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筑後川の珍魚「エツ」

エツとは

 「エツ」は、カタクチイワシ科の魚で、「斉魚」の字が当てられる。中国や朝鮮にも同一種又は類似種が生息しているが、日本では有明海湾奥部のみに生息し、産卵のために筑後川などの河川を遡る、大変珍しい魚。

 体の背面が薄い青褐色で、側面は銀白色、体は著しく扁平で薄く、尾の方にいくにしたがって細くなり、ペーパーナイフのような形をしている。全長は、2〜3歳魚で25cm〜30cm、大きいものは40cmを超えることもある。

(写真提供:水資源機構筑後大堰管理所)
すみか

 エツは、朝鮮半島から中国大陸の沿岸一帯に分布しているが、日本では有明海と底に流れ込む筑後川、六角川などの河川にのみ分布している。普段は、有明海湾奥部にすみ、5〜8月の産卵期に川を遡って産卵する。産卵場所は、筑後川の場合、筑後大堰(河口から23km地点にある)の下流が主な産卵場といわれる。エツの子供は河口域から沿岸域で育つ。

エツ漁業

 晩春になると、有明海からエツが群れをなして筑後川を遡りはじめ、漁業者は、中層を泳ぐところを流し刺網で漁獲する。

 このエツ漁業は、知事許可による漁業(許可漁業)で、操業期間は、5月1日から7月20日まで。


 福岡県・佐賀県の漁獲量を見ると、昭和50年代には100トン以上あったものが、昭和60年代から平成初期にかけて減少傾向で50トン程度にまで減少した。その後、近年は増加傾向にあるとも言われ、平成12年には96トンにまで回復している。

 平成4年からは、人工授精したエツの卵を放流する受精卵放流事業が実施されている。


味覚



 初夏になると筑後川下流の城島町から大川市にかけて、川辺にエツ料理の屋形船が浮かび、各種のエツ料理を楽しむことができる。また、筑後川の堤防を下ると、両岸にエツ料理の看板が目立つ。有名なのは、諸富町の「津田屋」など。

 エツは小骨が多く、料理の際にはハモ料理と同様に狭い間隔で包丁を入れて骨切りをする。また、鮮度が落ちやすいので、獲ってから時間をおかずに料理するのがよい。
 料理としては、刺身、唐揚げ、煮付け、吸い物など。刺身があっさりしておいしいとされるが、唐揚げが一番という人も。10〜12皿の料理が6〜8千円前後で楽しめるという。6月20日前後が一番脂がのってうまいとされ、その後は骨が硬くなるとされている。


エツの伝説

 葦の葉がエツになったという伝説が有明海湾奥部一帯に残っている。

 その昔、弘法大師が九州行脚のとき、現在の六五郎橋(河口から14.5km)あたりにあった渡しを渡ろうとしたが、渡し銭に困っているとき、葦の中に船をつないでいた貧しい漁師が、私がお送りしてあげますといい、無事対岸に渡した。大師はそのお礼に、葦の葉を1枚ちぎり川の中に投げたところ、それが魚となって泳いでいったのがエツというわけです。その後、毎年5、6月になると、この付近にエツが棲息し、これにより漁師は貧しい生活から救われたという。

[関連ダム]  筑後大堰
(2004年7月作成)
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