各委員の選評 |
第8回D-shotコンテストは、449点の作品応募がありました。応募内容に不備のあった3点を除いた446点の作品を対象に最優秀賞、優秀賞、入選作品の選考を、平成23年2月21日に日本ダム協会にて行いました。 その結果、今回は下記の作品が選ばれました。 各作品毎の選評は、西山芳一審査委員長によるものです。 |
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最優秀賞 |
「宮中の朝」 新潟県・宮中ダム |
撮影者:夜鷹 |
<選評> おそらく夜明け前から三脚をセットし、真摯な態度で被写体に向かったと思われる真面目さの顕れた素晴らしい作品です。 作者の思いの込められた水と光の織り成す静かなドラマが、たった一枚の写真で十二分に表現されています。 ダムだけに限らず、このように被写体への思い入れが感じられる写真こそが素晴らしい写真といえるでしょう。 |
優秀賞 |
「ロールシャッハ」 広島県・二級ダム |
撮影者:あつだむ宣言! |
<選評> 私のような歳のプロ受けする作品かもしれません。モノクロだからというだけでなく、師と拝むアンセル・アダムスの写真の一部分を切り取ったかの様な印象を与えたからです。 デジタルモノクロならではでしょうが、白から黒への諧調、コンクリートの素材感が素晴らしい。 アダムス師には到底及んではいませんが、今後、参考にしてみてください。 |
入選 |
「シンメトリー」 静岡県・秋葉ダム |
撮影者:星野雄飛 |
<選評> 狙いは良かったのですが、タイトルといい、見せ方といい、当たり前すぎるのでもったいないですね。 例えばゲートの照明の色温度の違いはもっとアンダー(暗く)に撮れば面白いし、逆さに見せれば映りが宇宙人のようにも見えてきます。 もっと発想の転換(古くはコペ転)があったら素晴らしいのに・・・。 |
優秀賞 |
「しぶき浴びて」 愛知県・黒田ダム |
撮影者:ひろ@ |
<選評> はしゃいだ子供の動きの捉え方が完璧です。ぎりぎりのタイミングでしたが、画面に入ってしまった太陽もフレアもしぶきの表現としては効果的です。 長い影もいいですね。 ついつい子供の動きにファインダーが向いてしまいがちですが、しっかりとダムの全景を捕らえているのは立派です。 |
入選 |
「影」 宮崎県・一ッ瀬ダム |
撮影者:あつだむ宣言! |
<選評> アーチダムの両岸は堅固な岩でなければならず、改良を加えていることが多い。 特に初期のものは岩の表面にコンクリートを盛ったり、執拗にアンカーを打ったり、自然景観はズタズタといえます。 でも、それが造形美を生み出すこともあります。 このダムは柴田敏雄氏も狙った場所ですが、他のアーチダムの下流部にも面白いところがいっぱいありますよ。 |
審査委員プロフィール |
西山芳一 (土木写真家) 先ず、残念だったのが文化財的な歴史を持ったダムの応募が以前よりも多かったのに、その作品のどれもが撮影技量の未熟さから落選してしまったこと。 そして、今回、目立ったのが夜景、冬景色そして水面反射の写真でしょうか。 しかし、プロ写真家にしてみればそのどれもが、本質を十分に撮り尽くした後、同じ被写体を非日常的な異空間に置いて表現する際のお約束的手法なのです。 闇も雪も波も、そのものの本質を覆ってしまうことで綺麗に見え、言わば化粧のようなもの。 化粧したモデルばかり撮っているとそのうち厭きますよ。 できれば「萌え」的な奇をてらわず、もっと本質からダムに対峙してみてはいかがでしょうか。 応募総数が増え、その分確実に写真の質が上がったことは事実ですが、ついつい撮影手法ばかりが先行してしまい、素直に被写体と向き合った本来の「良い写真」の数が以前と変わっていないことがとても気になりました。 |
窪田陽一 (埼玉大学大学院理工学研究科教授) 今回の審査は、写真と表題の関係、そして写真としての水準とは何か、を改めて考えさせられるものとなった。 高級なカメラを手にすれば良い写真が撮れる、とは限らないことは誰しもご承知のことと思う。 デジタルカメラの時代となった今でも画質や構図はもちろん重要な評価ポイントである。 が、大切なことは、シャッターを押したその瞬間に撮影者が何を見たか、ということだろう。 それは構図にも、そして表題にも現れる。 得てして表題に文学的な感覚が込められがちだが、写真は写真そのものにより、見る者に対して、撮影者が見た瞬間のダムの相貌を伝える、ということがまず先にあるはずではないか。 写真の水準とは、まさにその瞬間に撮影者が見たと信じるダムの姿が、確かに画像としてとらえられているか、にかかっている。 写真という表現手法を通じて、ダムという問答無用の巨体とどう向き合うか、その眼が磨かれつつあることを実感させる作品が入賞している。 |
安河内 孝 (ダム工事総括管理技術者) 今回の作品は、素晴らしいものが多く、写真よっては圧倒されるものがあり、感激しました。特に今回は、夜景と冬季の撮影が増えたように感じられます。小生もダムの撮影に行きますが、夜景は明るいうちに撮影場所を抑えることや照明の配置や配色などを調べる必要があり、昼間の撮影と違っていろいろと大変ですね。また、冬季の撮影は、雪道の走行や服装などの装備が大変です。くれぐれも安全には気を付けて下さい。 ダムは、土木構造物の中でも大きいものです。その大きさを表現することは難しいと思いますが、是非挑戦して下さい。 今回、「工事中のダム部門」が大幅に増えたことは嬉しい事です。ただし、完成間際の作品が多かったです。是非、ダイナミックな建設中の写真や夜間作業などの作品が増えることを期待しています。 |
宮島 咲 (ウェブサイト「ダムマニア」管理人) 今年は応募総数もさることながら、質の良い写真が多かった。「ダムはこう撮れ」という従来からあるアングルや撮影時間にこだわらず、ダムをもっと自由に、美しく見せる写真が多数あった。昨年とは全く異なる雰囲気の作品が多かったため、この1年でダム写真界に何が起こったのかと思わせるほどの進化があった。 特に今回目立ったのが、夜景の写真である。ダムと並ぶ巨大建造物系では、工場やジャンクションなどがあるが、これらの写真は夜に撮影したものも多い。そう考えると、なぜ今までダムの夜景写真が少なかったのかと不思議に思えてくる。多くのダムはライトアップしていないので、夜景の対象とはならないと考えているからだろうが、今回の素晴らしい作品を見ると、それも違うと感じてくる。 応募者の腕の高さとセンスを感じるコンテストだった。 |
森 日出夫 (ダムネット運営委員会委員長) 応募数も過去最大となり、どういう形であれダムに興味を持って頂ける方が増えるのは大変うれしい限りです。ありがとうございます。 今回の応募作品全体に言えるのは、今まで以上に撮影テクニックが向上し、バラエティに富んだ芸術性が高い作品が多くみられたことだと思います。見ごたえがあり、審査にも非常に苦労しました。また、シャッターを押している情景を思い浮かべると、こんな時間に、しかもこのような天候下でというものも多くあり、撮影者の気概が作品に映り込んでいるようで、感動させられました。個人的には、原点回帰ではないですが、ダムの力強さ、大きさ、武骨さがドカンと目に訴えるようなものも見てみたいなと思います。次回も楽しみに待ってます。さらなる多数の応募をよろしくお願いします。 |