルブを開けることはあるそうですが、ここ4年は用水補給としては利用されていません。

稲作に比べて水の需要は少ないとはいえ日高門別川で渇水が起きた際には牧場・牧草地向け用水補給といった出番はあるでしょうし、消防用水としての活用も想定されているようです。でも昨年は新潟や福島で少雨による渇水が問題化した中、25万立米の水が未使用のまま貯留されているのはもったいないなあというのが偽らざる心境です。


[関連ダム] 門別ダム
(2024.1.30、ダムマイスター 07-080 福角正美)
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 (福角正美)
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