各委員の選評 |
第5回D-shotコンテストの選考を、平成20年2月25日に日本ダム協会にて行いました。
その結果、今回は下記の作品が選ばれました。 各作品の選評は、西山芳一審査委員長によるものです。 |
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最優秀賞 |
「STILLNESS」 岐阜県・丸山ダム |
撮影者:声姫 |
<選評> 「夜景」と「放流」といった、写真撮影では難しい「技」と「時」とを見事にコラボさせた作品です。このダムには幾度となく通っておられるのでしょう、綿密な計画と緻密な計算とが、切り取られた画のなかに十分に見て取れます。完璧です。審査員、満場一致の最優秀賞でした。 |
優秀賞 |
「水面の千苅ダム」 兵庫県・千苅ダム |
撮影者:KENBO |
<選評> あまりに見事に水面に映り過ぎて、岩の存在に気付かなければ上下逆に見られてしまい落選するところでした。・・・ということは、岩をもう少し画角に入れてうまく構成すれば完璧でしたね。上ばかり見てしまいがちなダムですが、目の付けどころは抜群です。 |
入選 |
「朝霧」 兵庫県・青野ダム |
撮影者:銀崎宜広 |
<選評> 釣り人にとっては当たり前の風景でしょうが、早朝のダム湖はシャッターチャンスの宝庫です。堤体に当たる陽は遅くても、湖には早くから斜めの光が入ります。同時に発生する霧もご馳走です。早起きは三文というか3シーン以上の徳になりますよ。 |
優秀賞 |
「僕のトンネル探検」 長野県・美和ダム |
撮影者:夜雀 |
<選評> トンネルの闇と森の緑、この面積比率がこの子の心理表現をしています。黒味を多く取り入れた画面構成と人物の配置やシルエットが、通常のトンネルにあるような出口への期待感を打ち砕くかのような非日常的な不安感や恐怖感を掻き立てます。素晴らしい心理描写です。 |
優秀賞 |
「放流 〜コンジットバーチカルローラーゲート〜」 愛知県・矢作ダム |
撮影者:ToNo |
<選評> 素晴らしい切り取り方です。しぶきがかかり、豪音が聞こえてきそうな臨場感も十分表現できています。画面の左上に扉が写っていることにより人間のサイズと比較できるので、その巨大さを再確認させられます。 |
入選 |
「胆沢ダムよ 完成はまだか?」 岩手県・石淵ダム |
撮影者:だい |
<選評> 下流のダムの完成により水没してしまうため撤去される運命の取水塔が口を開けて叫んでいるように見えて面白いのですが、タイトルの意味がいま一つ分からないのは私だけでしょうか。タイトル次第で写真の価値ももっと変わってきますよ。 |
「小河内ダム夜景」 東京都・小河内ダム |
応募者:ともちか |
<選評> 50年以上も前に父上のお撮りになった作品を「工事中のダム」部門にお送りいただきました。飯場にも煌々と明かりが灯り、工事の躍動感がそのまま高度成長期の始まりという時代の躍動感にも見えてきます。応募規定には「本人撮影のもの」とあるので特別賞とさせていただきました。 |
審査委員プロフィール |
西山芳一 (土木写真家) 去年よりずっと見ごたえのある写真ばかりを選ぶので、正直言って疲れました。委員の宮島さん並びにダム系の各サイトのご活躍や写真集出版の影響もあるでしょう。ダム写真がたった1年でこれほど進化するとは、ただただ驚きの審査でした。 傾向としては、おそらく撮影者よりも年上のダムを狙った作品が多く見受けられたことです。受賞も約半数が高度成長期以前に竣工したダムでした。ろくな重機もなく手を掛けた、そして数十年以上の時の掛かった、ただ巨大さだけでない存在感に気付かれたのでしょう。どれも古さだけでなく、畏敬の念をもって見ていることに関心いたしました。ただ少数ですが、明らかなルール違反や危険行為での撮影が見受けられました。電力系以外の古く小規模なダムは管理も甘く、立ち入りの自由な箇所も多いのです。ルール違反や危険行為での撮影は、本人だけでなく次の撮影者にとっての大迷惑になることを肝に銘じて撮影をお願いいたします。 部門的には「工事中のダム」の応募が少なかったことが残念でした。確かに許可を得て現場の見学をするのは人数的にも時間的にも大ごとになってしまいます。ただ、最近のダム現場は一般の方に見てもらうことにも努力しているので、道路沿いに見学スペースを設けている場合が多いはず。そこからでも光とタイミングを図れば立派な作品になりますよ。 来年も今年以上の素晴らしい多くの写真に出会えることを期待しています。 |
