先日、(財)全国建設研修センターの緒方さんから、土木技師八田與一が学習まんがに登場しましたとご紹介いただいた。実物を手にとってみると「小学館版 学習まんが 東洋一のダムを作った日本人 八田與一」とある。偉人の伝記シリーズとしては豊臣秀吉や西郷隆盛など歴史上の人物と並んで、近代の土木技術者を取り上げてくれたのは正直嬉しい。これまでインタビューさせていただいた方々からは、我が国の教育制度の中では土木の事が系統立てて教えられていないのが問題であるというご意見を数多く伺ってきたが、こうした小学生にもわかりやすい形で、ダムの大切さや土木事業のあり方というものが印象深く伝えられるとすれば、それは大いにこのましい。
そう思いつつも、表現手段は漫画である。厳しい自然条件に立ち向かい、大勢の人が力を合わせて難工事を成し遂げたという、どちらかといえば薄っぺらな人間ドラマになってしまうのではないかと、読む前には心配した。ところが、歴史的な背景をもとに日本の近代化の流れの中で、台湾農民の生活向上はもとより、一段と大きな農業振興、さらには発電事業による近代化の促進など、烏山頭ダムの事業目的と、その成果がちゃんとわかりやすく描かれている。インフラ整備というと、どうも土木のあり方としては、小さくまとめられがちだが、この物語には80年前に活躍した一人の技師の国づくりという大きな志が感じられた。
小学館版 学習まんが 八田與一 2011年6月1日 初版第1刷発行 監修/許 光輝(八田與一文化芸術基金会) まんが/みやぞえ 郁雄 シナリオ/平良 隆久
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