千五沢ダム(福島県)は、かんがい用水を確保するために昭和50年に完成したアースダムです。このダムは、もともと農業利水専用として設計されたもので、洪水調節を持つ多目的ダムとして運用するためには放流量が不足しています。このため、治水機能を付加するゲートレス化工事が鋭意進められています。
再開発工事中の千五沢ダム これにより平成33年度末までに、クレストゲートが撤去されラビリンス型の越流頂を持つアースダムへと生まれ変わる予定です。
千五沢ダム再開発事業説明板
全体工程表(再開発事業説明板より) 全体工程表で確認すると、現時点では重力式ダムの工事が行われていることがわかります。このダムの再開発では、アースフィル堤体はそのまま温存して放流設備のみを大幅に改良することになっているはずです。それでは「重力式ダムの工事」とは、いったい何を意味するのでしょうか?
アースフィル堤体 図面で確認すると、水位低下設備が設置される右岸部が重力式コンクリートダムとして建設されるようです。
平面図(再開発事業説明板より)
航空写真(再開発事業説明板より) 重力式ダム部の堤高は、20mとなるそうです。この結果、新しい千五沢ダムはラビリンス型の洪水吐きを挟んで左岸側がアースダム、右岸側が重力式コンクリートダムという非常に珍しい複合ダムへと変貌することになります。
重力式コンクリートダムとなる右岸部
地元では、このダムにちなんだ「母畑ダム」という和菓子(くるみゆべし)が販売されています。ダムやダム湖の名前の付いた商品を見つけると本当に心が躍ります。製造販売業者が自社製品にダムと同じ名前を付けるのは、そのダムが地域の人々に愛されているからにほかなりません。
登録銘菓母畑ダム(写真提供:しだこ) 銘菓「母畑ダム」は発売以来40年以上の歴史を有するくるみゆべしです。この和菓子の包装紙は、赤いゲートをもつ千五沢ダムです。この包装紙が将来的にどのようなデザインとなるかは気になるところですが、再開発工事完了後も、この包装紙は変更しないでこのまま残してほしいと思いました。
千五沢ダムを見学された方は、厳選された素材と一切の手抜きを許さない昔ながらの製法でつくられたゆべしをお土産にいかがでしょうか。
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