東北地方の多くのダムでは、このところの融雪増水で水位維持のための放流が行われています。胆沢ダムも例外ではなく純白の美しい放流を見せていました。今回、胆沢ダムのダムカードが更新されたということで、この地を訪れることにしました。胆沢ダムは、旧石淵ダムを再開発して竣工したダムです。かつての石淵ダムの痕跡はいたるところに残されていました。
胆沢ダムと望み大橋
1.石淵堰堤史料室
石淵堰堤史料室は、北上川統合管理事務所胆沢ダム管理支所に併設されています。また、「胆沢ダム学習館」として使用されていた建物は、「奥州湖交流館」としてリニューアルされ観光情報などの発信基地として活用されていました。ただし、ダムカードは「奥州湖交流館」では配布されず、ダム管理支所のみでの扱いとなりました。
奥州湖交流館
ダムカードの配布案内 石淵堰堤史料室には、旧石淵ダムの遺産がコンパクトにまとめて展示してあります。
石淵堰堤史料室のコーナー まず目を引くのは、立体模型です。ありし日の石淵ダムの姿が精巧に再現されています。この写真からは見えませんが、堤体上流面の遮水壁も再現されています。
石淵ダムの模型 石淵ダム管理支所の銘版は、多くの方が撮影されたのではないかと思いますが、旧「建設省」時代のものとともに保管・展示されていました。
旧石淵ダム管理支所の銘版 一般に、ダムのパンフレットは、「ご自由にお持ち帰りください」という形で置かれているものです。しかし、ここにあるものは、『史料』として展示されているものです。室内で自由に閲覧できますが、持ち帰った場合には、窃盗罪として処罰される可能性がありますので間違っても持ち帰らないでください。
旧石淵ダムのパンフレット さらに、旧機器類、建設中の写真、設計図書等々が展示されています。石淵ダムは本当に地元の方に愛されていたことが分かります。限られたスペースではありますが、石淵ダムのエッセンスを感じとることができます。
石淵堰堤史料室の展示品の一部 収蔵品の中には「ダムカード」もありました。ガラスケースの中でコンクリートコアと並べて大切に展示されています。石淵ダムのダムカードをお持ちの方は、すでに貴重な史料となっていますので大切に保管してください。
ダムカードなど
2.石淵広場
石淵広場は、旧石淵ダムのダムサイト左岸部に整備された展望広場です。以前、建設中の胆沢ダムを見学させていただいた際に、このあたりが削平されて慰霊碑等が移設される予定であることは伺っておりました。
石淵広場 奥州湖・胆沢ダムを一望できる広場には慰霊碑や水没記念碑等が設置されていました。なぜか、これらを見た瞬間、涙がこみ上げてくる思いがしました。
慰霊碑など さらにこの広場には、旧石淵ダムのクレストゲートとして使用されていたラジアルゲートの一部が展示されていました。ゲートまるごと一扉分ではなく部分的な静態保存ですが、往時の色で再塗装されています。
クレストゲートの一部 クレストゲートは4門ありましたので、これが何号ゲートのアームであったのか気になるところです。説明板らしいものがありましたが、何も記載されていません。現在は、まだ準備段階なのかもしれません。
準備中
旧石淵ダムの洪水吐き 石淵ダムは戦後の食糧増産のために水を送り、洪水から地域住民を守るために働きました。また、同時に発電用水を確保し、晩年は2度の大きな地震にも耐え抜きました。平成24年秋、石淵ダムから胆沢ダムにバトンタッチする前夜、台風がこの地方を通過しました。石淵ダムは、定年退職の日も老体に鞭を打って遅くまで残業をしてくれたのです。
現在、石淵ダム本体は、奥州湖の水中で、胆沢ダムの貯砂ダムとして静かに活躍しています。これからも、東北復興のために頑張って欲しいと思いました。 標高の高い山々には、まだ多くの残雪が目立ちました。東北のダムは、ここ当分の間、融雪放流を続けると思われます。ご都合のつく方は放流見学に行かれてはいかがでしょうか。
胆沢ダムからも近い入畑ダムの放流
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