ダム便覧には千葉県のダムとして50基が掲載されていますが、そのうち到達困難な第2袋倉ダムを除く49基は訪問済みです。
一方で、千葉県には立入が制限されたダムも多くそれらは遠望するか、敷地外から垣間見るしか手がありませんでした。
今年1月から3月にかけて3度にわたり千葉県のダムを訪問し、前回立入制限等で十分に見学できなかったダムについては事前に管理者様と見学の交渉を行い、その多くでダム構内への立入許可を頂けました。
今回紹介する千葉県長南町にある山内ダム(ダム番号3293)もその一つで、ダムを管理する長南町産業振興課職員様同行での見学となりました。
山内ダムに通じる管理道路入口。ゲートが設けられ関係者以外立入禁止。
僅かに進むとダムと正対できます。堤高21.6メートル、堤頂長99.8メートルと農業用アースフィルダムとしては中規模サイズですが、右岸に残る地山を余水吐斜水路が流下する特徴的な造形。何よりも構内の寒緋桜がほぼ満開でちょっと立入禁止がもったいない気が?
余水吐と堤体の間に伸びる地山はスフィンクスの足のよう。
天端入口にはより厳重なゲートがあり、職員様に開けていただきました。
ダムサイトには竣工記念碑と事業説明板が並びます。山内ダムについてはネットを検索しても得られる情報が少なく、貴重な情報源。
ダムの受益地である山内地区は気候は温暖、地味も肥沃ながら水源となる埴生川の水量が不安定で用水不足が頻発していました。また、細い谷間に広がる水田は不整形で、効率的な農業経営の阻害要因にもなっていました。山内ダムは県営かんがい排水事業によって2004年(平成16年)に竣工、併せて圃場整備も進められ山内地区の稲作生産効率は大いに改善しました。
ダムの管理は町が受託していますが、堤体等の草刈や清掃は受益地区である山内地区が行っています。
また灌漑用水の補給のための取水設備の操作も山内地区が行っています。
総貯水容量は36万立米で約110ヘクタールの水田に用水を供給します。
気候が温暖な房総半島は総じて田植えが早く山内地区でも3月には田植えが始まります。
貯水池もほぼ満水で灌漑期に備えています。
横越流式余水吐と斜水路
それにしても桜が美しい。
管理事務所と斜樋
職員の常駐はなく、日々巡回されます。
上流から。
とてもきれいに整備されたダムを見ると、今も貴重な水源として受益農家に重宝されていることが窺えます。今回はあくまでも特例ということで立入、見学許可が叶いました。対応していただいた長南町産業振興課様には厚く御礼申し上げます。
一方で、無断でダムに対入り写真撮影をしているケースがままあるとの苦言も頂きました。ダムの訪問・見学に際してはくれぐれもルールを守り良識ある行動で臨んでいただきたいと思いますし、山内ダムについては町は今後も一般個人からの見学要請には応じない点をここに記させていただきます。