第16回 日本ダム協会ホームページ 写真コンテスト
"D-shot contest"
入賞作品および選評


各委員の全体評

第16回D-shotコンテストは、327点の作品応募がありました。これらの作品を対象に最優秀賞、優秀賞、入選作品の選考を、2019年2月19日に日本ダム協会にて行いました。
その結果、今回は下記の作品が選ばれました。




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最優秀賞
「暗がりの全門放流」
岐阜県・大井ダム
撮影者:ハル
<選評・西山 芳一>
後景の空の雲と全面的なダムの放流、どっしりと構える両サイドの岩と発電所、そして前景の豪快な水流、画面の隅々まで小気味よく構図や切り取り方、配置を計算して出来上がった作品です。橋からのアングルを考えて幾度となく通い、これぞという素晴らしい機会を逃さずにカメラに収めたと思われる秀作です。





「ダム本体」部門

入選入選
「雪のキャンバス」
山形県・月山ダム
「富郷ダム」
愛媛県・富郷ダム
撮影者:kazu_ma 撮影者:寺
<選評・萩原 雅紀>
情けない話ですが雪道の運転が不安なので、雪に埋もれたダムの写真を撮っている時点でリスペクトしてしまうのです(過去を見返しても僕は雪ダム写真に甘い)が、雪深い山形の、しかも夜間なんて考えただけで僕には無理、な作品です。そして、月山ダムと言えば堤体の美しい紋様が特徴ですが、それが綺麗に雪化粧している…のではなく、むしろ積もった雪が崩れたり張りついたりして隠されている。でもそれが気候の厳しさを物語っていて、一周回って美しさを醸し出しているのでは、と思いました。個人的には、思い切って雪の模様にもっと寄るか、もう少し左に振った方がバランス的に好みです。
<選評・萩原 雅紀>
スマートフォンでの撮影ということですが、この不思議な感じは撮影時の設定ですか、現像時の加工ですか、それとも偶然ですか。HDR合成のアンバランスさかも知れませんが、一見すると最近のアニメのような、計画中のダムの完成予想CGのような、妙に人工的な解像度と彩色で、「写真」としてのクオリティという意味ではどうかと思いますが、個人的に今回いちばん印象に残りました。ほかに似た作品がなかった、という時点でやったもん勝ちでしょうか。空の部分にロゴやキャッチコピーを入れたら、広告としてもじゅうぶん人目を引くと思います。


入選
「天空の城浦山ダム」
埼玉県・浦山ダム
撮影者:iiysk
<選評・萩原 雅紀>
たぶん、この撮影ポイントは前回の「ダムに親しむ」部門の入選作品と同じですよね。向こうは空気が澄んだ日の夜景ですが、雲海が出た日の早朝、という対照的な撮影条件でまったく印象が変わりますね。極端に情報量が少ない広いキャンバスの中にダムの一部分(だけどいちばん個性的な部分)がクッキリと浮かんでいて強烈な印象が残ります。そもそも浦山ダムの常用洪水吐からの放流がそう多くないので、放流中のライトアップしている状態で雲海が出てそれを撮る、というチャンスは相当レアなのでは、と思うとくらくらします。欲を言えば、もうほんの少しだけ手前の雲が暗ければもっとダムの存在感が増したのでは、と思うのですがどうでしょうか。




「ダム湖」部門

優秀賞
「暁光」
福島県・摺上川ダム
撮影者:勝山 輝夫
<選評・西山 芳一>
左右岸からの流れ込みの多いダム湖ですので、単なる一つの面ではなく、湖岸の凹凸と谷からの風のせいでしょうか水面の優雅な変化が見られます。手前の木々のシルエットが画面を引き締め、一本だけ取り残された樹木が主人公のドラマがこれから始まるようなプロローグ画像のようです。


入選入選
「営業終了」
埼玉県・間瀬ダム
「初秋の秋扇湖」
秋田県・鎧畑ダム
撮影者:子持ち・アッカーマン 撮影者:kazu_ma
<選評・西山 芳一>
ギリギリ白黒っぽいカラー写真が大好きです。上部のギラギラと並行ではない数々のボートの直線が半分で構成された画面も好感が持てます。ここに簀の子の存在感は抜群ですが、ボート店員さんでしょうか、もう少し人に見えるような姿だったら最高なのに。惜しかったですね。
<選評・西山 芳一>
最近はやりの堤体穴あけダム整備の元祖。その工事の写真作品で私も受賞したことが懐かしく思い出されます。それはさておき、上下の空と土、そして挟まれたダム湖との画面構成比率(2:1:2)が抜群です。空の白い雲が全体の色比率をまろやかにしてくれました。



