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ダム番号:968
 
小樺ダム [山梨県](こかんば)



ダム写真

(撮影:mayuno)
  →フォト・アーカイブス [ 提供者順 / 登録日順 ]
このごろ 小樺ダム見学 〜非常食も忘れずに〜
左岸所在 山梨県南アルプス市芦安芦倉野呂川入東方  [Yahoo地図] [DamMaps] [お好みダムサーチ]
位置
北緯35度41分34秒,東経138度16分39秒   (→位置データの変遷
[近くのダム]  上来沢川(9km)

河川 富士川水系早川
目的/型式 P/重力式コンクリート
堤高/堤頂長/堤体積 16m/86.2m/20千m3
流域面積/湛水面積 62.2km2 ( 全て直接流域 ) /1ha
総貯水容量/有効貯水容量 28千m3/14千m3
ダム事業者 山梨県
本体施工者 鹿島建設
着手/竣工 1962/1963
リンク Dam's room・小樺ダム
ダムマニア・小樺ダム
水力ドットコム・野呂川発電所
諸元等データの変遷 【06最終→07当初】河川名[早川→鹿熊川]
【07当初→07最終】河川名[鹿熊川→早川]
【11最終→12当初】堤高[18→16] 堤体積[23→20]

■ このごろ → このごろ目次
小樺ダム見学 〜非常食も忘れずに〜

 
 ダムに関心を持つ方々が増えた昨今でも、滅多に人が訪れることがないダムは、まだ沢山あります。山梨県の小樺ダムもその一つです。フォトアーカイブスにはmayunoさん提供の4枚の写真しか登録されておりませんでした。いわゆる「秘境のダム」となる理由にはそれぞれのダムに様々な事情があるようです。それらの中には延々と数キロの歩行を強いられるダムもありますが、この小樺ダムに関しては長距離を歩く必要はありません。実は、公共交通機関のみで行くことができる秘境のダムであったのです。

1.小樺ダムへのルート

 小樺ダムは、南アルプスの山岳地帯に位置しています。アクセス手段としては、
@甲府方面から芦安・夜叉神峠、県営林道南アルプス線経由
A身延方面から奈良田湖、県道南アルプス公園線(県道37号線)経由
B伊那方面から北沢峠、南アルプス林道経由
の3つのルートがあります。


マイカー規制の案内板

 現在、小樺ダム周辺は「南アルプスマイカー規制」(例年:6月下旬〜11月上旬)が行われており、この期間は一般車両の乗り入れはできません。また、マイカー規制期間が終了すると同時に冬季閉鎖(全面通行止め)期間となります。そして、ようやく冬季閉鎖が明けたかと思うと直ちにマイカー規制が始まり・・・。
つまりは、南アルプス山岳交通適正化協議会の方針が今後も変更されない限り、一般人がマイカーで小樺ダムを訪れることは恒久的に不可能ということです。


訪問時のバスの運行状況(通行止めは、すでに解除)

 幸い小樺ダムは「広河原」というバス停から歩いても、そう遠くない場所にあるようです。バスを利用する手段のうち、上掲@のルートは今年7月に発生した落石事故により、訪問時は運休となっていました。(去る8月30日より運行再開)Bは、バスの本数が少なく、さらに途中「北沢峠」でバスの乗換が必要です。小樺ダム見学のみを目的とした場合には、あまり効率的とは言えません。よって、今回はAのルートを選択することにしました。ただし、このルートも今年8月の台風11号による土砂崩れで半日ほど県道が通行止めになったことがありました。

2.奈良田駐車場出発

 広河原行きのバスに乗車するために、西山ダムに隣接している奈良田駐車場(無料駐車場)でバスの乗車券を購入します。乗車券は、事前の予約は不要で当日現地にて購入することができます。


西山ダム(奈良田湖)


バスの乗車券と利用者協力金領収書

 バスの運賃は消費税込片道1,030円です。ほかに利用者協力金として100円が付加され合計1,130円を支払います。使用できるのは現金のみで、ICカードは使用できません。久しぶりに紙の切符を手にしました。写真のように一般的な乗車券類と異なり、券面には発売日と有効期限の記載はありません。


利用者協力金の案内(南アルプス山岳交通適正化協議会)

 ほとんどの方は、登山目的の乗車であるため重装備でした。私は広河原周辺に1時間半ほど滞在し、その後バスで奈良田まで戻るため、至って軽装です。もっとも、私のように広河原周辺を散策してその日にバスで帰る人も特別珍しい存在ではないようです。


奈良田第2駐車場付近

 奈良田駐車場から広河原までは片道45分程です。乗車券の販売状況によりバスの発車台数を調整しているようですから、イレギュラーな事態でも起きない限り着席して行けるようです。バスには運転士のほかに、女性の乗務員(車掌)も同乗し途中のバス停で乗降する旅客に機敏な対応をとっていました。


広河原駐車場で待機している山梨交通のバス

3.小樺ダム

 バスは、定刻通り広河原に無事到着しました。小樺ダムが立入禁止であることは事前にわかっておりましたので、両岸の道路上から見学することにします。


小樺ダム

 左岸側から遠望すると、管理所への長い階段を降りたところでゲートに阻まれているようです。いずれにせよ立入禁止であるならば、もっと上にゲートを設置してくれた方が“親切”だと思いました。ただ、事故防止のためには、現状の位置であることが最善なのかもしれません。


小樺ダム管理所入口のゲート

 左岸から右岸側への移動は、ゆっくり歩いても30分位です。小樺ダムは、発電専用のダムです。越流部のコンクリートの傷跡を見ると痛々しさを感じました。


左岸からの小樺ダム

 山梨県は、国交省直轄や水資源機構のダムがないため、ダムカードのファーストラインナップ登場時には「カードなし県」でした。しかし早い段階において、荒川ダムを始めとしてダムカードの配布が行われ、自治体ダムカード配布県としては先駆者です。
 小樺ダムもその下流の西山ダムも山梨県企業局が管理するダムです。小樺ダム現地でのカード配布は非常に難しいことかもしれませんが、下流の早川水系発電管理事務所等で両ダムのカードを配布して県の電力事業をさらにPRしてほしいと思いました。


山梨県企業局早川水系発電管理事務所

4.おわりに


マイカー規制区間の道路管理

 南アルプスの山岳道路を走るバスが、走行中に土石流に巻き込まれ谷底に転落する危険性は、おそらく99.99%ないと思います。それは、少しでも異常がある場合には、バス事業者が容赦なく運行をストップしているからです。


広河原付近

 今回私は、ダムを見学してすぐに帰る予定であったため飲み物と雨具とカメラ、それに熊鈴とポケットライトしか持参しませんでした。気が付けば飴玉さえ持っていませんでした。この日は何事もなく帰還できましたが、場合によっては数日間孤立して餓死していたかもしれません。


広河原インフォメーションセンター

 広河原インフォメーションセンターには飲み物の自販機と、売店には数個のパンとカップラーメンが置いてありましたが、非常食は持参すべきです。


南アルプス林道・バス・乗合タクシー路線図

 甲府からの最短ルートが復活し、新宿(夜行バス)や甲府駅から広河原まで公共交通機関で来ることができるようになりました。途中までマイカー利用の方を含め小樺ダムを見学される方は、油断せず非常食を携行してください。また、ダム愛好のみなさんもダムだけではなく南アルプスの雄大な自然を満喫してください。


自生しているフジアザミ(日本のアザミ種の中では最大)

(2014.9.1、安部塁)

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