《このごろ》
長編アニメーション映画「パッテンライ」

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 昨晩、土木学会の主催で長編アニメーション映画「パッテンライ」(企画:緒方英樹 監督:石黒昇 制作:「パッテンライ!!南の島の水ものがたり」制作委員会、虫プロダクション)の上映会があった。戦前の台湾で、困難を克服して烏山頭ダムを建設した金沢出身の日本人土木技師、八田與一(はったよいち)(1886〜1942年)を題材とした物語。


 八田與一は1886年生まれ、1910年に旧東京帝国大土木工学科を卒業後、台湾総監府に勤務。水不足に苦しむ台南の農民のために、烏山頭(うさんとう)ダムと給排水路を10年がかりで築き、大規模なかんがい事業を成し遂げた。その間、約30年に渡って台湾に住んだ。1942年、56歳の時、軍の命令でフィリピンへ向かうため一時帰国、広島県の宇品港から乗船した「大洋丸」がフィリピンに向かう途中アメリカ潜水艦の攻撃を受けて沈没、亡くなった。台湾に残った夫人は終戦後の1945年9月、夫が築いたダム放水口に身を投げて後を追った。

 烏山頭ダムは当時、アジア一の規模を誇り、ダムと給排水路は干ばつに悩む嘉南平野を台湾最大の穀倉地帯に変え、農業文化を発展させた。現在も飲料水、農業用水、工業用水の供給源となっている。

 台湾人と日本人の分け隔てなく面倒を見た八田技師は今も「台湾農業の恩人」と敬愛されており、地元の小学校教科書にも紹介されているという。最近では、烏山頭ダムを世界遺産に登録しようと、ダムのある台南県では署名運動が続けられている。

 映画は虫プロダクション制作のアニメーションで、子供が見ることを意識した内容になっている。台湾人少年と日本人少年の交流、多くの犠牲者を出した爆発事故、アメリカからの大規模機械の導入などのエピソードを交えながら、ダム完成までの道のりを感動的に描く。タイトルがちょっと変わっていて、これはなんだと思うが、それは見てのお楽しみ。

 ダムにまつわる映画といえば、「黒部の太陽」がよく知られているが、「パッテンライ」は、それとはまたひと味違った内容となっている。ダム建設の過程は、様々な人間模様を生み、多くの物語が生まれるに違いないが、それを発掘し、形あるものにする作業が行われれば、人々に大きな感動を与えることができると言うことであろう。そう思うと、第3、第4の映画を期待してしまう。

[関連ダム] Wushantou[烏山頭ダム]
(H21.8.6、Jny)
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