《このごろ》
東日本一のダメダム?

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群馬県庁本庁舎は、153.8mと全国の都道府県庁舎の中で東京都庁に続く高さを誇ります。
県庁ビルの総工費は444億円といわれ、日本一バブリーな県庁と呼ばれているとかいないとか…

そのバブリー県庁に匹敵する、約420億円という巨額の公費を投入して群馬県が建設したのが、堤高89.5m、堤頂長330mの四万川ダムです。
訪れた人の目を引くのは、堤体の白さと奥四万湖の水の青さ。
ダム愛好家にも賛否両論で、下流面の化粧コンクリートや堤体の意匠をして、「無駄豪華」「東日本一のダメダム」などと酷評する方も少なくないと聞きますが、私はこのダムが大好きです。


かつて、四万川は暴れ川でした。
上毛かるたに「世のちり洗う四万温泉」とうたわれる四万温泉は、この川の上流部に位置します。
四万温泉をはじめ、四万川流域は過去に何度も水害に見舞われ、そのたびに家屋の損壊や怪我人、時には犠牲者も出ていました。
なかでも、昭和10年9月の台風では四万川流域だけで64人もの犠牲者を出しているのです。
近年でも昭和56年8月、57年8月、63年8月、平成元年7月に、台風や豪雨による水害が発生しました。

以前、イベントで四万川ダム管理事務所にお邪魔した時に見せてもらったパネルは衝撃的でした。
それは昭和56年8月23日、台風15号によっておこされた水害の写真でしたが、そこに写っているものは・・・
あの美しい水が。
不自然なほどに美しい青さを誇る四万川の水が。
青さの面影すらない茶色い濁流となって温泉街を襲っている写真でした。

この台風により、床下浸水487戸 床上浸水17戸 流失全壊3戸という被害が発生、農地13.33haが冠水しました。被害総額は中之条町全体で14億5千万円に上ったそうです。

暴れ川故、何度も河川改修計画が出たものの、上流部に四万温泉街を抱えているため大規模な改修ができず、治水目的でその温泉街の直ぐ上流にダム建設という手段が選択されたとのこと。
そして作られた四万川ダムは、粛々とその任された仕事をしています。


四万川ダム建設後の平成11年8月13日から16日にかけて、群馬県で豪雨が観測されました。
四万川ダムでも累計雨量274mm、最大時間雨量54mmを観測し、最大流入量98.5立方m/sを記録しています。
このとき四万川ダムは流入量の79%をカットし、一時的に113万立方mの水を貯留しています。その結果、下流観測地点における水位をダムがない場合と比較して97cm低減させたのです。
そう、いまや四万温泉での洪水被害はゼロなのです。

見目麗しく機能抜群、最高じゃないですか。ダメダムなんかじゃありません。
ダム湖の青い水、美しい堤体、堤体直下の公園、そして美しく水が流れる減勢工などを見るにつけ、四万川ダムサイトのトータルデザインコンセプトは、地元の方が四万川に対して「こうあって欲しい」と願い続けた祈りの姿に近いのではないか、と思えてなりません。


暴れ川ではなく、水の恵みを齎す川であってほしいという祈り。
もう二度と水害が起こってほしくないという祈り。
そして、ダムは流域を守る城砦であってほしいという祈り。
そう思えば…

このちょっと過剰な装飾も、許せませんか?
 

[関連ダム] 四万川ダム
(2011.6.15、夕顔)
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 (夕顔)
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