昨年の宮城・山形編につづき、秋田県南編になります。
2018年現在、東北地方で最も多く未記載ダムが残されていると思われる秋田県ですが、今回はその調査の一部をご紹介したいと思います。
由利地域
@鷺沼溜池 |
所在地 | 秋田県由利本荘市岩城滝俣字滝ノ上 |
河川名 | 衣川水系衣川 |
目的 | かんがい用水 |
型式 | アースフィルダム |
堤高 | 15.3m |
堤頂長 | 98m |
総貯水容量 | 131.5千m3 |
管理者 | 由利本荘市 |
秋田県の『農業用ダム一覧』に掲載されていて、由利本荘市の溜池台帳にも掲載されている溜池で15.3mとされています。
鷺沼溜池
鷺沼
A桜沢ダム |
所在地 | 秋田県由利本荘市岩城道川字南北沢 |
河川名 | 君ヶ野川水系君ヶ野川支流 |
目的 | かんがい用水 |
型式 | アースフィルダム |
堤高 | 14.9m |
堤頂長 | 120m |
管理者 | 由利本荘市 |
当初、秋田県の資料に「桜沢ダム」堤高も20.5mと記載されていて調査を開始しました。
実際に溜池を見てみると20mには程遠く、15m以下のようにも感じられます。また由利本荘市のデータでは14.9m(12m?)とダムにはならなさそうです。
現地調査時に地元の方に伺いましたら「桜沢ダム」と呼ばれており、これからも地元の方たちには「桜沢ダム」として、農業用水を供給し続けることでしょう。
桜沢ダム
雄勝地域
@桂沢第1溜池 |
所在地 | 秋田県雄勝郡羽後町水沢字桂沢 |
河川名 | 雄物川水系新町川支流 |
目的 | かんがい用水 |
型式 | アースフィルダム |
堤高 | 15.2m |
堤頂長 | 60m |
総貯水容量 | 44(41)千m3 |
管理者 | 羽後町土地改良区 |
昨年、羽後町の溜池を調査していたところ、候補として浮上してきた溜池で、秋田県の台帳では堤高15m以下となっていましたが、羽後町の台帳ではS7年築造、堤高15.2mとされています。現地の記念碑には昭和7年竣工とありましたが、堤高は記されていませんでした。
余水吐などから、近年改修されているように見受けられましたが、秋田県では築造年・改修歴は不明とのことでした。
また流域面積について、双方の台帳では0.1km2とされていますが、余水吐の隣に間接流域からの水路がありましたので、実際はもう少し広いものと思われます。
桂沢第1溜池
A太倉溜池 |
所在地 | 秋田県雄勝郡羽後町下仙道字太倉地内 |
河川名 | 子吉川水系石沢川支流 |
目的 | かんがい用水 |
型式 | アースフィルダム |
堤高 | 14.9m |
堤頂長 | 58m |
総貯水容量 | 88千m3 |
事業主体 | 秋田県 |
管理者 | 羽後町土地改良区 |
記念碑には堤高は明記されていませんでしたが、見た目には15m程ありそうにも感じました。ため池計画設計基準が現行基準に改定される前の基準で堤体・斜樋・底樋・洪水吐の全面改修がされているようで、構造など見た目から判別することはできませんでした。
また、堤体積について台帳と相違があり、記念碑の数値が多くなっており改修により増えた可能性もありそうですが、台帳のデータが正しければダムにはならなさそうです。
太倉溜池
太倉溜池上流面
平鹿地域
@馬鞍沼溜池 |
所在地 | 秋田県横手市平鹿町醍醐字沢山 |
河川名 | 雄物川水系 |
目的 | かんがい用水 |
型式 | 均一型フィルダム |
堤高 | 25.5m |
堤頂長 | 170m |
総貯水容量 | 360千m3 |
管理者 | 秋田県雄物川筋土地改良区 |
2005年までのダム年鑑・便覧に登録されていた溜池ですが2006年に削除されているようです。
溜池調査にあたり改めて資料を確認してみた所、堤高25.5mとする資料が多数あり、秋田県や自治体、管理者様に確認したところ同様の諸元でした。また標準断面図も確認しましたので間違いないかと思われます。
現地調査でも、これまでの溜池とは明らかに違う高さで、こちらは再びダム便覧・年鑑に掲載される可能性が高そうです。
馬鞍沼溜池下流面 中腹が森と化している。
左岸より天端と馬鞍沼
A明永溜池 1号堤・2号堤・3号堤 (ダム番号:341) |
所在地 | 秋田県横手市睦成字大沢 |
河川名 | 雄物川水系 |
目的 | かんがい用水 |
型式 | ゾーン型フィルダム |
堤高 | 18.3m・17.8m・14.5m |
堤頂長 | 105m・194m・411m |
総貯水容量 | 1430(1431)千m3 |
ダム事業者 | 秋田県 |
管理者 | 秋田県南旭川水系土地改良区 |
明永溜池 諸元比較表
国土地理院地図より引用
現在の明永沼(溜池)はもともと、隣接する2つの沼(大沢沼と熊野堂沼)を老朽化により堤体・取水施設・余水吐等の全面改修し1本化したものを明永沼としたもので、それぞれの堤体も独立しており、取水施設(斜樋)は1号堤(旧・熊野堂沼)と2号堤(旧・大沢沼)の間の地山に設置されています。上記諸元は『明永地区県営老朽ため池整備事業 竣工記念』に掲載されており、現地記念碑にも同様の諸元が記されています。(明永沼に3基の堤体があることになります)
秋田県のデータでは堤体積について、1号堤が298千m3、2・3号堤は記載がありませんでした。また総貯水量については、1号堤:231千m3、2・3号堤:1200千m3とされ、合わせると現在のダム便覧と同じ1431千m3になります。
ダム便覧に登録されている諸元についてですが、堤高は18.3mと最も高い1号堤の数値、堤頂長710mは1号堤から3号堤までの105m・194m・411mを足した数値で、3基を1基とした諸元になるものと推測されます。しかし、堤体積・貯水量については県のデータと同一となっています。
秋田県・横手市・管理者様それぞれに確認しましたが諸元データの数値が最も有力かと思われます。このダムの諸元のややこしさを便覧の諸元等データの変遷が物語っているかと思います。
最後に
これまで灌漑用の溜池を中心に調査をしてきましたが、中には管理者様都合により取材見学させていただいても情報提供のできないものもありました。県や自治体のデータベース(台帳等)にも掲載されていなく公にされていないものもたくさんあるかと思います。
日本全国のダムすべてを網羅するということはとてつもなくハードルの高いことだと思いますが、灌漑用溜池・上水道の水源地・取水堰堤・河道内外の防災調整池と可能性は残されています。ダム便覧ユーザーのみなさんのご協力で少しでも多くのダムが年鑑・便覧に掲載されることを願い、今後も追ってレポートできればと思います。