おめでとうございます。高橋裕先生が土木分野では初となる、「日本国際賞」(Japan Prize)を受賞されました。 去る1月29日、港区赤坂のアーク森ビルで行われた記者発表会に取材に行ってきました。かつてダム日本に掲載した高橋先生のダムインタビューをきっかけに案内状が届いたからです。
この「日本国際賞」(Japan Prize)は、公益財団法人国際科学技術財団が、全世界の科学技術者を対象に、人類の平和と繁栄に貢献した人とその業績を顕彰しているものです。日本からノーベル賞に匹敵する国際的な賞をという政府の構想に共鳴した故松下幸之助氏が私財およそ30億円などを寄付して実現しました。1985年の第1回から数えてすでに13ヵ国83人(うち日本人14名)の方が受賞しています。 毎年春に行われる授賞式では、天皇皇后両陛下ご臨席のもと受賞者には賞状、賞牌、賞金が贈られます。
今年は「工学」分野から資源、エネルギー、社会基盤を対象に選考され、「流域管理の革新的概念の創出と水災害軽減への貢献」に対して土木界からは初めて、高橋裕先生が受賞されました。記者会見の席では、審査部会長から高橋先生の受賞理由については、以下のような内容の紹介がありました。
戦後わが国で生じた多くの洪水について、現地調査と綿密なデータ解析を行い、明治以来堤防を中心とする河川改修や流域の開発に伴う変貌によって中下流での洪水規模が増大したことを明らかにした。これを基に、水害と社会の関係に着目し、構造物のみによる治水対策から転換し、流域との関わりにおいて総合的治水対策を進めるべきと提唱した。
これは、まさに先生がダムインタビューで述べられていた「明治以来、長く続けられてきた治水方針が、流域に降った雨をなるべく早く海に流し出そうという考えであったため、高い連続堤防を作って雨水の大部分をそこへ押し込めたので、今まであちこちで遊んでいた洪水の流れが集約されて、河川下流部への洪水の出足が早くなり、流量が増えた」という内容を示しています。
また受賞の挨拶に立たれた高橋先生からは、次のような内容の言葉がありました。
河川に関して「流域管理」という抽象的な概念を取り上げ頂いたことについてJapan Prizeには大変感謝している。近年では局地的な雨や台風で大規模な水災害が多発している他、日本の大都市と工業立地は臨海部に集中しているので、津波や高潮といった水災害も問題になってきている。そこで、治水施設だけにたよらず、河川については、上流、中流、下流といった流域全体、あるいは沿岸部まで含め総合的にとらえなくていけない。行政的には、河川に対してこのように一元的に対応することで、将来には水災害の大部分を防ぐことができるのではないか。温暖化による海面上昇はますます進み、今後は土地利用のあり方も考え都市計画、河川事業が連携していかなればならない。さらに、これからの100年先を見据えた津波と高潮被害を考えるという課題にも、河川工学者として取組むべきであろう。
ダムインタビューの中においても、高橋先生は、日本は南北に長く東西に狭い地形で厳しい気象条件のうえ、急峻な河川が多いという手のかかる国土であることから、常に災害に備えた公共事業は必要であり、土木技術者の責任は重いということを述べられています。 今回、高橋先生がこのような賞を受けられたことで、改めて河川への注目が集まり、ダムへの理解も深まっていけばと期待しています。
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(2015.2.5、中野朱美)
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