千葉県の矢那川ダムは堤高29.3mのアースダムだが、その下流面が広範囲に土盛りされていて、広々とした斜面が公園として整備されている。芝生が植えられ、樹木が点々とあり、ベンチなどもある。そこに、カマタリザクラ(鎌足桜)と言う珍しい桜が植えられているというので、見に行ってきた。
ダムの下流は広い公園になっている 堤体下流の公園に行ってみると、地元ではこの桜は結構有名なようで、説明板なども整備されている。堤体上に桜があって、写真を撮っている人がいる。このカメラマンさんに話しかけると、カマタリザクラの写真を撮っているんだ、昨日も来たが風が強くてよく撮れなかった、今日はいい天気でいい写真が撮れそうだと。ところが、その木を見てみると、どう見ても代表的な八重桜であるフゲンゾウ(普賢象)にしか見えない。フゲンゾウは、二本の雌しべが突き出て先端がそり返っているのが特徴で、それが象に乗った普賢菩薩の象の鼻に見えるので、この名があると言われる桜だ。カメラマンさんにこれはカマタリザクラではないのではと話すと、いや、この木がカマタリザクラで、以前はこの木の所に表示があったという。カメラマンさんは、高倉観音に原木があるなどと、親切に教えてくれた。
駐車場の車止めにもカマタリザクラのデザイン
| 説明板
| 写真を撮っている
| 雌しべが2本あるし、どう見てもフゲンゾウ
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それで、見回すと、説明板の近くにも桜の木があった。どうもそちらがカマタリザクラのようだ。
カマタリザクラ このあたりは旧君津群鎌足村だった。藤原鎌足がここで生まれたと言ったような、藤原鎌足に結びついた伝説がいくつかあるようだ。桜の名前も、この鎌足に由来するのだろう。カマタリザクラは、「祖株」が近くの高倉観音にある。祖株はもともと木更津市矢那の進藤家にあったが、それを移植したもの。今各地にあるカマタリザクラは、この祖株から接ぎ木によって増殖されたものだ。山桜系の品種とされ、白色あるいは淡紅白色の八重咲き、花弁は30枚ほど、下垂して咲く。葉化した雌しべが曲がって鎌形になる、あるいは花弁の先端が屈曲して鎌形になるとも言われている。行ったときはまだ咲き始めで、開花した花が少なかった。
白っぽい色で八重咲き
| 花によっては雌しべの先端が鎌形に曲がっている
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公園には桜が何種類か植えられていて、この時期、ソメイヨシノはだいぶ前に散り、山桜も散りかけて、主に八重桜が咲いていた。中で目立ったのは赤い色の八重桜で、表示はないがたぶんカンザン(関山)だろう。
鮮やかに咲くカンザン せっかくなので、祖株のある高倉観音に行ってみた。すぐ近くのお寺で、正式には、平野山高蔵寺という。観音堂の裏にカマタリザクラの祖株が植えられていた。あまり大きな木ではない。まだ咲き始めだ。説明によると、木更津市指定文化財で、開花時期は4月20日〜25日。
高倉観音、門を入ると正面に観音堂がある
観音堂の裏にある祖株は意外と小さい
| ダムにあるものと同じに見える
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この祖株から各地に広まって、国会議事堂前の憲政記念館、大阪造幣局の通り抜けなどにもある。かつて、通り抜けに行ったときの写真を調べてみたら、カマタリザクラの写真があった。
大阪造幣局「桜の通り抜け」にあるカマタリザクラ
| 大阪造幣局「桜の通り抜け」にあるカマタリザクラ
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矢那川ダムのカマタリザクラはたぶんもう、散ってしまっているだろう。また来年満開の時期に合わせて見に行きたい。あのカメラマンさんもいるだろうか。
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