各委員の全体評 |
第11回D-shotコンテストは、219点の作品応募がありました。これらの作品を対象に最優秀賞、優秀賞、入選作品の選考を、平成26年2月25日に日本ダム協会にて行いました。 その結果、今回は下記の作品が選ばれました。 |
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審査委員プロフィール |
西山 芳一 (土木写真家) 日本ダム協会ホームページ写真コンテストも今年で11回目を迎え、振り返ると作品の質の成長の早さに驚かされます。 応募の常連はより切磋琢磨し、新人は選評などを踏まえたうえで応募してくるのでしょう。 応募数はさほど増えていないのに良い作品の割合が増えてきているので審査のやり甲斐があります。 一方、あまりにアート志向に傾き、切り取ったディティールと光だけで勝負し、ダムと判別がつかずに本末転倒になってしまった作品もチラホラうかがえます。 全般に「狙いすぎ」の傾向が見られます。みなさんにも言えることですが、ここで一度、初心や原点に戻り、マクロの眼や心でダムを見直し、撮り直してみましょう。 また新しい視点が見つかるかもしれません。 次回はそんな新しい視点や観点で撮影した審査員のド肝を抜くような作品をお待ちしています。 |
窪田 陽一 (埼玉大学大学院理工学研究科教授) 東日本大震災から早くも3年の月日が経ちましたが、応募者の数が徐々に回復していると共に、作品の水準も高まりつつあるように今回は感じました。 写真造形としてかなり高いレベルにある作品も多く、ダムでなければ生まれ得ないような形の見え方を見事に捉えた、秀逸な作品も幾つかありました。 「組写真」という部門を設けても良いのではと思わせるような、同じダムの様々な様相を直向きに追求した作品群もあり、 審査員の眼力を問うような挑戦的な作品も増えているようです。 ただ、毎回どのような写真が受賞対象に選ばれているかを見届けたうえで、受賞作品と同じようなアングルやフレームで、 また季節や時刻も同じだったり変えてみたり、はたまた同じダムを違う角度で狙ったり、と手を変え品を変えて撮影した作品は、 かえって受賞への道のりは遠のくかもしれません。従来の受賞作品を超えることは、一昼一夜では為し得ないものです。 名画の模写が原作を上回る評価を得られるかという問いへの答と同様、 今までの作品には捉えられていない「何か」を新たに見出して映像にとらえていない限り、習作の域を出ることはありません。 風景との出会いは「一期一会」です。出会った風景が放つ新鮮な驚きを写真にとらえた作品を今後も期待しています。 |
宮島 咲 (ダムマニア&ダムライター) このフォトコンテストも11回という回数を重ねてゆくうち、少しずつ応募者の方々のレベルが高くなってきている事を実感します。 初期の頃は、その写真を狙って撮るという雰囲気は無く、撮って出しのイメージが強い写真が多かったように思います。 しかし、回数を重ねるうちに、それぞれの作品に、「どう撮るのか」、「何を見せたいのか」という作者の意図が見えるものが多くなってきました。 今回はなおさら多くなったように思えます。 ただ美しいだけの写真ではなく、シャッターを切るタイミングを待ち、何を見せたいかという構図を考え、 どの様なセッティングで撮るかを、考えに考え抜いた作者の心理が伝わってきました。 例えば、ダム本体部門で優秀賞に輝いた「Silk Curtain」。 クレストゲートからの水流を遅いシャッタースピードでとらえ、コンクリートの固さと水の柔らかさを表した作品だと解釈しました。 逆に、同部門に入選した「美瀑」。 これは、流れ出る水のかけらひとつひとつが持つ、水のパワーを表現した作品だと解釈しています。 いずれの写真も、クレストゲートからの放流のタイミングを待たねば撮ることはできない作品です。 次回の第12回では、さらなる想いのこもった写真を見てみたいと感じます。応募者の皆様、ぜひダムの美貌に心を注いでみてください。 |
萩原 雅紀 (ダムライター/ダム写真家) 今回初めて審査に参加させていただきました。素直な感想としては、思ったよりレベルの差が大きいな、ということ。 最優秀賞の清水さんは今回に限っていえば1人だけ完全に頭ひとつ抜けていたと思います。 逆に、せっかく応募していただいたものの、狙いが分からなかったり、水平(垂直)が取れていなかったり、画質が粗すぎたりして、一見しただけで残念ながら選外、という作品も多くありました。ぜひシャッター押す前にひと呼吸して、その場面でのベストを切り取って審査員をおおいに悩ませてください。 僕が選評を担当した「ダム本体」部門では、作品の多くが放流シーンや水流がメインで、堤体そのものの魅力に迫った作品が少なかったのは少し残念でした。 放流は別部門として分けた方がいいのではないかと考えてしまいました。 上から目線で好き勝手書きましたが、いろいろな作品を見て火がついたので、次回からはまた応募する側に戻りたいな、と思いました。 |
中川 ちひろ (出版社・ピエブックス勤務) 今回初めて参加させていただきましたが、良いなと感じたのは、誰かに見せるのではなく、素直に「かっこいいな、撮りたいな」と感じた瞬間にシャッターを切ったのだろうと想像できる写真です。 撮り手の気持ちが伝わる写真は、見ていて楽しい気持ちになりますね。ダムは巨大でゴツゴツしていて、男性的なイメージが強いですが、季節や切り取る時間帯、角度などによってやわらかな優しい顔も見せてくれるものだと気づかされました。それにしてもダムとは、なんとフォトジェニックなことでしょう! |
森 日出夫 (ダムネット運営委員会委員長) 今回の作品は、原点回帰、ダムの形そのもののダイナミックさ、美しさ、重厚さに重きを置いたものが増えたような気がします。 言うまでもないのですが、そこに、写真の芸術性が加わって、見る人を感動させるということです。 わたしはダム技術者代表でこの写真コンテストの選考委員として参加していると思っていますので、この傾向はたいへん喜ばしく思っています。 自分たち技術者が作った作品が褒められているような気になります。 今回の作品で特に印象に残ったのは、「ダムの形の捉え方にこんな角度もあるのか」と思わせてくれた最優秀賞「Space Fantasy」です。 次回もこのような驚きがある作品をお待ちしています。 |