各委員の全体評 |
第12回D-shotコンテストは、231点の作品応募がありました。これらの作品を対象に最優秀賞、優秀賞、入選作品の選考を、平成27年2月13日に日本ダム協会にて行いました。 その結果、今回は下記の作品が選ばれました。 |
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優秀賞 |
「釣り日和」 山形県・前川ダム |
撮影者:kazu_ma |
<選評・中川 ちひろ> 日本絵画のような美しさですね。人物の点と陸地の曲線、そして光が当たった広い湖の余白。どこか懐かしさを感じます。 まさに「ダムに親しむ」のテーマにふさわしく、釣りをする様子がのどかで、とても気持ちが良いです。 こういう、素直な気持ちで撮った写真は、すっと人の心に響きます。 |
入選 |
「夜桜見物」 岐阜県・大井ダム |
撮影者:荻山清和 |
<選評・中川 ちひろ> これがダムと言われなかったら、どこかの名勝地と思ってしまいそうです。 ライトアップされた木々の奥には、赤い橋と観覧車、さらにその奥には山がグラデーションになって見えます。 ああ、ここに行ってみたい。 |
入選 |
「明日の光」 長野県・豊丘ダム |
撮影者:増田 恵 |
<選評・西山 芳一> 長野の豊丘ダムだとするとこの太陽は夕日ですね。タイトル通り今日の雲を払拭し、希望に満ちた「明日の光」を願う気持ちが絵画のような作風でよく表現されています。ただちょっと作り過ぎの感が否めません。タイトルとは違ったイメージになるかもしれませんが、アングルやタイミングは良いので素直な写真も見てみたい気がします。 |
審査委員プロフィール |
西山 芳一 (土木写真家) 最近、建設系の発注者も施工者、団体も一般の方々に「土木」を「見せる」いや、「見ていただく」という姿勢にようやく変わってきたせいか、「土木系」の写真コンテストが徐々に増えてきています。その老舗であるこの「ダム写真コンテスト」も今年は12回目を迎え、さすがに他の追随を許さぬクオリティを維持しているように思えます・・・が、その一方、狭視的、技巧的に走る作品が大多数になってしまったというのも否めません。「ダム写真」を「芸術」の域にまで押し上げようという配慮で審査してきたつもりですが、もはや「ダム写真」を逸脱してしまった作品も多々見受けられるようになってきました。もちろん審査をする側の自省もあります。しかし、もっとお互いに素直になって素直な目でもう一度「ダム」を見て、撮ろうではありませんか。 |
窪田 陽一 (埼玉大学大学院理工学研究科教授) 毎回応募される常連の方々の作品は、どれも水準が高く、お一方で複数の作品が受賞するという結果も、一人あたりの受賞作品数を制限していませんので、よく起こります。ですが、選考する側としては「これは、と思わせる傑作を応募する新顔の方はおられないのか」と思うことも確かにあります。もちろん、自他共に認める個性的な作品か否かは別として、思いを込めた力作を応募してこられる方々も決して少なくはありません。ただ、明らかに過去に受賞した作品を参考にしたと思われる作品では、前回以前の受賞作を越える独創的な作品でもない限り、審査員の票を得ることは難しいでしょう。カメラを構える撮影者が立つ位置、今までにないアングルで向ける視線、季節や天候、刻一刻と変わる太陽光の方向、それによる陰影の形、表面の質感の違い等、同じダムを撮影しても、全く異なる表情を捉えることは可能です。風景が生まれ出る瞬間に気付き、シャッターを押すのは他でもない撮影者自身なのですから。 |
宮島 咲 (ダムマニア&ダムライター) 残念だったことは、「ダム湖部門」に応募された作品の中に、どう見ても「ダム本体部門」 の方がふさわしいと感じたものが数点あったことです。同様に、「その他部門」に応募された作品の中にも「ダム本体部門」の方がふさわしいと感じたものが数点ありました。この原因として考えられることは、「その他部門」という曖昧な部門があることだと感じました。 また、作者の方々の意識も絶妙で、より競争率の低い部門での応募の方が入賞しやすいという意識を持たれたかたもいらっしゃったことでしょう。審査をしている最中、この作品が 他の部門だったら、間違いなく票を入れたいと感じたものが数点ありました。せっかくの良 い作品なのに、非常に残念で仕方ありません。 逆に、喜ばしく思えたことは、クオリティーが高い作品がとても多かったため、今まで以上に選考に悩まされたことです。自分の持ち票をこれだと思った作品に貼るのですが、今回のコンテストほど、その持ち票の少なさに落胆したことはありません(誤解の無いよう申し上げますが、各審査委員の持ち票は公平に分配されています)。特に、「ダム本体部門」のクオリティーアップは目覚ましく、ダム全景を写した作品から、ダムの一部を切り取った作品まで、どれも票を入れたくなるものばかりでした。 「その他部門」の扱いなど、次回のフォトコンテストはどの様なものになるのかわかりませんが、次回も、さらなる審査委員の頭を悩ます作品のご投稿をお待ちしております。 |
萩原 雅紀 (ダムライター/ダム写真家) 今回で2回目の審査に参加させてもらいましたが、正直に言うと、多くの写真の中で際立って目を引く、一瞬で目を捉えて離さない、こんな光景見たことない、これどうやって撮ったの、こんな景色に立ち会えて羨ましい、などと心揺さぶられる作品は多くありませんでした。ダムの写真をネットなどで見る機会も増え、このコンテストも12回目を数えて、審査員も(きっと皆さんも)そうそう普通の光景では驚かなくなってきたのだと思います。でも日本にはダムがおよそ3000基あって、作品対象になっていないダムや撮影されたことのないポジションはまだまだあるはず。季節、時間、天気などを含めれば「まだ見ぬダムの勇姿」はきっとあるでしょう。ぜひ足繁くダムに通って、「いま目の前のこの景色を人に見せたい!」と思うようなシーンにめぐりあってください(自戒を込めて!)。 |
中川 ちひろ (出版社・ピエブックス勤務) 昨年よりクオリティが高い写真が増えていて、驚きました。よく考えて撮影されているなと感じる作品作品が多かったのですが、 「よく考える」ことは良い面でもある一方、こちらの期待を越えない範囲にとどまってしまっているようにも思いました。 「衝動的にシャッターを切ってしまった!」という写真は、必ず人の心を動かします。 熱い一枚を、次回楽しみにしています。 |
森 日出夫 (ダムネット運営委員会委員長) 前回は、ダムの形そのもののダイナミックさ、美しさ、重厚さに重きを置いた応募作品が多かったのですが、今回は一目でダムだとはわからない、どちらかというと芸術性に富んだものが主流となっています。12年間コンテストに携わっていますが、面白いことに、1年置きにこの傾向が見えるような気がします。これは偶然なのか、それとも入選を意識して、応募される方が先回りしているのか謎ですが。いずれにせよ、応募される方々のおかげで、全体のレベルはますます上がり、このコンテストの知名度も上がることは大変喜ばしいことです。腕に自信のある方は、どしどし参加して頂ければと思います。 |