入選入選
「水鏡を往く」
福島県・田子倉ダム
「コスモエナジー」
福島県・只見ダム
撮影者:富井 健児 撮影者:iiysk
<選評・西山 芳一>
動く被写体をうまく捕らえましたね。静かな湖面に映った青空と雲との境によりボートの航跡がより一層綺麗に表現できました。じっくり構えて撮ることも重要ですが、ふと訪れるシャッターチャンスに敏速に構図や表現まで考えつつ対応できたことに感服させられました。
<選評・西山 芳一>
湖面に映るダム景の名所ですが、夜景の中の雲かと思ったら天の川だったのですね。失礼!天の川はしばらく見ていないなあ。ダムの撮影行はダムだけでなくこんな素晴らしい瞬間にも出会えます。また私にのんびりとした撮影行を誘ってくれる素敵な作品でした。





「工事中のダム」部門

優秀賞
「主役多数」
栃木県・川俣ダム
撮影者:ハル
<選評・森 日出夫>
「川俣ダムの工事足場がすごい」とツイッターなどでちょっとした話題になっているようですね。アーチダムの両岸の岩盤補強工事をするため、両岸にほぼ垂直な角度で高さ80mに及ぶ足場が構築されています。真上からのアングルで、そのダイナミックさが強調され、工事の凄みを感じさせる1枚です。足場や堤体のシルバーと紅葉のコントラストも綺麗です。


入選 入選
「建設事務所最後の夜」
福岡県・五ケ山ダム
「チャンチャラッチャーチャンチャラー♪」
群馬県・八ッ場ダム
撮影者:平山 浩二 撮影者:iiysk
<選評・森 日出夫>
ダム建設のために設置されていた出先機関である建設事務所が、いよいよ役目を終える日が来ました。この日はライトアップの点等試験が行われていて、最終確認をしている一人の職員の姿を写したものです。動作チエックをしながら、建設中の思い出が頭をよぎっていることでしょう。「建設中のダム」としては、少し趣きがちがうようですが、見る者がいろんな想像をさせられる秀逸です。
<選評・森 日出夫>
放流設備の設置工事のため、作業員が堤体上流側にゴンドラを使って移動している様子を捉えたものです。堤体打設工事と同時進行で行われるため、作業場所の高低差が大きくなってくると移動手段に使わざるを得なくなってきます。100m近い高さで吊られている事に撮影者は驚き、映画のワンシーンのような感覚でワクワクしながらシャッターを切る姿が伝わる作品です。


入選
「オンステージ!」
高知県・横瀬川ダム
撮影者:炭素
<選評・森 日出夫>
このダムは、コンクリート打設にタワークレーンを使用しています。重量物を扱うので、建築のタワークレーンと違って骨太です。黙々と繰り返し作業を行う動きを長い時間見続けて、撮影者に愛着が湧いてきたのだと想像できます。夜間のこの角度からの撮影は、構築物の立体感が際立ちます。巨大な機械が巨大な構造物を造り上げる姿が、スケール感たっぷりに捉えられています。




「ダムに親しむ」部門

優秀賞
「雛壇」
群馬県・薗原ダム
撮影者:子持ち・アッカーマン
<選評・中川 ちひろ>
まっすぐな(?)ピサの斜塔のようにも見えるし、階段のつき具合がニューヨークのビルディングのようにも見えるし…。なんだかすごい一枚です。これは角度をつけず、真横から撮影したのが大正解です! 被写体をベストに見せています。思い切って画面上の上部と右端の緑を入れずに撮影して、すべてコンクリートで埋め尽くしたら、より迫力が出て凄みが出ると思います。写真は自由! 見たものをそのまま写す必要はありません。そこに、撮り手の個性が出ます。ちなみに今年も薗原ダムはお祭りがあるようですよ!


