各委員の全体評 |
第15回D-shotコンテストは、356点の作品応募がありました。平成30年2月20日、日本ダム協会にてこれらの作品の中から応募規定を満たしたものを対象に、入賞作品の選考を行いました。 その結果、今回は下記の作品が選ばれました。 なお、今回は残念ながら「最優秀賞」該当作品はございませんでした。 |
写真展開催 |
入賞作品18点を、宮ヶ瀬ダム「水とエネルギー館」にて展示中です。 また、優秀賞受賞作品は7月10日よりダム博物館写真館でも展示します。 |
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入選 |
「月見桜」 青森県・津軽ダム |
撮影者:iiysk |
<選評・萩原 雅紀> 単に色鮮やかなライトアップを記録しただけでなく、あの形の月があの場所から覗く、そのタイミングを射止めた時点で勝利でしょう。 計算されたのか偶然なのか、どちらにせよ同じ写真を撮ろうとしてもまず難しいと思える作品は、羨ましいとか悔しい、という感情も湧かず単純に感動しますね。 |
優秀賞 |
「静穏」 山形県・横川ダム |
撮影者:勝山 輝夫 |
<選評・窪田 陽一> 今回のテーマ部門「音」にも応募できそうな、水深の浅い堆砂に生えた木立の新緑と湖水の淡青色が精妙なハーモニーを静かに奏でている作品です。 一見、ダム湖とは思えない自然の植生のようですが、天然の沼沢ではあまり見られない景色です。美しい色調の秀逸な風景写真ですが、どこのダム湖なのか、判然としない点が惜しまれます。 |
審査委員プロフィール |
西山 芳一 (土木写真家) 今回のコンテストは可もなく不可もなく、ちょっと高めのドングリの背比べといった印象になってしまい、残念ながら最優秀賞並びに特別賞はお預けにさせて頂きました。 しかし、年々、目の付け所や技術が上達しているのは事実です。 写真は人生を刻む式典など個人的なものも大事ですが、人に見せるという一つの表現手段として発展してきました。 私の場合、まず被写体を選び、場を選び、時を選び、そして数多く撮影した中から最高のものを選び抜いたうえで、媒体を用いて表現するのが写真だと思っています。 写真コンテストも一つの表現媒体です。どうか皆さんも十分に作品を選び抜いたうえで応募しましょう。似通った写真の応募は数を打っても当たりません。 昨今、ダム自体は増えていませんが、ダムの撮影環境は年々向上していると思われます。 今まで審査員として数千枚以上のダム写真を見せていただきましたが、まだまだ良い写真が撮れる余地は限りなくあると思います。 撮影は数を打てば打つほど上達し、良い作品も生まれるはずです。 そして一層の応募、よろしくお願いします。 |
窪田 陽一 (埼玉大学名誉教授) 他の審査委員も書かれている通り、残念ながら今回は「これは!?」と目を引く作品が少なかったように思います。 最優秀賞の受賞作品も選出されませんでした。応募作品の総数は決して少なくはなかったにもかかわらず、なぜそうだったのでしょうか。 他方では、一人で複数の作品を応募された方々が例年よりも多くおられました。 それらの作品は、独自の写真表現を追及する眼差しを感じさせるものから、多様な画像を撮影したままに応募したものまで、各人各様でした。 毎年同じ傾向ではありますが、その中から光を放つ佳作、秀作を見いだすことができれば審査の醍醐味を感じると言えるでしょう。 そう期待して審査に臨みましたが、過去の入賞作品を想起させるため選外に漏れた作品も少なくありませんでした。 かつて見たことがあるような作品は、作画がいかに優れていても新鮮さに欠けてしまいます。 年々難しくはなると思いますが、貴方自身の眼差しで「新たなダムの風景」との出会いをとらえた会心の作品を改めて期待します。 |
