鶴田ダムを訪問した際に、近所に曽木発電所の遺構があるという話を伺い訪問しました。もっとも、近所とはいっても大鶴湖の左岸に沿って半周する必要がある上、近道の鶴田ダム天端は工事中のため通行不能となっているため、30分程度はかかります。
曽木発電所全景 非洪水期は、本館の屋根部分だけが湖上に現れます。
曽木発電所水圧鉄管撤去跡 5本の鉄管があったとのことだが、撤去跡では4本に見える。
一般には曽木発電所と言われているようですが、遺構として残っているのは第二発電所で、1909年に建設され、周辺地域および熊本県水俣市のチッソ(株)に6700kWの電力を供給していました。
鶴田ダムが建設されるまでのおよそ60年間の電力を供給し続けましたが、鶴田ダムの完成に伴い湖底に沈み役目を終え、産業遺産としての余生を送ることになりました。しかし、湖に沈んで半世紀近くが経ち、煉瓦もあちらこちらが崩れだし、崩壊寸前にまでなってしまいったため、建設100周年を期に、地元NPOを中心に補強工事を行い崩壊を食い止めたそうです。
現在の姿は、大鶴湖左岸の公園の展望台から見学可能となっています。
そして、曽木発電所の遺構から約1.5km上流には、かつて曽木発電所の取水を行っていた曽木の滝があります。東洋のナイアガラとも言われているそうで、落差こそそれほどないものの、川幅一杯に滝が200m以上も広がり、なかなかの景観となっております。
曽木の滝全景
曽木の滝導水部 ナイアガラ・戦前というキーワードからは、長篠堰堤を思いだすところですが、堰堤により導水し河川に沿った導水路上から水が流れ落ちる長篠堰堤とは異なり、こちらは、先に滝があり、堰堤を作らずとも上流側右岸に若干の導水部を作ることで取水口まで水を誘導しています。旧発電所時代は石積みの導水部があったそうですが、現在は、補修されコンクリートでの導水となっています。石積みの導水部も角度によっては見えるそうですが、光線の加減か観察場所の影響か実見はできませんでした。
曽木の滝きのこ園 現在は新曽木発電所の取水施設として、旧施設の一部を再利用していますが、旧設備や水路も残っています。水路のほうは内部できのこ栽培をしており、見学&きのこ狩りも可能とのことです。旧水路でのきのこ栽培というはかなり意外な利用法なのですが、湿度といい暗さといいかなり適しているのでしょう。ただし、営業をしていないときも多いようなので事前確認&予約は必須かもしれません。
鶴田ダム ダムめぐりをしていると、「滝」に目を向けることは余りありませんが、鶴田ダムを訪問した際には、未来に向けて改修を行う鶴田ダムだけでなく、過去をとどめる曽木発電所と曽木の滝もあわせて見学したいところです。
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