各委員の選評 |
第10回D-shotコンテストは、236点の作品応募がありました。これらの作品を対象に最優秀賞、優秀賞、入選作品の選考を、平成25年2月21日に日本ダム協会にて行いました。 その結果、今回は下記の作品が選ばれました。 なお、今回は残念ながら「最優秀賞」該当作品はございませんでした。 作品毎の選評は、西山芳一審査委員長および窪田陽一委員によるものです。 |
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優秀賞 |
「NO.5」 埼玉県・玉淀ダム |
撮影者:大倉 裕史 |
<選評・西山 芳一> 水の表情で「静」の中の「動」をうまく表現しています。 動き的にさみしい右画面には放水のようなシャープな流れをさりげなく入れているのも画面に緊張感を持たせています。 あと10分待って撮れば、バックの木々も暗くなり、「暗」の中の「明」をも表現でき、多くの意味でのコントラストと緊張感のあるGoodな作品になったでしょう。 |
入選 |
「涼」 愛知県・馬ヶ城ダム |
撮影者:声姫 |
<選評・西山 芳一> 鬱蒼とした森から見たレースのカーテン。まさしく「涼」ですね。見ているだけでマイナスイオンを十分に摂取できそうな落ち着く作品です。 以前見たことのあるような作品は安心感がありますが、評価的には10年もやっていると若干マイナスかな。 せっかく綺麗な流れのタイミングだったので、思い切って堤頂部をトリミングしたほうがよかったですね。 |
優秀賞 |
「黒部と月と人々」 富山県・黒部ダム |
撮影者:かみさと |
<選評・窪田 陽一> ダム本体やダム湖が視野に入らない、ダムを見ている人々を背後から見る、という視点の位置からの眺めを、 煌々と夜空に輝く月を真正面に据えてとらえた、ある意味では意表を突いた作品です。 その場所で人々はどのような夜景を眺めているのか、という想像を掻き立てる。被写体はこういうところにもある、という好例です。 |
優秀賞 |
「休日の天端」 広島県・温井ダム |
撮影者:やまとり |
<選評・窪田 陽一> コンクリートの圧倒的な量感に囲まれながら、軽装の家族連れが思い思いに歩む姿を素直にとらえています。 車椅子の人、親子、そしてペットの子犬たち。この天端の道が駅前の商店街であったとしても往来する人々として違和感のない登場人物ばかりです。 それほどにダムが休日の日常として親しまれていることを、この作品は示しています。 |
審査委員プロフィール |
西山芳一 (土木写真家) 昨年より若干応募作品が減ったようですが、上と下が削られ中庸で無難な作品でまとまってしまった感がありますね。 よって残念ですが「最優秀賞」に該当する作品は見当たりませんでした。 部門別で唯一「工事中のダム」の応募が増えたのは嬉しいけれど、今年度を過ぎると「工事中のダム」自体が激減するのが気になります。 しかし、今回の入賞作品のような改修工事は増えますし、2〜3年すればまたダム工事もあちこちで復活するようです。 10年間を通して見ますと、やはり撮りやすく行きやすいダムは決まってくるのか、毎回登場の同じダムで同じようなアングルが結構見受けられます。 ご参考のために一度集計を取りましょう。 作品として上がってきていない土木遺産の美しいダムもまだまだ在りますし、被写体としてのダムは十二分に存在するはず。 そして、たとえ同じダムでもアングルや時間を工夫すれば新しい発見があり、新しい写真が出来るはず。ご健闘を願っています。 |
窪田陽一 (埼玉大学大学院理工学研究科教授) 前回より応募作品数が少なかった今回ですが、これはと目を引く作品も少なかったように思います。 良く言えば素直な視線でダムのある風景を眺め、気負わずにシャッターを切った作品が多かったということかもしれません。 風景との出会いは一期一会であり、期待して行った眺めとは異なる相貌に出会うことも少なくはありません。 それはそれで撮影者にとっては一つの試練でもあり、気構えと眼差しが問われることになります。 同じ場所を訪れても、同じ写真が撮れるとは限りません。写真を撮る醍醐味はそこにあります。 新たな発見を感じさせる作品を今後も期待します。 |
宮島 咲 (ダムマニア&ダムライター) 記念すべき10回目のフォトコンテスト。かれこれ10年も続けると、過去に応募された作品に似たものが多くなってしまうのはいたしかたないことだろう。 それが顕著に表れたのが「ダム本体」部門だった。ダム本体の撮影は撮影ポイントが限られてしまい、相当工夫をしない限りは同じようなアングルになってしまう。 ダムの一部をピンポイントで狙っても、どこかで見た様な写真になってしまう。これを打破する感性と表現力、そして行動力と忍耐力を持った作品をこれからも期待したい。 行動力とは、より良いアングルを探す力。また、より良い瞬間に立ち会うための力。忍耐力とは、より映える作品になるまで時を待てる根気である。 これらを備えることによって、素晴らしい作品が生まれてゆくと私は信じている。 「ダム湖」部門や「工事中のダム」部門、「ダムに親しむ」部門や「その他」部門においては、ご投稿下さった方々の感性が生かされた作品が多かった様に思える。 過去の作品の例にとらわれず、自由に表現してくれているという印象だった。自分の表現力を信じ、今後も面白い作品を量産していって頂きたい。 |
森 日出夫 (ダムネット運営委員会委員長) 仕事がら、どうしても建設する側から見た、ダムの雄大さ、機能美、あるいは、環境への溶け込み具合等を如何にうまく捉えているかが気になってしまう。 今回の応募作品の多くは、前回にも劣らず、私の欲求を満たすものであり、ワクワクしながら選考させて頂いた。 ただ、コンテスト回数を重ねるごとにレベルが向上し、写真としての芸術性も評価され、どうしても前述したものだけでは選出されにくくなる。 今後の「傾向と対策」ではないが、これらがうまく両立された作品が、どんどん出てくることを期待したい。 加えて、ダム建設のダイナミックさが直に感じられる作品も面白いと思う。 |