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「緑のダム」があればダムは不要か

 最近「緑のダム」についての議論がよくあります。森林の果たす土砂流出防止、景観・リクリエーション機能は重要で、森林のの整備は大事なことです。しかし、「緑のダム」があればダムはいらないと言うことなのでしょうか。以下は、ダムの機能と「緑のダム」について検討したものです。基礎資料として、国土交通省河川局のホームページを使用しています。
■治水機能〜大雨の時は降雨は森林からそのまま流出

 ダムは、洪水の時に流入する水を大量に貯めることによって、下流の河川の水量を抑制します。この効果は、直接的で、量的にも大きいために、下流河川の破堤や洪水被害を防止するうえで大きな役割を果たします。
 一方、森林は、通常の降雨の場合は下流河川の水量抑制という意味で一定の効果があるでしょうが、大きな被害が心配されるような大雨の際には、森林域からも降雨はほとんど流出することが観測結果からも伺えます。森林の整備でダムの治水機能を代替できるわけではありません。



■利水機能〜渇水時には森林の成長はむしろ河川への流出量を減少させるとの報告も

 ダムは、渇水の時に、ダムに貯めていた水を放流して下流の都市用水や農業用水を補給します。
 一方森林は、その水源涵養機能については学説が定まっておらず、森林整備の効果を定量的に正確に評価することは困難です。森林の増加は樹木からの蒸発散量を増加させ、むしろ、渇水時には河川への流出量を減少させるとの観測結果もあります。ダムの利水機能を森林で代替できるというものではありません。

■森林の整備〜森林の拡大には限界が

 森林は、土砂流出防止、景観・リクリエーションなどの面で広範な機能を持っており、森林の整備は大事なことです。ダムの周辺や、水源地でも緑の整備を進めていく必要があります。
 日本は世界の中でも森林面積率の高い国で、これ以上森林を増加させる余地は少ないと考えられます。ダムの治水機能や利水機能は、直接的で、量的にも大きなものです。「緑のダム」が、ダムの機能を代替するものではありません。

(2003年10月作成)
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