各委員の選評 |
第7回D-shotコンテストは、314点の作品応募がありました。これらの作品を対象に最優秀賞、優秀賞、入選作品の選考を、平成22年2月22日に日本ダム協会にて行いました。 その結果、今回は下記の作品が選ばれました。 各作品毎の選評は、西山芳一審査委員長によるものです。 |
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最優秀賞 |
「雪の南魚沼」 新潟県・三国川ダム |
撮影者:夜鷹 |
<選評> 雲ひとつない素晴らしい晴れ間に出会えましたね。 このような雪国の朝は、週間天気予報を見て狙ってもなかなか難しいものです。 これぞ、一期一会でしょうか。 太陽を入れ込んだこと、手前の雪のきらめき、堤体の質感表現、すべてが絶妙。 一瞬のライティングを見事に捕らえた作品です。 |
優秀賞 |
「森の中のダム」 兵庫県・猪ノ鼻ダム |
撮影者:KAZUYOSHI |
<選評> 人里離れた土木遺産的ダムの直下は、暗くて湿度も高く、妙な不安感を煽ります。 そのような現地に行かねば感じ取ることのできない雰囲気、空気感を見事に表現しています。 |
入選 |
「オーロラ」 山梨県・柿元ダム |
撮影者:あつだむ宣言! |
<選評> 堤体を面白く切り取ったものが目立ちましたが、その中では目を引いた作品です。 表題は形からでしょうか?かなり迷われたようですが、もう少し考えたほうが良かったかも。 |
優秀賞 |
「雲紋」 秋田県・協和ダム |
撮影者:ふかちゃん |
<選評> 表現意図かどうかは分かりませんが、ダム湖特有の静寂の中に「怒り」に似たような感情が見て取れます。 大胆に空の部分をトリミングして、もっと強調しても面白いかも。 |
優秀賞 |
「うねうね」 山形県・長井ダム |
撮影者:萃香 |
<選評> ダム堤体のシャドウと道路面のハイライト、同じく直線と曲線、光と形のコントラストが前後景で小気味よく、強い写真に仕上がっています。 朝霧も堤頂部が後ろの山に融け込まないための功を奏したようです。 |
(該当作品無し) |
優秀賞 |
「交差点」 富山県・刀利ダム |
撮影者:あつだむ宣言! |
<選評> 三種類の異なった質感のコンクリートの中に構成されたキャットウォークや階段の色と線とが印象的。 もう少しアングルを右に振るか、右上だけをトリミングすれば完璧。 |
審査委員プロフィール |
西山芳一 (土木写真家) 応募作品全体を通じ、確実に腕が上がってきているように思います。 同じような印象になりがちなダムの写真を繰り返し撮影して徐々に学習されたのでしょう、特に光の見方、選び方(ライティング)と被写体の切り取り方(アングル、トリミング)が違ってきたようです。 ダムの前で漫然とシャッターを切るのではなく、あきらかに一考、二考してから撮影をした作品が増えてきたことはうれしい限りです。 特に感じたのは、コンクリートや石の塊である「形としてのダム」の存在をただ現すだけでなく、さまざまな水の形態の助けを借りて「自然の中の一役者としてのダム」を表現した作品が多かったことです。 水自体の「動」や「静」の表情はもちろんのこと、形態を変えた雪、雲、霞、そして湿度までも動員し、まるで「水組オールスターキャスト出演」の感がありました。 ダムと水とは切っても切れない関係ですから当たり前のことなのでしょうが、撮影と発表とを通じて多くの方々にそのことを再確認していただけたことにも感謝いたします。 |
窪田陽一 (埼玉大学大学院理工学研究科教授) 今回初めて審査委員に加えて頂き、多数の作品を拝見させていただいた。 撮影された方の眼差しに潜む思いが画像を通して伝わってくる作品は、表題を見るまでもなく直ちに受賞候補として一票を投じることができた。 しかし、表題を見ても写真を見ても作画の意図が明瞭には伝わって来ない作品も少なくはなく、写真と表題の間にしっくりしない隔たりを感じる作品も見られた。 東洋、とりわけ日本の人々は、言霊と言う言い方があるように、言葉による表現に思いを込めようとする方が多いように感じる。 私見だが、写真は被写体に直面した時の、一期一会ともいえる瞬間の視覚的形象をとらえようとする造形表現であり、言葉で補足説明する必要は必ずしも無い。 ダムをダムそのものとして撮ることも、ダムが見せる意外な表情を撮ることも、被写体に向けられた視線を通して脳裏に刻まれる形象を画像として定着することに他ならない。 眼前の撮影現場で視覚を通じて体感された状況そのものを素直に感じさせてくれる作品に、次回も出会えることを期待している。 |
