X.おわりに
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小田ダムを含む迫川上流域には、4カ所のダムと下流部の伊豆沼・内沼、そしてその間に広がる水田地帯に渡り鳥が飛来するという国内でも珍しい地域といえる。渡り鳥などの鳥類は、生態系の上位に位置しており、その種類と生息数の多少が、その地域における生物多様性の目安になる。
このため、渡り鳥の生息数の視点からの生物多様性の確保と生息における危険分散の意味から、ダムによって創出された新たな水辺空間、人による生産活動の場でありまた餌場となる水田、主たるねぐらとなる湖沼など、地域一帯となったエコロジカルネットワークを本地域において維持・形成していく意義は大きい。この場合、ダム湖の果たす役割と位置づけに留意し、ダム湖における生息環境を保全する必要性も高いものと考える。
さらに、ラムサール条約登録湿地である伊豆沼・内沼の自然環境を保全していくことと、生態系を維持しながらそこから得られる恵みを持続的に利用するという本条約の指針であるワイズユース(賢明な利用)を実行に移していくためには、地域住民の理解と行動が必要である。 今後、全国でも有数の渡り鳥の飛来地である迫川上流域において、渡り鳥を地域資源の視点から捉えたエコツーリズムへの活用方法や、冬期湛水田の普及など、保全と人との共生という視点から、本地域が発展していくこを大いに期待したい。
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