宮村先生(宮村忠関東学院大学名誉教授)に話を伺う機会があった。宮村先生は、“with Dam ☆Night”第4夜で「線から点へ」と題して講演され、それも聞かせて頂いたが、今回、「線から点へ」という考え方について簡潔で明快に話して頂き、私自身よく分かったという感じがした。そこで、記憶を頼りに、先生のお話を紹介する。例によって、記憶故え不正確である点はご容赦頂きたい。
八ッ場ダムの議論で、堤防で対処すべきという話が良く出てくるが、これは河川史を知らないからだ。堤防を造れば、水のエネルギーが増し、壊れたら大変な被害になる。昔は技術がなかったので、やむなく堤防を造らざるを得なかったが、今は違う、ダムの技術ができた。私の住んでいるところ(東京都江東区)で言えば、高潮対策で防潮堤を造ったが、河口堰を造るのがいい。昔は、軟弱地盤のため、技術がなくて河口堰ができなかったが、今は技術がある。
ダムは環境破壊だと言われるが、堤防こそ環境破壊だ。利根川のような大河川だと、膨大な長さの、幅の広い堤防を造らなければならない。随所で人は立ち退かざるを得ず、諸々の環境破壊が起きる。堤防よりダムが合理的で、「線から点へ」だ。
イメージ先行の感を免れない昨今の議論を見ると、先生のように長年に渡って利根川の実態をつぶさに見てきた研究者の意見に真摯に耳を傾けるべきではないかと痛切に感じた。
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