《このごろ》
ダム堤体法面に設置する工作物について

→ 「このごろ」一覧   → 「このごろ」目次
 
 ある雑誌を読んでいたら、「兵庫県の県営神谷(こたに)ダム(堤高79m)で、堤体下流面に太陽光発電パネルを設置して、ダム堤体 を利用した太陽光発電所を建設する。兵庫県は、2012年度中に事業に着手する。」という記事があった。

 太陽光発電が可能な場所で発電事業を推進することは、昨今の電力事情を考えると必要なことだと思うが、ダムの堤体に太陽光発電パネルを設置することは、ダム管理上問題はないのだろうか。

 神谷ダムの太陽光発電パネル設置の完成予想図を見る限り、堤体下流面全体をパネルで覆うような計画になっているようである。(図参照)

 先日、国土交通省に「ダム下流面全体をパネル等で覆うことは管理上問題ないのか。」と問合せたら、「ダム堤体に何か設置する場合においても、ダム管理に支障が出ないようにするのが原則です。ダムを管理している兵庫県に問い合わせたところ、神谷ダムの太陽光パネルは架台で1m程度持ち上げる計画であり、異常があった場合でも目視できる構造としているため、表面を完全に被覆してしまうものではないとのことです。」との回答をもらった。

神谷ダムの下流面にメガソーラーを建設した後の予想図。出典:兵庫県

 太陽光発電パネルでダム下流面全体を覆った場合でも架台で1m程度持ち上 げ、異常があった場合に目視できれば、「管理上支障はない」と言えるのだろうか。私が以前管理に携わっていたロックフィルダムでは、月1回、全体の巡視点検時に堤体法面の異常確認(リップラップの沈下等)を目視で行い、書面報告をやっていた。(積雪時は法 面点検中止)

 神谷ダムで実施する法面点検の方法を兵庫県に問い合わせたら、ダムを管理する兵庫県からの回答は、
「兵庫県では、@再生可能エネルギーの普及拡大への貢献、A保有資産の有効 活用を目的として、太陽光発電施設の整備を推進しています。神谷ダムの堤体法面は、南向きで傾斜角度が約26°であり、太陽光発 電に適した条件を備えていることから、ダム管理に支障が出ないことを前提に、ダム堤体への太陽光パネルの設置を計画しています。設置する太陽光パネルは、堤体法面の表面変位の計測や各種観測に支障のない配置とし、表面を完全に被覆しないよう架台で1m程度持ち上げる計画としています。また、太陽光パネルのユニット間に、巡視、点検のための管理用通路を確保し、異常があった場合でも目視できる構造とする予定です。今後とも、再生可能エネルギーの普及拡大に向けて、事業を進めていきますので、ご理解いただきますようお願いします。」
ということであった。

 異常があった場合に対処できるよう工作物を設置することは勿論であるが、堤体法面の巡視、点検のための管理用通路を確保するだけでなく、法面の異常個所を早期発見するための点検を確実に実施して欲しいと思う。

           異常は、大小に係わらず発見したら即報告!
                          本日の巡視当番;のりちゃ

[関連ダム] 神谷ダム
(2013.4.5、のりちゃ)
ご意見、ご感想などがございましたら、 までお願いします。