入選入選
「さよなら・ありがとう」
福島県・旭ダム
「津軽大瀑布」
青森県・津軽ダム
撮影者:ハル 撮影者:iiysk
<選評・中川 ちひろ>
無骨なダムと上海のようなきらびやかなイルミネーションが出合うと、こんな異国というか異次元というか、摩訶不思議な世界になるのですね。湖に反射したレインボーカラーが写真の3分の2を占めていて、撮影者が美しいと感じたものがイルミネーションではなかったことが伝わります。それにしてもゴツゴツとした岩と極彩色のコラボレーション、面白いです。派手に明るく「平成さよなら」したいですね!
<選評・中川 ちひろ>
なーんと、ド迫力な滝! じゃなくて放流でした。ゴオーーーと爆音が聞こえてきそうです。ほんものの滝は自然のものですが、この滝をつくったのは人の手だということを疑いたくなりますね。この写真はよく整理されていると思います。白い背景を、直線(橋)と直線(右のコンクリート)が縦断・横断し、唯一の円は人の頭。あえて奥行きを感じさせないグラフィカルな表現。欲を言えば、人間が一人だったら最高にかっこいいですが、怖いですね。失礼しました。




「テーマ」部門 『力』

優秀賞
「耐える者」
静岡県・船明ダム
撮影者:しん
<選評・宮島 咲>
重厚なローラーゲート。ゲートや欄干の配色から、電源開発のダムだろうと推測できます。作者のコメントから、暴れ天竜を堰き止める船明ダムということがわかります。このダムは天竜川の最下流に位置するダムですので、そこへ押し寄せる水は途方もない量となります。その水たちを一滴も逃さず堰き止める水門の重み。この作品からは、重みという力を十分に感じとれます。背景に写っているドンヨリとした雲も、その重さを伝える良い副材となっている点が素晴らしいと思いました。


入選 入選
「風雪に耐える」
長崎県・菰田ダム
「雲集霧散」
山形県・月山ダム
撮影者:田中 創 撮影者:kazu_ma
<選評・宮島 咲>
今年で80歳を迎える菰田ダム。作品のタイトル通り、80年間風雪に耐えたダムの素肌をおさめた作品です。建設当時は綺麗なコンクリートだったと思いますが、時の経過とともに傷つき、ボロボロになってもなお、インフラを守り続けている勇者です。「力」という観点から見ると、風雪に負けないコンクリートの力強さと、固いとされるコンクリートをも傷つけてしまう風雪の力という、2つの力を感じます。
<選評・宮島 咲>
この作品はどういう意図で「力」を表現しているのか悩みました。作者のコメントを拝見してみますと、放流水のぶつかり合う力と、ぶつかり合って散ってゆくさまを表現しているとのことでした。力という表現は、どちらかというと強さを表わしがちですが、この作品は、強さと弱さの両方を見事に表現しています。少量ではほとんど力を持たない水分子が無数に集まり、大量の水となって大きな力を生み出す。ミクロからマクロへの世界観を表現している作品だと感じました。


入選
「轟音」
岐阜県・丸山ダム
撮影者:佳
<選評・森 日出夫>
もう数年すると見ることができなくなる丸山ダム。木曽川の治水を担うおじいさんダムです。数多の洪水と戦いすでに60年以上の歳月が経過しました。それでも老体に鞭打ち、迫りくる洪水を背中に受け止め、必死に戦っているシーンの作品です。撮影場所はダムから離れていると思いますが、放流の轟音がそこにも届いていたことでしょう。水の力と、コンクリートの力の戦いが感じられる迫力ある作品ですね。




全体評


審査委員プロフィール
西山 芳一 (土木写真家)

最後に審査する「ダム本体」部門、机に広げられた作品をザーっと見た時にかなりの期待感を覚えたのは十数年審査に携わっているなか初めてのことでした。しかし、1作品1作品を丁寧に見ていくと、もう少しこうしたら、あーしたらという作品が多く、全体で見た時とは違ったのはなぜなのでしょう。おそらく写真がパッと見の良さだけで、深みや奥行きに欠けた作品が多かったのかもしれません。ただ、今回応募数を伸ばした「工事中のダム」部門はかなり評価できます。ダムの工事現場は限られますが、同じ被写体の中でも応募者がお互いに違った画を撮ろうと切磋琢磨した結果かと思われます。来年も引き続き、部門全体での高まりを期待しております。
宮島 咲 (ダムマニア&ダムライター)

