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◇森林の整備を目指して

《森林の役割を発信》

 七ヶ宿町では、森林の大きな役割を全国民に理解していただこうと、一昨年11月に、自治体としては全国で初めて『水守人ミーティングin七ヶ宿』と銘打って、間伐材で焼いた炭を水源の森に置く事業を実施いたしました。ダムの上流の町有地7haに、およそ400人の手によって2トンの炭を置いたものです。

 なぜ間伐材を焼いた炭かといいますと、間伐は森林の育成には欠くことのできない作業の一つでありますが、なかなか実施されないのが実情であり、また実施したとしても切り放しにされることが多いので、炭に活用する意義は大変大きいものがあるからです。

 また、炭には様々な効用があります。
 木炭は、土壌を活性化し、水を浄化するなど木炭の持つ効用がいま見直されています。
 炭の断面を顕微鏡で拡大してみますと、れん根の断面のように筒状で多くの穴が通っています。そして、炭1kgの気孔の表面積は、テニスコート30面の広さになると言われています。特に杉の炭は、穴の径が大きく、またそれぞれの穴の壁も薄いので、土中に早く溶けやすく保水性と吸着性に富んでいるといわれています。


炭細胞写真(杉)
 この炭を、水源の森に返すことは次のような効果があります。

(土壌改良としての効果)
・ 炭の粉は土壌粒子より粗大であり、土壌の透水性、通気性、保水性を高 める。
・ 炭はアルカリ性であり、PHの低い土壌の酸性矯正になる。
・ 酸性雨による被害対策に効果がある。
・ 土壌中の微生物の活動を活発にする。
・ ミネラルなどの成分が含まれていて、樹木に必要な要素の補給をする。・ 土中のCO2 濃度が倍増し、根の活性化が良くなる。

(水質浄化としての効果)
・ 炭は、水質浄化材として最適である。
・ 悪臭を除く。
・ 炭の中のミネラルが溶けておいしくなる。
・ 農薬などの成分を除く効果があり、河川に微生物や魚などが増殖する。
(その他)
・ 空気の浄化

 この炭を置く事業を実施するに当たっては、国土交通省を始め、林野庁、宮城県、七ヶ宿ダム利水の7市10町、林業関係団体など各方面から後援をいただきましたほか、当日は関係者のご出席をいただき、盛大に実施することができました。報道関係者もたくさん取材にきましたので、森林の役割について発信することができたものと思っております。
 
水守人ミィーティングin七ヶ宿開会式

水守人ミィーティングin七ヶ宿 置炭中
 この事業は、間伐材で焼いた炭を森に置くという小さな行為であるかも知れませんが、森を育てて水源を涵養し、水質を保全し、国土を保全しますし、また、その森林によって二酸化炭素を吸収して、病み始めている地球を守るという極めて大きな意義を持つ催しであると確信しております。
 そして、この事業は毎年継続して実施することにしており、昨年は11月2日、500人の参加をいただき実施いたしました。

《炭焼き塾の開設》

 町では、炭焼きの体験を通じて森林の大切さを知ってもらおうと、平成15年度に炭焼き塾を開設いたしました。
 町が設備をして民間が運営するいわゆる公設民営方式を採っておりまして、すでに運営母体も立ち上がっております。「水守人の会」というもので、地元の方々で立ち上げたものですが、流域の方々にも呼び掛け森林を守る人々の輪を広げようと一所懸命取り組んでおります。

 炭焼き塾は、昨年7月末にオープン致しましたが、研修は、1日コース、1泊2日コースなどのメニューを用意いたしまして、塾生の都合に合わせた研修を行うことにし、全国に参加者の募集を掛けることにしております。
 ここで生産された炭の一部は、ストックしておき、毎年行う“置き炭”に利用することにしております。
 
炭焼塾

炭焼体験中
《実効ある森林整備のために》

 先に述べた通り、森林を守り育ててきた山村では、人口が減少し高齢化も進行している上、木材価格の低迷等によって森林の管理が行き届かないのが実情で、これをどのように打開するかが大きな国家的課題であります。

 実効ある森林整備を推進するため2つの提案をしたいと考えております。


 その一つは、山村を守る施策として、現下の交付税制度における基準財政需要額に、森林面積1ヘクタール当たり少なくも1万円を算入する措置を講ずべきことであります。
 森林は、古来その地域に住む人々によって育まれ守られてきたように、山を守るには、その山を守る人、つまり山村を守ることが絶対に必要なことです。
 今政府は、都市重視の政策を進めておりますが、都市と山村が対立する形で存在するわけではなく、一体化してこそ国家の繁栄が期待できるものと考えます。

 二つ目ですが、森林整備を強力に推進するため、国庫で10割の負担をする事とし、間伐材の搬出費も事業費に組み入れることです。
 木材価格が低迷していることから、山に対する林家の熱意が失われ、せっかく植えた森林の適切な管理に目が向かないのが現実の姿です。
 林業白書によれば、日本の代表的樹種であるスギの立木価格は、昭和55年をピークに低下が続いています。(財)日本不動産研究所の「山林素地及び山元立木価格調」によりますと、平成14年の利用材積1立方当たりのスギ価格は、5,332円であります。これは名目価格で昭和55年の24%に当たり、昭和31年の水準にあるといわれています。
 このような状況は、森林所有者の森林整備に対する意欲を減退させる大きな要因となっているのです。
 今も森林整備に対する助成制度は確立しています。森林・林業基本法の施行を受けて、平成14年度から新たな事業体系になっていますが、補助率は10分の3或いは10分の5となっており、県と町の補助金をかさ上げし査定係数を考慮しても、林家の負担が1〜3割を伴うことになり、整備に消極的な林家が多く、このままでは折角の制度が活かされないのです。
 そこで、森林整備に対しては国庫で全額を負担し、その実効性を担保することが必要なのです。


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