佐々木 葉 (早稲田大学理工学部社会環境工学科教授) 改めて、ダムの造形の魅力を感じさせる写真をたくさん拝見できて、楽しく審査をいたしました。 印象的であったのは、ダムのある部分の造形の面白さ、長年の風雨と流水によってじっくりと成熟した表面の味わい、水の表情の千変万化、光の魔術、といったものでしょうか。ダムは、被写体としてまことに魅力的な素材であること がわかります。 一方、ダムに親しむ、という部門では皆さん苦労している様子が伺えました。点景として人物を活かすのはダムの巨大さゆえに難しく、ありきたりの見学会の様子では新鮮味がありません。写真にとらえづらいことがすなわち実際にも 親しみにくいことを意味するものではありませんが、ダムと親しむということは、他のインフラストラクチュアーと親しむ、というのとは別の概念でとらえ ることが必要なのかもしれません。この写真コンテストをきっかけに、ダムとは何かをさまざまな視点から皆で考えていけるとよいと思いました。 |
安河内 孝 (清水建設鞄y木技術本部ダム技術部担当部長) 応募数299点を審査させて頂き、特に感じたことは前回よりも撮影技術のレベ ルアップが感じられたことです。見た瞬間、心の高まりを感じる写真が多く、撮 影者はそのダムに何かを感じ、引き寄せられるように撮影されたのではと思いま す。 また、夜間や厳冬での撮影及びそのダムにとって最も美しい時期での作品が見ら れ、撮影者のダムへの愛着と美しく見せようとする努力を強く感じることが出来 ました。ダムも人と同じように個性があり、その個性の良いところをアップで強 調した作品も見られました。来年の作品が楽しみです。 構成など素晴らしい写真が有りましたが、ピンボケにより落選した作品が有り ました。コンテストなので、手ブレなどによるピンボケなどは注意が必要です。 前回に引き続き、施工中の写真が少なかったのが残念です。是非、次回は直接ダ ム建設に携わっている若い方々にも数多く投稿して頂きたいです。 |
宮島 咲 (インターネットサイト「ダムマニア」運営者) 今回の作品は前回のコンテストとは異なり、ダムの一部を切り取った写真が多く見受けられた。また、水平に拘らず、斜めアングルの写真も多かった。考えてみると、前回のフォトコンテストではこの様な写真が多く入選している。応募者の方々は、前回の作品を参考にしているのだろう。過去の作品から学んだテクニックと、各々のセンスが加わり、より良い作品が多く寄せられたコンテストだったと思う。 また、作品にかけた情熱を感じる写真も多数有った。最高の瞬間が来るまで、その場を離れずじっと待って撮影したのだろう。その根性、情熱がひしひしと伝わってきた。 逆に、あともう一歩という残念な写真もあった。構図やセンスなどは完璧なのだが、露出オーバーで色が飛んでしまっている作品もあった。あと少しだけカメラを操作すれば完璧な作品になっていたと思うと残念で仕方がない。 今年入賞した作品を参考に、ぜひ次回のコンテストにも応募してもらいたいと思う。 |
森 日出夫 (飛島建設鞄y木本部ダムグループ 課長) 今回審査させていただきまして特に感じたことは、従来にも増して独創的な構図が多く、ダムの別な顔が見えてきたということです。 もともと行政的ニーズ、地形・地質等の自然条件により個別に設計施工されるダムは、それ自体で個性を持っていると言えるのですがそこに撮影者の思いが加わると、さらに輝きが増すということをあらためて知らされたしだいです。今後も、施工に携わる者として様々な「ダムの顔」を見られることを楽しみにしております。 |