安河内 孝 (ダム工事総括管理技術者) 今回は、昨年よりも応募数が多い314点を審査させて頂きました。 改めて、ダムの造形の魅力を強く感じさせる写真をたくさん拝見することが出来、審査員という立場を忘れて、今回もまた力作の数々に楽しませて頂きました。 撮影者のダムへの愛着と美しく見せようとする努力を強く感じることが出来ました。 今回も、入選しなかった作品の中には、あと一歩と言った作品が多数あります。 撮影場所を変え、アップで撮ったり、また一部分を大胆に切り取ったりと勉強してください。 また、ダムは春夏秋冬によって異なった顔を見せます。 大変と思いますが、同じダムを一年間追いかけて撮影するのも面白いと思います。 残念ながら、今年も工事中のダム部門の応募が少ないです。 この部門は、実際に工事に携わっている方にチャンスがあると思います。 来年は工事中の迫力ある作品を期待しています。 。 |
宮島 咲 (ウェブサイト「ダムマニア」管理人) 今回は、堤体全てを収める写真は非常に少なく、一部を大胆にトリミングした写真が多数見受けられた。 前回のコンテストでは、この様な写真が多数入賞していたので、これが影響したのだろうか。 応募して下さった方々が前回の入賞作品を研究し、よく勉強していることを感じた。 唯一、ダム堤体全部が写っている写真が最優秀賞の「雪の南魚沼」である。 雪がなければ平凡なアングルだが、寒い寒い真冬の朝、雪をかき分け、苦労して撮った写真なのだろう。 その熱意が伝わってくる。大胆に切り取った写真も良いが、ダムの巨大さを伝えるにはこの様な写真がベストなのではないだろうか。 また、部門の枠を超えた応募写真がいくつか見受けられた。 他の部門に応募すれば入賞できそうな作品があったので、残念で仕方がない。 応募する作品が他人にどのように受け止められるのかよく考え、最適な部門に応募して頂きたいと思う。 |
鈴木 晶 本名・塚本(大成建設土木設計部) 「ダムの写真を撮る」ということは小旅行に出かけることでもあります。 天気予報を気にしたり、現地までのアクセスを調べたり、放水日時を確認しながら旅支度をすることでしょう。 写真コンテストにおいて大事なのは、カメラのレンズを通して、ただ風景を切り取るだけにとどまらず、ダムをテーマに「絵」を作り上げることだと思います。 作り上げるためのスパイスとして霧や雪という天候を利用したり、夕日や逆光等の光を捉えたり、ダム周辺の環境との対比や調和に注目したり……。 そこには現地に足を運んだ人だけが発見できるさまざまな演出要素が潜んでいます。 私は撮影者自身がアートディレクターとなり、写真という媒体で豊かな感性をしっかりと表現できていた作品に目が留まりました。 今回の審査を通して300点以上ものダム写真が一度に拝見でき大変嬉しく思います。 これからもダムの写真撮影という非日常を楽しんでください! |
森 日出夫 (ダムネット運営委員会委員長) 7回目ともなると、すばらしい写真ではあるが、過去に同様な構図のものがあると、やはり選考には不利なことも出てきます。 連続もののコンテストであるという条件を勘案して、応募して頂ければと思う次第です。 その中で今回の入選作品は、それぞれ物語性があり個性的な作品が揃いました。 写真を見れば、撮影者の思いが伝わってきます。もちろん技術的にもすばらしいのは言うまでもありませんが。 ダムという被写体の性格上、「静」を表現するものがどうしても多くなります。 ダム技術者としましては、やはり「動」の部分も見てみたいと思います。 建設中、あるいは稼働中ダムのダイナミックさを捉えた作品の応募を、ぜひとも期待しています。 |