宮島 咲 (ダムマニア&ダムライター) 応募総数は昨年とほぼ変わらなかったようです。 ただ、非常に多くの作品をおひとりでご応募された方々が今回は多かったような気がします。 全く作風が異なっていれば良いのですが、同じような作品を複数枚ご応募してしまっている点が大変残念でした。 同じ時間に同じかたが撮ったと悟ってしまえる作品ですと、それらの作品に作者の魂を感じることができなくなってしまいます。 ここはぜひとも、複数の写真の中から、これぞと思う作品を選び抜きご応募下さい。 ちなみに私の場合、たいてい最初に撮った写真が最良であることが多いです。 また、今回は最優秀賞の該当作品はありませんでした。 入選された作品はどれも素晴らしかったのですが、さらに一歩抜き出るものが無かったという印象です。 最後に、テーマ部門についてです。 今回のテーマである「音」ですが、どうやら難しかったみたいですね。 応募していただいた多くの作品が放流を伴うものでした。 並べられた全体の作品を遠くから眺めると、「ゴーッ!」という放流音に包まれた感じがしました。 虫の音、木々の葉がこすれる音など、もしかするとダムにはもっと色々な音があったのかもしれません。 |
萩原 雅紀 (ダムライター/ダム写真家) 以前にも書いたかも知れませんが、ダムは基本的に立ち入りができる部分が限られており、またダム好き的な「いいアングル」が撮れる場所もほぼ決まっているので、なかなか個性的な作品を生み出すのは難しいのかも知れません。だけど、時間だったり天気だったり、太陽や月や鳥やほかの人など、その他の要素をどう取り込むかによって、見慣れたダムでもあっと驚く写真はまだまだあるなあと改めて感じました。やっぱりお気に入りのダムには何度も通って、その時にしか見られない光景を根気よく記録することが大切なのだ、と、疲れたとか寒いとか言って出不精になっている自分に言い聞かせました。 |
中川 ちひろ (編集者) 今回「音」というテーマに寄せられる作品をとても楽しみにしていたのですが、表現が直接的なものに偏っていると感じました。「音」と言っても音が聴こえる、聴こえない、聴こえそう、いろいろありますよね。もっと想像力を働かせると、きっと世界が違って見えると思います。カメラって、気づかなかった世界に気づかせてくれる魔法の道具ですから。 もうひとつ、写真一枚に込める「主題」を考えてみてはいかがでしょうか。撮るときでも良いですし、選ぶときでも良いです。本当はカメラを向けた瞬間に決められると良いのですが、それには訓練が必要なので、直感で意識せずに撮った写真を後から眺めて、選ぶときに考えることにしましょう。じつは撮るのと同じくらい、選ぶことは大切です。選ぶ行為は写真をよく見るということ。主題が明確な写真は、言葉を必要としません。「ダム」という括りのなかで撮っているので、大きな主題はすでにありますが、さらにそのなかでサブタイトルをつけるイメージで選んでみてください。ダムの何を伝えたくて、またそのときの自分がどう感じてどう撮ったか。写真には必ず撮り手が写り込みますから、撮ったときの自分の感情を思い出し、それがよく表れたカットを選んではいかがでしょうか。 |
森 日出夫 (ダムネット運営委員会委員長) 今回も個性的な作品が多く、選考を楽しませて頂きました。 テーマに沿って応募するみなさんが感性を研ぎ澄ませ、知恵を絞っていることがよくわかる作品が多くなってきています。写真の技術は当然のことながら、 「ダム本体」部門では、機能美、雄大さ、力強さが引き立つもの、「ダム湖」部門では、チョット、ダムの存在から離れた芸術性が高いもの、 「工事中のダム」部門では、施工のダイナミックさ、また逆に繊細さが全面に出たものが選考のポイントとなっています。ダム技術者代表の私は、 やはり施工中のダムが気になるところではありますが、新規ダム建設が少なくなる中で、ダム本体や取水・洪水処理設備の改造、 また貯水量維持のための浚渫工事等が今後増えてきます。 今回の入選作品にもありますが、このあたりの工事中の作品も目先が変わって面白いと思いますので、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。 |