応募作品数は残念ながら昨年を下回ってしまいましたが、今年は非常にレベルの高い作品が多かったように感じます。大きな机に全ての作品を並べて選考するのですが、端から各作品を眺めてくうちに、次から次へと目移りしてしまうほどでした。

今回の作品は、夜景やダムのライトアップを狙ったものが多かったように感じます。入賞・入選された20作品中8作品が夜間に撮影されたものでした。近年、ダムは観光地化を目指し、ライトアップなどのイベントを多くおこなうようになってきました。当然ながらダムと写真に興味を持つ方々は、この絶好のチャンスを逃すはずはありません。フォトコンテストにご応募いただいた方々は、日々、ダムのイベント情報などをチェックし、日常では見ることができないダムの姿を写真に収めようと努力しているすがたをうかがい知ることができました。

今回のテーマである「力」にご応募いただいた作品は、様々な個性がある作品が多く、非常にうれしく思いました。私が考える「力」の表現はまだまだ狭く、世間にはもっと多くの「力」を示す表現があることを感じました。感性豊かな皆様がうらやましい限りです。いずれ、日本ダム協会のサイトに全ての作品が掲載されると思いますので、様々な「力」の表現をぜひご覧下さい。なお、次期のテーマも皆様の感性をより活かせるものにしたいと思いますので、奮ってご応募いただければ幸いです。

萩原 雅紀 (ダムライター/ダム写真家)

全体を見渡して、応募作品の平均レベルはこれまでで最高だったのではと思います。一目見てあきらかに選外、という作品はほとんどなかったですし、逆に入選候補が多すぎて絞り込むのに悩んだほど。でも逆に、審査員全員が息を呑むような飛び抜けた作品も見当たらなかった、という印象もありました。レベルが上がったからさらに頭ひとつ抜けるのが難しいのか、それともダム写真の可能性が頭打ちになってきたのか…。どちらにせよ、今回の審査が終わったいま、次回に向けてダムのさまざまな表情を探す旅に出かけましょう。まだまだ誰も撮っていない、ぜったい人に見せたくなる瞬間はあるはずです。何しろ今回の最優秀賞は「大井ダムの全門放流」という、年に何度かあってタイミングさえ測れば誰でも撮りに行ける場所なのですから(もちろん構図、色合い、躍動感などが素晴らしいのはもちろんですが)。
中川 ちひろ (編集者)

タイトルにひとヒネリある作品が増えたと感じました。審査をするときは、一面に作品を広げ、写真(ビジュアル)だけを拝見するので、決してタイトルで選ばせていただいているわけではありません。ですが気になる作品は、このひとは何を思って撮ったのだろう? とヒントが欲しくなります。でもここで注意が必要なのは、人は言葉に引っ張られがちだということです。たとえば美術館に行って、解説や題名を先に見てしまうと、もう頭がその見方になって、ひとつの見方しかできなくなりませんか? それはつまらないし、もったいないですよね。まずは何の前情報もなく作品だけ見たほうが、自分の感性に素直になれます。「美しい」でも「気持ち悪い」でも何でもよくて、感じるということが大事です。自分の心の動きから自分を知ることができるので、絵や写真を見ることは、自分と向き合うことなのかもしれません。話は少々ずれましたが、写真のクオリティーが年々高くなり(毎年言っているかも?)、バリエーションも豊かになってきていると思いますが、皆さんの考え抜かれたタイトルにもスポットを当ててみたくなりました。ご自身で撮られた写真をじっくり眺めて、「これぞ!」というタイトルを、ぜひつけてみてください。来年も期待しています!
森 日出夫 (ダムネット運営委員会委員長)

個性的な作品が多くて、委員全員選考に苦慮しました。芸術性が高いもの、ダムが持つ機能美や力強さを純粋に捉えたもの、あるいは自然に溶け込んだ姿を優しく写したもの等、非常にバラエティに富んだ選考会になりました。ダム技術者代表として参加させて頂いておりますが、改めてダムの魅力を感じさせられ、造る側としても意欲が湧いてきます。その中で、施工中ダムの参加数が少ないのがちょっと残念です。どうぞ近場の施工中のダムに出向いて、写真を撮りながら、その魅力に浸って下さい。

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