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W.エコロジカルネットワークの形成と向上の可能性

 迫川上流域は、ガンカモ類やハクチョウ類にとってねぐらや中継地、休息地となるようなダム湖や沼、餌場となる水田などを有しており、その間を行き来できる良好な環境のつながりが備わっている地域といえる。小田ダムでは、湛水開始とともに約1,000羽以上のカモ類が確認されており、新たな水辺空間としての役割と分散化としての機能も発揮している。

 さらに隣接する花山ダムではオオヒシクイがねぐらとして利用していることから、類似環境である小田ダムにも飛来することが予測される。今後、本地域におけるエコロジカルネットワークの形成と質の向上のため、以下のような環境条件を整備することにより、その可能性が高まるものと考えられる。


 
1.水環境の保全
 水辺空間を必要とするガンカモ類やハクチョウ類の生息環境を維持するため、上流域のダム湖や伊豆沼・内沼の水質などの水環境を保全する。

2.餌場・生息場所の保全
@餌場となっているダム湖の州、浅瀬などの環境や植生などを保全する。

A電線を地中に埋設することにより、渡り鳥が水田に離着陸する際の影響を緩和する。

B餌となる水田の落ち穂を確保するため、秋の耕起を控える。

C農薬使用を低減した環境保全型農業を進める。
3.ねぐらの分散化
 ハクチョウ類や本地域において特に集中の著しいガン類などは、伊豆沼・内沼を主にねぐらとして利用していることから、本地域内におけるねぐらの分散を図る必要性は高い。このための方法は以下の通りである。

@ねぐらとなる新たな湿地の創出
 本地域内において、新たな沼地を創出することは現実的ではないため、以下のような方法が考えられる。それは、本地区内でも最近、普及が進んでいる冬期湛水田の面積を増やすことである。冬期湛水田とは、稲刈り後の水田に水を張り、農薬や化学肥料を用いず、土壌生物の生息数を高める環境保全型の稲作方法であり、このような営農方式を広範囲の面積で進めることにより、ガン類やハクチョウ類のねぐらとなる湿地の確保が可能である。

冬期湛水田に飛来したハクチョウ
A上流ダム湖利用の誘導
 上流のダム湖をガン類やハクチョウ類のにねぐらとして分散利用させるため、上記の冬期湛水田をダム湖と下流の伊豆沼・内沼の中間地付近に配置する。これによって、ガン類やハクチョウ類の移動距離の短縮化を図り、またねぐら選択の幅を持たせることが可能になり、近隣のダム湖を新たなねぐらとして利用することが期待できる。


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